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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年3月号

1000字提言

「障害のある夫をもつ妻の会」をやってます

光成沢美

2002年3月、私と3人の女性がファミリーレストランに集まり、自己紹介をした。盲ろう者の夫をもつ私、視覚障害の夫をもつ妻1人と、車いす使用の夫をもつ妻2人。それが、「生糸の会」の始まりだった。その年の9月に会の名称を決め、口伝や、マスコミを介してメンバーが増えていった。会員資格は「障害のある夫をもつ妻」であること。

昨(2006)年の11月、初の全国的な集まりを企画し、関東から関西までのメンバー13人が京都に集まった。20歳代から60歳代まで幅広い年代、夫の障害も肢体、視覚、聴覚、精神と、これまた幅広いので、自分の夫と異なる障害の話は簡単に理解できるものではない。しかし、私たちはお互いに、傾聴しあうことを目指している。話し手の気持ちに寄り添いあう。他人に受け止められたと実感できれば、エンパワメントされ、また一歩前進できると信じているからである。

障害をもつ当事者の生活には困難が多く、闘いの人生だが、その家族も共に闘っているのである。社会と闘ったり、自分と闘ったり、時には夫とも闘っている。そんな中で、元気がなくなったり、自信がなくなったり、自己嫌悪になったりすることもある。一般に、元気がない時には、あえてポジティブな言葉を使うといいと言われたり、ネガティブな気持ちは、聞くほうも暗い気持ちになるので、歓迎されるものではない。したがって、「障害のない頃の夫は、こんなんじゃなかったのになぁ…」とか、「夫がウツで沈んでいると、家庭が暗くなっちゃって困るのよね…」などとかは、日常生活で気軽に話せるものではない。

「生糸の会」はそんなネガティブな感情も気軽に話せる雰囲気を作っている。「タイヘンだよ~」って感じている心を無理やり隠して、「大丈夫!!」なんてふりをする必要は、全くない。障害をもって生きる、障害のある家族と共に生きることは、本当に大変だったりメンドクサイことが多いのが事実なのだから。大変だという事実を認めたうえで初めて、では、自分が与えられた条件の中で「家族と共に、どう生きるか?」と再考し、自分の幸福、家族の幸福を追求していく姿勢が生まれてくるのだと思う。

参加したメンバーの感想、「後ろ向きな気持ちを吐き出して受け止めてもらえると、自然と前向きな自分になる気がします」

私も、後ろ向きな気持ちをあの部屋に吐き出して新鮮な酸素を肺いっぱいに吸い、再生して東京に戻ることができた。

(みつなりさわみ 盲ろう者向け通訳・介助者)