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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年8月号

知り隊おしえ隊

私のキャンパスライフ

ようこそ筑波大学へ 私のキャンパスライフ

福地健太郎
筑波大学第2学群人間学類4年

はじめに

読者のみなさま、はじめまして。今回ノーマライゼーション8月号で執筆させていただきます、筑波大学の福地健太郎と申します。

今日はみなさまを、私が通っている筑波大学にご招待したいと思います。そして、私のキャンパスライフをご紹介したいと思います。

自己紹介

はじめに、少し私自身について紹介することにします。私は23歳の男性で、全盲の視覚障害者です。2歳のときに小児ガンで失明して以来、視覚障害生活は20年ほどになります。

大学では、教育学を専攻しています。課外活動では、視覚障害サッカーチームや障害者スポーツの普及サークルで活動してきました。

筑波大学の概観

筑波大学のキャンパスは、縦約4キロ、横約800メートルあり、全国3位の広さを誇ります。ここで、私を含め、10人前後の視覚障害学生が学んでいます。また、聴覚障害の学生や肢体不自由の学生も多く在籍しているのが、筑波大学の特徴です。

筑波大学の支援制度

いよいよここで、筑波大学の支援制度をご紹介いたします。

筑波大学では、障害学生と健常学生が共に学ぶために、学習補助制度を設けています。これは、健常の学生が、有償ボランティアとして、障害学生の学習補助を担う制度です。学習補助者の学生は、障害者との接し方や支援のあり方を学び、障害学生は、自ら主体的に補助を受けることを学ぶというのが、この制度の理念です。

また有償であるため、単なるボランティアよりも、責任を持って取り組んでいただけるということや、障害学生が依頼しやすくなるということが、この制度の特徴だといえるでしょう。実際の補助内容は、視覚障害者の場合次のようなことがあります。

(1)論文などのテキスト化

私たちは音声パソコンを用いることで、電子データになっているものであれば、自力で読むことができます。しかしどうしてもアクセスできないのが、紙媒体の文献です。そこで、学習補助者の方には、紙媒体の文献を、スキャナーで読みとり、特別なソフトで文字として認識してもらうことが必要になります。

(2)レポートの校正

前述の音声パソコンを使用し、独力で授業のレポートを書いた後、最終的な漢字のチェックや見やすいレイアウトの構成も学習補助者にお願いしています。

また、筑波大学では、視覚・聴覚障害の学生にそれぞれの支援室を設けています。視覚障害学生支援室には、音声パソコンや点字プリンターなどの支援機器が完備しています。

さらに私たち視覚障害学生は、学生組織としても活動しています。支援室の機器のメンテナンスや補助者の募集と講習会の企画、そして交流会の開催など、力を合わせてよりよい学習環境を目指しています。

以上、私の筑波大学をご紹介いたしました。みなさまに少しでも筑波大学と私のキャンパスライフを想像していただければ、幸いです。

筑波大学
〒305―8577
つくば市天王台1―1―1
TEL 029―853―2111(代表)
http://www.tsukuba.ac.jp/

長野大学の学生支援について

佐藤留梨
長野大学社会福祉学部4年

はじめに

長野大学では障害をもつ学生は30数人もいます。長野大学では、障害学生サポート制度といって、障害者特別試験、障害学生支援(学習支援等)等があります。傾斜地に位置し坂が多い長野大学ですが、設備の改善やさまざまな支援制度を実施し、バリアのない学習環境整備に努め、学生も協力しています。

ともに学べる大学づくり

長野大学は、障害がある学生への学習支援を行い、ともに学べる大学づくりに取り組んでいます。まず、入学試験での障害学生への配慮、入学後の講義受講上の支援はもちろん、上田下宿組合の皆さんや地域の協力の下に生活面での配慮にも努力しています。大学生活のなかでは、授業や大学周辺、建物、一人暮らしなどの配慮をしてくれ、完璧なバリアフリーとは言えないけれど、困ったとき、学生支援課に相談しながら、解決する方法を考えています。

課題について―聴覚障害のある学生の立場から

「課題は何ですか?」とよく質問されます。それは、私たち聴覚障害学生にとって、サポートの問題です。サポートは講義を受け、講義の内容を知るには不可欠なことです。障害のない学生と同じような夢を描き追求していくには、講義の情報保障が欠かせません。授業保障がない状態では必要な情報が得ることはできません。

17人の聴覚障害学生が三つの学部、学科に在学していますが、ノートテイクは週5コマしか受けることができない状態です。私の場合、残りの15コマの情報保障がありません。授業の内容を理解できず、インターネットで調べたり、図書館で調べたり、友達に聞いてみたりします。その場で勉強したいのに、理解できないまま、諦めて単位を落とす学生もいますが、友達にお願いしてサポート受ける学生もいます。ノートテイク懇談会(利用者とテイカー、学生支援課で開催)で何回も要望しているのですが、変わらなかったり、8コマ増えたり、戻ったりの繰り返しです。なぜ、5コマまでなのかというと、ノートテイカーさんの数が足りないからです。私たちは週で20コマくらい授業を受けています。計算してみると、ノートテイカーさんの数は50人くらい必要かもしれません。今のノートテイカーさんは20数人くらいと聞いています。

授業のない時間で有償ボランティアを使用して、学生さん、地域手話サークルや地域ボランティアの方も来てくれています。

そのほかの問題として、健常者から誤解されることが多いことは、「補聴器を付けているから、聞こえるだろう」と思われることです。私たちは補聴器を装用しても、音が増幅されてもゆがみなどは修復されていません。「音の存在」が分かっても、言葉として聞き分けるということは難しい状態にあります。

私たちだけでなく、さまざまな障害をもつ学生も同じです。私たちの願いは、先生たちには学生の声を聴いてもらい、さまざまな障害学生の状況に合わせてサポートの方法を考慮し、可能な範囲でともに学ぶ環境を整えることです。

長野大学
〒386―1298
上田市下之郷658―1
TEL 0268―39―0001(代表)
FAX 0268―39―0002
http://www.nagano.ac.jp/

聴覚障害学生の情報保障

吉本絵美
中部学院大学人間福祉学部4年、東海聴覚障害学生高等教育を考える会

私は福祉系の大学に通う聴覚障害学生です。ろう学校高等部の時にろう重複障害者のボランティアに関わったことがきっかけで、福祉の職業に携わりたいと思うようになりました。その想いを実現するために、現在は実習や卒論などに多忙な毎日を送っています。

私を含めた聴覚障害学生は、一般的にノートテイク、パソコンテイク、手話通訳などの手段を通して授業に参加しています(これらを用いて、リアルタイムでその場の情報を得ることを一般的に情報保障といいます)。私の場合、講義ではノートテイク、ゼミでは学生による手話通訳の手段も併用して聞こえる学生と共に学んでいます。

今でこそ安定した心持ちで受講していますが、大学2年までは、情報保障に関わる人間関係の悩みをずっしりと抱え込んでいました(こんな悩みは私だけでは?とすら思いました)。そんな状況を好転させてくれたのは、「東海聴覚障害学生高等教育を考える会(略称:考える会)」が主催する情報保障セミナーでした。もう悩みを抱えるのは嫌だ!と思い、支援学生を数人引っ張り込む形で参加しました。

内容は最先端の情報保障や他大学との情報交換でしたが、他大学の状況を知らなかった私と支援学生にとっては目からうろこでした。しかも、参加する前までは私と支援学生の間には情報交換すらなかったのに、セミナー参加後はよりよいサポートを作っていくための情報交換をしようという声が支援学生からあがったのです。そこから少しずつ状況が改善され、それに合わせるように支援学生との人間関係がよくなるなどの精神的負担も軽減されたので、落ち着いて受講ができるようになったときは本当にうれしかったです。

聴覚障害学生が一人だけの大学では、よりよい情報保障を構築するのは非常に難しいなぁと感じることが度々あります。なぜなら、教職員や支援学生のほとんどが手探り状態であり、また、聴覚障害学生もどのような支援方法が望ましいのかを知るのに時間を要するため、学びやすい学習環境を作り上げていくことが困難だからです。私の大学とは逆に、多くの聴覚障害学生が在籍している大学の場合は、情報保障のノウハウが蓄積されているだけではなく、モデルとなる聴覚障害学生の先輩らが身近にいるために情報保障に関わる情報交換ができるなどと、自分にとって望ましい情報保障が構築しやすい環境にあります。しかし、そのような環境にない私にとっては、どのような情報保障が自分に望ましいのか分からなくなることがよくありました。また、支援学生や教職員も情報が入らないために、自分自身のサポートを点検する手立てもありません。それを考えると、「考える会」のように最先端の情報保障を学んだり、他大学との情報交換を通して自大学の情報保障を見つめる場は必要です。

私は今年度で卒業ですが、これまでの経験を踏まえ、聴覚障害学生が大学で十分学ぶことができるよう卒業後もサポートしていきたいと思います。

中部学院大学
〒501―3993
関市桐ヶ丘2―1
TEL 0575―24―2211(総務課)
http://www.chubu-gu.ac.jp/