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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年6月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●台所を動きやすく機能的に、他●

提案者:小野まさ江 イラスト:はんだみちこ

小野まさ江(おのまさえ)さん

平成5年頃から網膜色素変性症を発症し失明。現在、いけ花サークル「なご実の会」を主宰。「人にやさしいまちづくりを進める大田区民の会」で当事者の立場からさまざまな提言をする傍ら、総合学習の一環として、区内の小中学校で障害者理解を求めて講演活動をしている。


台所を動きやすく機能的に

台所は、同じような引き出しや扉が並んでいます。視覚に障害をもつと、必要な引き出しがすぐには分かりません。そこで、触って判別できるように、よく使う所には鈴やストラップ、出っ張りシール等を貼っています。出っ張りシールは花や星、魚などさまざまな形があるので、使う場所によって、貼り分けて楽しんでいます。たとえば、電子レンジの「スタート」のボタンのところには、魚のシールを貼っています。

調味料は3段の棚に、上から順に、洋、中、和と区別して置いています。そうすれば、手間取ることなくスムーズに料理をすることができます。それから、カレーやクリームシチューなどの箱はどれも同じなので区別がつきません。そこでクリームシチューのルーは粉末、ビーフシチューは固形と決めています。カレーは箱に輪ゴムをかけて分かりやすくしています。


手分量とトレーの活用

調味料の分量は、粉末のものは手ですくい、液体は、手のひらに流して実際に確認しています。目で見て確認できないので、手の感覚で分量を調整しています。目分量ではなく、手分量です。でも、お菓子など分量を正確に計る必要がある場合は、一度口の広い容器に入れてそこからスプーンやカップにすくって計ります。料理に合わせてその都度、対応しています。

できあがった料理を盛り付ける時は、こぼさないためにも、器は大きめのものを使うように心がけています。また、家族の箸やよく使う食器類は、触覚で区別しやすいように買い揃えています。

視覚障害の友達が来てお茶や食事をする時は、一人分ずつトレーにセットします。クロックポジションに置いて何がどこにあるか分かりやすくしています。トレーに載せることによって、間違ってこぼしてしまっても安心ですし、自分の料理がどこまでなのか区別することができて便利ですよ。


家の中を安全に移動

家の中は、慣れているつもりでもくるりと回ると方向が分からなくなってしまいます。家の中でも結構段差があり、気がつかずケガをすることがあります。私は、階段の昇り降り口や勝手口、庭への出入り口や玄関等には、異なった形や素材のマットを敷き、足で判別できるようにしています。マットも丸いものやカニの形など色や形も楽しく明るいデザインを選んでいます。

また、部屋の柱や壁にぶつかることもあるので、角にゴムを貼っています。ところが、器用な私はそれを避けて他の部分に激突し、常におでこにコブが絶えません。特に注意しなくてはならないのが半開きのドアや引き出しです。その時のために、小さな保冷剤は冷凍庫でいつでも出動の準備をしています(笑)。

余談ですが、ペット(愛犬)には、鈴を付けてどこにいるのか、分かるようにしています。ふんづけてしまっては大変ですから。