音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年6月号

1000字提言

バランスの取れた国際国家間を

野村和志

私が子どもの頃、「障害者はサーカスに売られ、見世物にされるぞ」と親たちからわがままを言った時に言われていました。事実、後に読んだ本に「身体の変形した障害者が村祭りの見世物小屋で自分を見せる代わりにわずかな食事を与えられていた」ことを知りました。

戦争時代を生き抜いた障害者が「本土決戦時には足手まといにならぬよう、これを飲め」と町会長から渡された青酸カリの袋を、この国の姿勢を忘れないため、戦争が終わっても長く持ち続けていました。

福祉先進国と言われる北欧も、重度障害者は森深い所に捨てられ、オオカミのエサとして殺されていた時代もありました。

共産国ソ連が崩壊し、エリツィン氏が世界から脚光を浴びていた時のモスクワをテレビが中継していた時、アナウンサーの後ろを「両手に靴を着け石畳を這っていたロシア青年障害者」の姿を私は今でも忘れません。

国とは、国家とは、私たちにとってどういう存在なのでしょうか。

長い国際間の歴史の中で共産国ソ連ができて、資本主義対共産主義、自由主義対収容所列島(?) の構造が長く続きました。その頃は自由社会を守るために核兵器や軍事力が必要だとの価値観が当然の世界があり、東西冷戦時代が終われば素晴らしい世界が、平和な国際間が来ると言われていました。やがてソ連が崩壊し、ベルリンの壁は壊され、冷戦時代は終わりました。世界は平和になったでしょうか? 平和な国際間は実現したのでしょうか?

冷戦構造が崩壊し、これから戦争のない国際間が続くと思ったその数年後、9.11事件が起こり、訳の分からない一方的な戦争が続いています。

今、軍事超大国はアメリカだけになりました。冷戦時代が終わったら平和になる、と言ったあの声はどこに行ったのでしょうか。テレビで見るあの爆撃の下では人為的な障害者が数多くつくられているはずです。見世物にされる障害者も……。

極端かもしれませんが、東西冷戦が無くなっても戦争が続くのなら私は複数の超大国世界のほうがまだ良いのではと思います。

9.11事件以後のアメリカは豹変しました。だれがならず者国家か分からない世界戦略を続けています。まだ私たち人類は良心的な超大国を生みだすほど進化していないのです。

この世界はまだ東西でも南北でも良い、超大国間世界がバランスの取れた程よい国際世界だと思います。

(のむらかずし CIL宇部)