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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年5月号

列島縦断ネットワーキング【大阪】

オンキヨー点字作文コンクールへの取り組み

宮原誠一

開催の経緯

本コンクールは、視覚障害者の皆様に点字と音の懸け橋を築いていきたいとの願いから、2003年から開始し、今年で5回目になります。

開催の経緯ですが、私どもオンキヨー株式会社、代表取締役会長兼社長 大朏直人(おおつきなおと)が、視覚障害のある少女と出会い、その方から、晴眼者の方よりもはるかにすばらしい感動を与えていただいたことや、その後も、視覚障害のある方々からたくさんの心の栄養分を頂戴したことがきっかけとなっています。

視覚障害者用「ラクラクキット」の開発

本コンクール開始以前から、コンクールに後援していただいているテクノエイト株式会社さんでは点字プリンターの開発を手がけられ、弊社では「気持ちのよい音を、視覚障害者のみなさんご自身で接続操作して楽しんでいただきたい」との思いから、1993年に「ラクラクキット」のプロジェクトを立ち上げました。当初、開発メンバーは晴眼者だったことから利用者の立場に立つことが必要であると、視覚障害者向けの通信販売を手がけている大阪府高石市のテクノメイトさんを訪ね、さまざまな協力とアドバイスをいただき、試行錯誤しながらサポート内容を決めていきました。その結果、翌年の94年に「ラクラクキット」第1号が完成し、その後も専用スタッフを配置するなどして98年には無料化といたしました。

「ラクラクキット」は、点字版取り扱い説明書、パソコンの音声読み上げソフトなどで活用していただくもので、これまでフロッピーディスク版取り扱い説明書、カセットテープ版取り扱い説明書、簡単接続ピンコード、簡単接続スピーカーコードを提供してまいりました。

2回目から海外応募も開始

こうした活動を進める中で、2003年に第1回点字作文コンクールを毎日新聞社点字毎日様との共催で国内対象に始めました。04年からは世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会(WBU―AP、20か国加盟)、また06年からは同じく世界盲人連合の加盟組織、アジア盲人連合(ABU、西アジア・中央アジア・中東地域、21か国加盟)の協力を得て応募対象を海外にも広げました。

最優秀作品と作者の紹介

各回の最優秀オーツキ賞を振り返ると、第1回は117編の応募があり、戦争被害による失明と平和への願いを力強く綴ったものが選ばれました。第2回は74編の応募があり、40歳代で中途失明となった方の白杖や点字との出会いに感謝を込めて書いた作品が選ばれました。この方は、現在、オペラの点訳を行っており、弊社のホームページで紹介させていただいております。

海外部門はこの年より始まり、24編の応募があり、大賞にはオーストラリアの中学生が選ばれました。自国語の点字だけでなく、日本語の点字も勉強するなど前向きな姿勢が感動を与えました。

第3回は国内応募は78編で、その中から、楽器の音を色として感じ取るという、まさに「音色」を字のごとく捉えた感受性あふれる作品が選ばれました。海外からは32編の応募があり、その中からフランス語の点字で書かれたルイ・ブライユの伝記と業績をベトナム語の点字に訳すなど、点字に感謝し、点字の普及に力を入れているベトナムの方が選ばれました。

そして、昨年の第4回は、国内の部では76編が寄せられ、母校である盲学校で教鞭を執り、単なる知識や学問ではなく、生き方を示す強いメッセージが心を打った教師の方が受賞しました。海外の部・アジア太平洋地域からは17編の応募がありました。特賞はミャンマーの方で点字を習得し、さらに自分の夢である音楽家を目指し、点字楽譜への取り組みと点字考案者ルイ・ブライユへの感謝を綴った作品が選ばれました。初開催の西アジア中東地域からは38編の作品が寄せられました。

過去、大賞を受けた方はすべて事故や病気などにより、ある時期から視力を失った中途障害の方ばかりでしたが、ここでは生まれつき目が見えないというインドの方が受賞しました。淡々と書かれた文章の中に力強さが感じ取れました。

点字発祥の地、ヨーロッパまで応募を拡大

第5回に当たる今回は、ヨーロッパ盲人連合(EBU、45か国)の協力で、点字発祥の地、ヨーロッパにまで広げ、世界86か国を対象にした作文コンクールに発展させることになりました。

06年からは、国内の部の入選作品を英訳し、海外各部門の入選作と合わせ、点字と活字を併記した「英語版入選作品集」を刊行。対象地域だけではなく、全世界の視覚障害者団体(186か所)に送り、視覚障害者の思いを通して異文化コミュニケーションを積極的に進め、複雑化する国際社会をつなぐ懸け橋を目指しています。

また、国内では、国内、海外両部門の入選作品は、点字と墨字を併記した「入選作品集」をこれまで同様に刊行、全国1,200の盲学校、点字図書館、公共図書館などに寄贈し、長く読み継いでいただくことにしています。

最後に

当社は、これからもバリアフリー活動をさらに継続していき、快適な音楽生活を広めてまいります。このコンクールもさらに発展させていきたいと思っています。今後とも皆様のご協力をお願いいたします。

(みやはらせいいち オンキヨー株式会社)


「第5回オンキヨー点字作文コンクール」募集要項

主催
オンキヨー株式会社/毎日新聞社点字毎日
審査
一次審査で10編に絞り、2次審査を行います。
表彰
▽最優秀オーツキ賞1編
▽優秀賞1編
▽佳作2編
▽特別賞(小・中学生対象)2編
▽各賞とも賞金/副賞あり
応募規定
点字と音声情報を通して、より心豊かな生活につながる夢のある内容の作文を募集します。
応募資格
▽点字使用対象の身体障害者手帳1、2級重度視覚障害者に限ります。ただし、墨字(活字)による応募も受付ます。
▽年齢は問いません。
▽昨年の応募者の再応募は可(ただし、最優秀オーツキ賞と優秀賞の受賞者は除く)。
作品の分量
▽点字=32マス110行以上、120行以内。
▽墨字(活字)=2000字以内。
▽字数制限を超えた作品は審査の対象としません。
応募上の注意
▽応募は未発表の作品に限り1人1点とします。
▽作品内容は自身の体験に基づくものに限ります。
▽応募には応募票が必要です。作品に添付してご応募ください。(応募票は毎日新聞社点字毎日へご請求ください)
▽応募原稿は一切返却しません。
▽メール、FAXでの応募は受付ません。
募集期間
平成19年3月1日~5月31日(当日消印有効)
入選発表
平成19年10月初旬を予定。オンキヨー株式会社のHPで紹介。毎日新聞紙上。点字毎日並びに点字毎日活字版紙上。
作品発表
▽入選作品は、点字毎日、同活字版に掲載。
▽国内・海外の審査結果と最優秀作品の要旨は毎日新聞紙上で掲載。
作品の送り先・問い合わせ先
〒530―8251 大阪市北区梅田3―4―5 毎日新聞社点字毎日
TEL(06)6346―8386
FAX(06)6346―8385