音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年3月号

予算の概要を見て

実務を行う市町村の立場から予算案を見て

平塚市障害福祉課

1 はじめに

本市は神奈川県の中央南部に位置する人口約26万人の都市であり、うち、障がい者人口は、約11,600人(身体7,000人、知的1,100人、精神3,500人)である。いわゆる「中規模自治体」として、今回の特別対策および平成19年度予算について概括してみたい。

(なお、本市では平成19年3月に障害者基本法に基づく「市町村障害者福祉計画」と、障害者自立支援法(以下「自立支援法」)に基づく「市町村障害福祉計画」を合本した「平塚市障がい者福祉計画(第2期)」を策定し、同計画に基づき「障がい」表記の促進に取り組むこととしているため、本稿でも法令通知などを除き「障がい」と表記することをお断りしておく。)

2 評価できる点

今回の特別対策・平成19年度予算は、当事者団体などの意見もある程度取り入れ、制度の円滑実施を目指して実施されるものであり、本市としても基本的には評価できるものと考えている。

1.利用者負担の更なる軽減

対応の必要性が高い取り組みであり、対策の実施により、ようやく「一定の評価ができる」利用者負担のあり方になったものと考えられる。

一方、本市としては、今回の負担軽減措置がいわゆる基金事業ではなく、当初予算対応となったことに注目している。単に予算構成上の問題である可能性もあるが、少なくとも時限が明確な基金事業ではなく、継続実施の可能性もある当初予算対応としたことにより、今後に議論の余地を残したものと考えている。

2.事業者に対する激変緩和措置

特に「通所サービス利用促進事業」については、重度障がいのある方々の通所手段を確保するうえで送迎が欠かせないことを考えると、評価できる措置と言える。

3.緊急的な経過措置

全体的に、相談支援や地域移行(退院促進)、就労支援などを強化する方向であり、事業所や市町村の対応経費を軽減する視点が盛り込まれていることも含め、おおむね必要な措置が講じられているものと思われる。

特に、グループホーム・ケアホームの借り上げ初度費用を助成する部分に踏み込んだことは、借り上げによる事業実施を検討している事業所に対し、強力な後押しとなろう。

また、「障害児を育てる地域の支援体制整備事業」においては、これまで必要性が指摘されてきた「療育相談」(乳幼児期における支援)が全国的に広がる可能性を示した点で、高く評価できる。

3 課題点

以上のとおり、基本的には評価することのできる今回の特別対策・平成19年度予算ではあるが、一方で課題も多数残されている。

1.実務を行う市町村の立場から

自立支援法の施行時も同様であったが、全国的に膨大な事務量が新たに発生し、莫大な事務費が本来の目的である「障がいのある方々に対する支援」ではなく「単なる事務処理」に費やされている。当事者や事業所への説明も不十分にならざるを得ず、せっかく基本的には良い方向に向かっているのに、現時点ではいたずらに混乱を拡大させている感が否めない。

また、自立支援法下における国・都道府県・市町村の役割分担に関しては、紙面の関係で稿を改めるが、国は市町村の実態をつぶさに把握し、より一層地域の実情に応じた支援の構築、制度の弾力的運用を認めるべきであろう。

2.地域生活支援事業の予算は、「400億円」で十分なのか

相談支援や移動支援など、障がいのある方々の地域生活を支える重要事業が多いにもかかわらず、十分とはいえない予算措置には大いに不満が残る。特に相談支援や地域活動支援センターに代表される「地方交付税と統合補助金の組み合わせ」は、地方交付税の性格を考えると「金は出さぬが口は出す」姿勢のようにも思われる。いずれにしても、地域生活支援事業に関しては、全体として本当に実効性のある事業推進を図るつもりがあるのか、はなはだ疑問といわざるを得ない。

3.「移行」だけでなく「新設」に対する支援策を

今般の対応が「緊急的な経過措置」であることを踏まえれば、ある程度やむを得ない部分はあるが、今後地域における支援は、小規模でも良質のサービスを提供する事業所が参入することが不可欠と思われる。その意味で、既存事業所の移行支援もさることながら、モチベーションの高い小規模事業所が新設される際の支援策についても、今後検討されるべきであろう。

4.継続的な措置を望む

今回の特別対策事業のうち、とりわけ「利用者負担の更なる軽減」については当初予算対応となっており、継続的な実施について議論の余地があると思われる。また「通所サービス利用促進事業」などについても、本当に時限措置でよいのか、十分な検討が必要であろう。

4 おわりに

紙面の関係で極めて概括的な内容となってしまったが、自立支援法の理念については評価できるものがあり、今回の特別対策も、基本的には適切な対応であったと思う。

本市においては、新たに策定された「平塚市障がい者福祉計画(第2期)」に基づき、市民の方々との協働により、主体的に障がいのある方々の支援を推進することとしており、国・神奈川県の強力なサポートを期待するところである。

(平塚市障害福祉課主査 又村あおい)