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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年7月号

知り隊おしえ隊

海を楽しもう、江の島でアクセスディンギー体験!

田川豪太

1 はじめに

いよいよ本格的な夏の到来である。最近は障害児者のスポーツやレクリエーションも多様化が進み、さまざまなプログラムを楽しめるようになった。そこで、本稿では夏のイメージにピッタリのヨット体験プログラムを紹介する。

筆者の勤務する、障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(以下、横浜ラポール)では、アウトドアスポーツへの取り組みもいくつか行ってきたが、今回お伝えするヨット(アクセスディンギー)については、あまり経験がなかった。

実は、本年8月に学齢肢体障害児(多くは脳性マヒで車いすを使用している子どもたち)に対するヨット体験教室を企画し、その下見を江の島で実際に体験したところ、より多くの障害児者にお勧めできるプログラムであると考えたので、本稿に取り上げた次第である。

なお、下見の体験をはじめ、アクセスディンギーに関するほとんどの情報については、(NPO法人)セイラビリティ江の島の皆さんから教えていただいたり、同法人のホームページを参考にしたものである。

2 アクセスディンギーについて

アクセスディンギーは年齢や障害の有無に関わらず、多くの人が簡単にセーリングの喜びを味わえるヨットである。表1にアクセスディンギー2.3の仕様を、図1に外観をそれぞれ示す。全長2.3m×全幅1.2mと大変コンパクトなヨットで、図1の右写真に示したジョイスティックを用いた舵取りも大変容易である。

表1 アクセスディンギー2.3の仕様

項目 数値 単位
全長 2.3
全幅 1.2
ドラフト 0.9
重量(除くセンターボード) 52 kg
バラスト 20 kg
マストの長さ 4.2
ブームの長さ 2.2
セール面積 3.85

図1 アクセスディンギー
図1 アクセスディンギー拡大図・テキスト

アクセスディンギーの特長を表2に示す。インターネット上でアクセスディンギーの情報を検索すると、もっと多くの記載がヒットするが、江の島での体験もあわせて考えると、表2に示した4項目が主要な特徴となるだろう。とにかくアクセスディンギーはコンパクトで操作性がよく、かつ安全なヨットといえる。そのため、さまざまな障害に応じて海の風を楽しむことができると思う。

表2 アクセスディンギーの特長

特長1 安全性の高さ
○通常のディンギーでは、セール(帆)下辺の横棒(ブーム)が方向変換時に乗船者へあたる可能性があるが、アクセスディンギーでは、立ち上がらない限りあたる可能性がない。
特長2 転覆することがない
○ディンギーでは、安全確保のためセンターボードという「板」を水中に下ろす。アクセスディンギーのセンターボードは、船の大きさに比べて、長く重いため、転覆することがない。
特長3 風の変化にも簡単に対応
○海では風向きや風の強さが変わりやすいが、簡単な操作でセール(帆)の面積を変えられるため、安心して帆走できる。
特長4 操作が簡単
○進行方向に向いて座り、ジョイスティック(図1参照)という小さなレバーを右に倒せば右へ、左に倒せば左へ進み、力もあまり必要としないため、操作が簡単である。

3 江の島疑似体験

本章では、江の島における我々の下見をレポートすることで、読者の皆さんにアクセスディンギーを疑似体験していただこうと思う。ご承知の通りに江の島は神奈川県の有名なスポットで、江ノ電や自動車を利用すれば、首都圏からのアクセスは良好である。ただし夏休みシーズンは大変混雑するので、スケジュールには十分余裕を持って行動したい。

さて、アクセスディンギー体験の会場は江の島ヨットハーバーで、ここは東京オリンピックのヨット競技が開催された日本のヨットのメッカである。

図2に体験会場周辺の環境を示す。図に示したように、ヨットの乗船ポイントまで車いすのままアクセス可能である。また、徒歩2≠R分の場所には車いす対応のトイレがあり、トイレまでのアプローチにも段差等はないので、周辺の環境は十分整っている。

図2 周辺の環境
図2 周辺の環境拡大図・テキスト

図3に安全面への配慮を示す。海のプログラムにはさまざまな危険が伴うが、その多くは事前の準備と適切な状況判断で回避が可能である(と思う)。江の島での体験では、まず乗船前に(NPO法人)セイラビリティ江の島の方から簡単なレクチャーを受け(図3上)、注意点を理解した。そして実際のヨット体験中には、レスキューのチームが体験者の周囲で近位監視を常に行い、適切な助言や注意がその都度与えられるのである。

図3 安全面への配慮
図3 安全面への配慮拡大図・テキスト

図4に乗船までの段取りを示す。アクセスディンギーはほぼ100%転覆する可能性のないヨットだが、それでもライフジャケットの着用は必須である(図左)。障害の状況によっては、図右に示したツールを使用して乗船する。乗船時は介助者の足場がふらつくので、多少不安感を覚えるが、一度乗り降りすれば特に問題はないだろう。

図4 いよいよ乗船
図4 いよいよ乗船拡大図・テキスト

図5に乗船場面を示す。経験豊富なスタッフに誘導されていよいよ出航となる。セールに風が入り、ヨットが走り始めると大変心地よい。ヨットが止まったり、全身に水を浴びてしまったり、ということも起こったが、そんなことは吹っ飛んでしまう気持ちよさであった。

図5 海を楽しもう!
図5 海を楽しもう!拡大図・テキスト

4 アクセスディンギー体験のご案内

読者の皆さんがアクセスディンギーを体験したい場合は、セイラビリティのホームページを参考にするのが最も簡単だろう。関東だけでなく、日本のさまざまな地域で同様の体験プログラムが催されているので、本稿で興味を持った方はぜひトライしてほしい。表3には我々が体験した(NPO法人)セイラビリティ江の島における体験プログラムの概要を記載した。東京、横浜、川崎等の首都圏の読者は参考になると思う。

表3 (NPO法人)セイラビリティ江の島における体験概要

■対象者
【個人の場合】
日程:4月から11月の毎月第1土曜日、第3土曜日、第3日曜日
時間:午前9時30分集合の部、午後1時集合の部(各回10名)
費用:1回1,000円(保険料を含む)*1
*1障害者手帳をお持ちの方とその介護者は500円(保険料を含む)
【団体の場合】
団体規定:1.学校や企業などの法人
2.所在地、代表者が明確で、継続的に活動している団体*2
*2障害保険に加入、指導者が付き添い、陸上での事故の一切の責任を負えること
日程:個人の体験乗船会以外の日で、ボランティアスタッフの確保が可能な日
時間:午前か午後のどちらか、2時間程度
費用:1回10,000円*3
*3小学生以下、及び障害者の団体は半額
■申し込み方法
○利用日1か月前から2週間前までに「体験乗船利用申込書」にて申し込み
○「体験乗船利用申込書」はホームページからアダウンロード可能
○申し込みはメールまたはファックス
○WEB上からの申し込みは行っていないので注意!
■問合せ
○詳細については、セイラビリティ江の島のホームページを参照のこと
○アドレスは[http://sailability-enoshima.jp/index.php

(たがわごうた 障害者スポーツ文化センター横浜ラポール)


(参考・引用Websites)

1)(NPO法人)セイラビリティ江の島:
http://sailability-enoshima.jp/index.php

2)(NPO法人)セイラビリティジャパン:
http://www.sailability.com/mainjpn.htm

3)セーラビリティ大阪:
http://www.sailabilityosaka.jp/access.htm

4)いわてマリンフィールド:
http://www.eins.rnac.ne.jp/~npo-imf/akusesu.html

5)風カルチャークラブ:
http://www.kaze-culture.com/program/OZK-DING.html

6)セーラビリティ伊勢:
http://www.sailability-ise.com/