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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年5月号

わがまちの障害福祉計画 埼玉県越谷市

越谷市長 板川文夫氏に聞く
就労支援とバリアフリーでいつまでも越谷で住み続けられるように

聞き手:寺島彰
(浦和大学総合福祉学部教授)


埼玉県越谷市基礎データ

◆面積:60.31平方キロメートル
◆人口:319,164人(2007年4月1日現在)
◆障害者の状況:(2007年3月31日現在)
身体障害者手帳所持者 6,900人
(知的障害)療育手帳所持者 1,303人
精神障害者保健福祉手帳所持者 775人
◆越谷市の概況:
埼玉県の南東部に位置し、都心から25km圏内。江戸時代から日光道中第三の宿場町として発達する。また元荒川、葛西用水などの豊かな水源を元に農業も盛んな自然と歴史が融合したまちである。市内には公園も多く、四季折々の花々が市民の憩いとなっている。最近は都市化が進み、県南東部の中核都市として成長。スポーツ・レクリエーション都市宣言(昭和49年)、文化都市宣言(昭和58年)。
◆問い合わせ:
343―8501 越谷市越ヶ谷4―2―1
越谷市役所健康福祉部障害福祉課
TEL 048―963―9164 FAX 048―965―3289

▼越谷市の特色や魅力を簡単にご紹介いただけますか。

本市は、古くから「水郷こしがや」として親しまれてきました。昭和33年に市制を施行した当時の人口は4万8千人でしたが、現在は約32万人と大幅な増加となっています。昭和40年代以降に急激に人口が増え、鉄道網の整備と相まって都市化が進みましたが、一方で、現在も市街化調整区域が50%もあり、緑が多く、市街化との調和のとれたまちです。来年度、市制施行50周年を迎えます。

▼板川市長は障害のある人たちへの地域生活支援についてどのように考えておられますか。

当事者団体のNPOを含め地域のいろいろな方々の力を借りながら、障害のある方々が自分の住み慣れた地域でいつまでも住み続けられるように、行政として支援していかなければならないと考えています。特に、親亡き後の支援については、保護者の皆様の関心が高いので、その対応について考えていく必要があります。

また、災害時において、障害のある方々に対して身近な地域で協力が得られるように、市として対策を練ることも大切であると思います。

▼越谷市は、障害者就労支援センターをオープンし、障害のある方々の総合的な就労支援を行っているとうかがいました。支援体制の特色やその内容についてご紹介ください。

かねてから、ハローワークの誘致を国に働きかけていたところ、越谷に設置されることになり、16年度に旧東京電力の跡地を市で購入しました。1、2階をハローワークに提供し、3階に産業支援課などが移動することによって、一般の求職者だけでなく、障害のある方々や高齢者の方々を含む総合的な産業雇用支援センターとして位置づけました。そこで、3階に障害者就労支援センターを17年4月にオープンし、越谷市障害者就労支援事業等を行っています。運営は、「障害者の職場参加をすすめる会」というNPOに事業委託しています。ハローワークと同じ建物に配置することでワンストップサービスを提供できるメリットは大きく、相互の情報交換に役立っています。一緒の建物というのは全国でも珍しいと思います。

▼確かに珍しいですね。越谷市障害者就労支援事業とはどのような事業ですか。

ハローワークを取り込んだ産業雇用支援センターにおいて、障害のある方々の職業的・社会的自立を促進することを目的として総合的な就労支援を行う事業です。障害の種別・程度・年齢を問わず、市内在住の障害者及びその家族の方々を対象に、新たな就労の可能性を模索し、また就労支援センター利用者同士のピアサポートによる就労支援を行います。来所や電話等による相談は、18年度は1,400件近くにのぼり、継続的な支援を行うことで実際の就職者も増えてきています。

▼具体的には、どのような事業を実施されているのでしょうか。

就労支援として、職業相談、就職準備支援、職場開拓、職場実習支援、職場定着支援等をジョブコーチが中心に実施しています。また、就労支援に係る調査研究や地域の就労・生活支援ネットワークの構築なども行っています。

▼実際、どのような方がどのような所で働いておられるのでしょうか。

17年度には、30人の障害のある方が就職しました。障害の種別としては、精神障害9人、身体障害10人、知的障害10人、その他1人となっています。職種としては、運輸業10人、製造業9人、サービス業5人、卸売小売業3人、飲食業2人、医療福祉関連業1人となっています。

▼13年度からモデル事業として、越谷市障害者地域適応支援事業も実施されていますが、これはどのような事業ですか。

市内の身体障害者、知的障害者、精神障害者の授産施設や小規模作業所等を利用している一般就労が困難な人々を対象に、仕事とはこういうものだということを知っていただくために、福祉施設の職員の支援を受けて市役所や民間事業所で体験的実習を行うものです。今年で6年目になりますが、平成18年度も延べ40人の障害のある方々に参加していただきました。たとえば、市役所では、週に1回1時間程度ですが、郵便物の開封やゴム印押しなどの仕事をしていただいています。

▼この障害者地域適応支援事業は地場産業に対して何か影響を与えているでしょうか。

受け入れていただいた事業者や職場の方々と障害のある方々の交流会を開催して、感想を出し合ったり、改善点などを話し合っています。それまで、障害者の就労にかかわりのなかった事業者や職場の理解が進んだと思います。

▼バリアフリーのまちづくりにおいて、越谷市では、健康福祉部も予算をもち、建設部と連携して取り組んでいるとうかがいました。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。

越谷市では、バリアフリーの視点から高齢者や障害者を含むすべての人々が安全かつ円滑に通行できるように道路等の都市環境を整備することにしています。特に、平成11年度からは、障壁改善事業費(毎年2,000万円)を民生費に計上し、健康福祉部と建設部が連携して歩道の段差解消や視覚障害者用ブロックの設置などの整備に継続的に取り組んでいます。

越谷市内には、JRや私鉄の鉄道駅が7駅ありますが、そのうち6駅に、全体でエレベーター10基、エスカレーター31基が整備されています。

また、今年度中に「バリアフリーマップ」を作成します。障害者団体や市民の参画をいただきながら、冊子とホームページで掲載していきます。

▼障害者自立支援法が施行され、障害当事者の方や事業所を対象に、負担軽減などの施策を実施する自治体がみられます。越谷市として、市独自の事業として考えていらっしゃることはありますか。

利用者の負担の軽減として、自立支援医療について、精神障害者保健福祉手帳1級所持者を対象に通院の自己負担分(1割)を市単独で助成します。また、本市が運営する障害児通園施設みのり学園、あけぼの学園における食費負担について、所得税所得割が2万円以上の世帯に対しても市が負担軽減策を講ずることとしています。

さらに、ガイドヘルパー派遣、全身性障害者介護人派遣、知的障害者介護人派遣は、市の単独事業として継続します。

▼障害福祉計画を3月までに作成することになっていますが、進捗状況はいかがでしょうか。

本市では、昨年7月に庁内に策定委員会を設置し、障害者施策推進協議会に審議をお願いしながら、障害福祉計画案をとりまとめてきました。本年1月には、計画案をとりまとめ、2月23日から3月9日までパブリックコメントを実施いたします。今後は市民の皆さんからいただいたご意見を反映し、年度末までに障害福祉計画を策定していくことにしています。(注・取材は2月21日のため、発言要旨は当時のものとします。)

▼越谷市障害者施策推進協議会には、公募による市民委員が4人おられますね。

はい、越谷市では、審議会等には必ず公募による委員を入れることを原則としております。委員全体の20%をめやすに、女性の参画も35%になっています。


(インタビューを終えて)

組織の連携において設置場所は重要な要素です。必要な機能を1箇所におくことのメリットは、想像以上のものがあります。その意味で、産業雇用支援センターの中にハローワーク、障害者就労支援センター、市の産業支援課を設置して、有機的な業務連携を目指している越谷市の障害者雇用施策は、ひとつのモデルとなると思います。また、バリアフリーも就労において重要な要素です。障害者自立支援法の施行に伴い、このような就労支援がさらに必要になるのではないかと考えます。今後の越谷市の取り組みに期待します。