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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年3月号

ほんの森

きょうだいだって愛されたい
~障害のある人が兄弟姉妹にいるということ~

評者 鈴木実

全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会 編
東京都社会福祉協議会
定価 1,000円(税込)
〒162-8953
新宿区神楽河岸1-1
セントラルプラザ内
TEL 03-3568-7171(代)

障害のある方のきょうだい(性別の組み合わせにかかわらずひらがなで標記)に対して、なぜ支援が必要とされるのか。具体的な課題のありかが分かりづらいため、障害のある方やその親に対してのさまざまな施策に比べて、対策が進んでいない現状がある。

本書は、1963年(昭和38年)に発足した長い活動の歴史を持つ「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会(略称:きょうだいの会)」が、今までの経験を踏まえて、きょうだい自身の生の声を生かしながら、きょうだいの課題と対応法を提起している。

障害のある人とその家族の生活の場面での課題を、幼児期、学齢期、思春期、青年期、成人期から中高年期と捉え、きょうだい自身のコメントを交えながら、家族自身や、福祉現場、教育現場などにおける、各ライフステージでの課題や対応の方策について、それぞれに分かりやすく例示されている。

冒頭に重要な問いかけがある。

「家族が家族であり続けるためには」という問いかけである。今までの経験から、きょうだいの会では、障害のある方の自立が、そのきょうだいを含めた家族全体の幸せにつながると定義づけている。障害のある方の自立とともに、きょうだい自身のさまざまな意味での自立を求めたうえで、ライフステージの節目において求められるきょうだいへの支援とは何か。障害があると分かったとき、入学、学校でのいじめ、就労、結婚についての悩み。さまざまな課題の具体的な例示が続く。特に幼児期におけるきょうだいに対しての心理的支援を求めている。

さまざまな場面でかかわる専門家は、ある一定の期間で入れ替わっていくが、家族は替わることなく関係性が続いていく。当たり前のことなのだが、障害のある方ともっとも長い期間一緒に過ごすのは、きょうだいであるという定義は、新鮮である。

きょうだいが、障害のある方にとって、もっとも身近で、もっとも心強い存在であり続けるためにも、「家族が家族であり続けるため」の具体的な支援を、きょうだいの会は強く求めている。

本書は、今まで課題と考えられてこなかった事柄についての全般的な入門書であり、医療、福祉、教育など、障害のある方にかかわる可能性があるさまざまな専門家にとって、あるいは障害のある方の親ときょうだい自身にとって、必携の書と言えよう。

(すずきみのる 財団法人国際障害者年記念ナイスハート基金)