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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年3月号

重点連載 障害者自立支援法と自治体施策

仙台市における利用者負担軽減策

仙台市

サービス利用の確保を基本として

障害者自立支援法は、その第1条に「障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図る」ことを主要な目的として掲げました。そして、今後とも福祉サービスに係る費用の増大が見込まれる下で、「必要な障害福祉サービス」等の支援を持続的に行うために必要な仕組みの一つとして、サービス量と世帯の所得に応じた定率負担制度が導入されたのですが、この定率負担制度については、利用者負担が増大し、必要なサービス利用の手控えを余儀なくされるのではないかと懸念する声も聞かれました。

増大する費用の負担を、利用者やその家族も含めて広く分担していく必要性は理解できるものであり、問題はその制度設計にあります。法の趣旨に照らして求められることは、障害者等にとって必要なサービス利用が確保されることであり、新たな制度がそのようなものであるかどうか、市としても見極める必要がありました。定率負担制度は、世帯の所得に応じた負担という新しい考え方に基づくものです。さらに所得に応じた負担月額上限の設定、実情に応じた個別減免等の負担軽減措置も講じられており、その制度設計の妥当性は実態を通じて検証すべきと考え、法施行後、速やかに実態調査を行いました。

法施行後の実態

実態調査では、1.平成18年4月の障害福祉サービス等の利用者について、法に基づく負担軽減措置が講じられた後の負担水準を把握し、2.これを前年同時期に同様のサービスを利用していた方の支援費制度の下での負担水準と対比することにより、法施行前後での負担水準の変化の程度を把握しました。

また、これと並行して、市内の通所施設、入所施設を対象に、利用者負担の増を理由に施設利用の抑制等の影響が出ていないか等につき、アンケート調査を実施しました。

こうした調査により、多くの利用者が法施行前の負担水準から相当程度の負担増となり、その結果、少数とはいえ、施設を退所する等の影響も出てきていることが分かりました。

調査結果の評価

施行後間もない段階での、しかも短期間の調査の結果から、制度設計の妥当性そのものを論じるのは、もとより早計です。しかし、調査の結果は、制度激変の最中で利用者が性急なサービス利用の抑制等の行動に移ることを懸念させるものでした。急激な制度変更の影響を緩和することにより、必要なサービス利用を継続しつつ、利用者やその家族が、求められる負担の支払いが可能かどうかを検証する時間を保障することが、制度設計の妥当性の検証のためにも必要なことと考え、市独自で負担軽減策を講じることを決定しました。

独自軽減策の内容

本市の負担軽減策は、すべての障害福祉サービスの利用者を対象に、法に基づく所得区分ごとの負担上限月額を、平成18年度(10月以降)は4分の1、19年度は4分の2、20年度は4分の3に、それぞれ引き下げるというものです。サービス利用の継続を図るためには、特に負担額が大きい層に対して軽減を図ることが有効であろうと考えたものであり、3年間の時限的な措置としたのは、法自体が、施行後3年を目途に、施行状況を勘案し、必要な措置を講じるとしていることを踏まえてのことです。

また、本市では、移動支援事業等の地域生活支援事業の一部につき、サービス量と世帯の所得に応じた定率1割負担を求めることとしましたが、平成20年度まで、障害福祉サービスに係る利用者負担と合算して、障害福祉サービスに係る負担上限月額を超えない範囲での負担となるよう上限額管理を行うこととし、必要なサービス利用が確保されるよう配慮しました。

さらに、報酬算定方式が利用実績に基づく日額払いに見直されたことにより減収の影響が大きい通所施設に対する運営費助成も緊急措置として実施しています。サービス利用の確保のためには、サービス提供事業者の安定的な運営も不可欠であると考えたからです。

衆智を集めてより良い制度に

本市では、こうした措置を講じつつ、他の政令指定都市等と共同で、国に対し、法施行後の実態を踏まえて制度の検証を行い、必要に応じて見直しを図るよう求めてきました。

国は、このたび、法の円滑な施行を図るため、平成20年度までの特別対策を実施することとし、その一つの柱として、利用者負担の更なる軽減を図ると説明しています。これは、利用者やその家族、自治体その他の関係者の意見・要望に一定程度応えるものと受け止めています。

現在、障害福祉サービス等の提供基盤の整備を計画的に推進するため、本市も含め、各市町村が障害福祉計画の策定を進めています。利用者が、必要なサービス利用を通じて、自立した生活を営むことができるよう支援することが法の目的を具体化することであり、基盤整備のための適切な計画の策定と合わせ、利用者負担のあり方についても、引き続き、利用者や事業者、自治体等の実態を踏まえ、衆智を集めて検証していく取り組みが必要であると考えています。

(仙台市健康福祉局健康福祉部障害企画課)