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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年7月号

本人の暮らし、家族の暮らし

自立支援法と親の生きがい

国分哲男

智代(28歳、次女、脳性マヒで四肢マヒ、全介助)と妻(58歳)と私(59歳)の3人で暮らしています。智代は週4回(月火木金:9時から16時)のデイサービスとホームヘルプ(水:11時30分から13時30分)、ショートステイ(5日/月)のサービスを受けています。

妻は看護師として働いていましたが、智代の出産と同時に仕事を辞めました。仕事と育児の両立は困難だったからです。その後、三女が生まれ、長女、三女を保育園に通わせ、妻は智代の育児に専念しました。その分、長女、三女には手が掛けられず、申し訳ないことをしたと思っています。

現在のサービスが受けられるようになって妻はケアマネジャーの資格を取り、老人介護の仕事で社会復帰をしました。妻が54歳の時です。

朝9時にデイサービスの車が自宅まで迎えに来て、智代を車に乗せた後、妻は仕事に出て、16時にデイサービスの車が帰ってくる前に帰宅します。

水曜日は智代が週5日連続のデイサービスは体力的にきついため、中休みとして自宅にいます。この日は、トイレと昼食の介助としてヘルパーさんに来てもらっています。トイレは2時間半は大丈夫として水曜日は、妻は9時出社で16時31分に帰宅します。ショートステイの5日間は、妻は仕事と家庭の溜まった仕事を片付ける時間に使い、たまには夫婦で旅行することもあります。これが妻の日常です。

今年になって、このサービスを提供している社会福祉法人から、自立支援法下ではデイサービスを続けることが困難であるとして、来年度はこのサービスを廃止したい旨の話が保護者にありました。

働く妻にとって、この社会福祉法人の利用メリットは自宅までの送迎にあります。このサービスがあるから、パートとはいえ、老人福祉の仕事が続けられてきたのです。このサービスを提供している社会福祉法人は市内にはありませんので、来年度、この社会福祉法人がデイサービスを廃止した場合、妻は仕事が続けられなくなります。

おかげさまでわが家は妻の収入に頼る必要はありませんが、かつて、仕事を持っていた女性が障害のある子どもを生んだために、専業主婦となり、再度社会復帰の機会に恵まれたのに、あきらめざるを得ない状況になっています。

デイサービスがなくなることにより、智代も妻も家庭に閉じ込もりになり、老人介護従事者が確実に一人減ることになります。

(こくぶてつお 鎌倉市肢体不自由児者父母の会会長)