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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年9月号

知り隊おしえ隊

新しいウォーキング
―ポールをもって楽しく歩こう―

田川豪太

はじめに

暑い夏が終わると、1年のうちで最も運動やスポーツに適した秋の到来となる。もちろん冬には冬の、春には春の、そして夏には夏のスポーツと、四季それぞれにスポーツを楽しむことができるが、一般の人がスポーツを行う季節としては秋が最適ではないだろうか?

ところで、秋はまた『食欲の秋』とも言われ、おいしいものがたくさんあって、ついつい食べ過ぎてしまう季節でもある。メタボリックシンドロームが大きな話題(筆者には社会の反応がやや過剰に思えるが)となっている昨今では、食欲を満たす一方で運動の必要性に迫られる人も多くなるに違いない。

そこで今回は、最近注目されている新しいウォーキングについて報告する。また、横浜市の三ツ沢公園内に今春オープンした、新しいトリムコースもあわせて紹介したい。

新しいウォーキング

図1(日本経済新聞夕刊2007年7月12日)と図2(スポーツニッポン2007年7月26日)に、最近の新聞で取り上げられた際の記事を示す。

図1 日本経済新聞夕刊(2007年7月12日)の記事
図1 日本経済新聞夕刊(2007年7月12日)の記事拡大図・テキスト

図2 スポーツニッポン(2007年7月12日)の記事
図2 スポーツニッポン(2007年7月12日)の記事拡大図・テキスト

どちらの記事においても『ノルディックウォーキング』として紹介されているが、『ポールウォーキング』『ストックウォーキング』等の名前で呼ばれることもあるようだ。

図3にウォーキングの実施場面と、我々が使用しているポールを示す。特徴は一目でわかるとおり、スキーのストックに似たポールを両手に持って行うウォーキング、という点である。

図3 新しいウォーキングとポール
図3 新しいウォーキングとポール 拡大図・テキスト

また、通常のウォーキングと比べて全身をより多く使うので、エネルギー消費効率が良さそうである(通常の20%増という説がある)。

さらに、背筋の伸びた良い姿勢になりやすく、悪い姿勢が引き起こすさまざまな弊害を予防あるいは改善する効果もありそうだ。

もちろん、ただポールを持って歩くだけでは、前述したような効果を最大限に得ることは難しい。やはり、本格的に実施するためには専門的な指導のできるインストラクターから、ウォーキングの方法について十分な指導を受けるべきであろう。

一方、とにかく運動不足なので、何かしら体を動かして、少しでも健康や体力を維持向上させたい、という方であれば、単にポールを持って歩くだけでも、結構いい運動となることは間違いないだろう。

というのも、筆者自身の経験が不十分で、専門的なインストラクションも受けていないにもかかわらず、この新しいウォーキングが比較的全身を使い、姿勢良く、やや歩幅が広く、そして気持ち良く歩けるということは、1、2度試みただけで、直ぐに理解できたからである。

また、特に高齢者や障害児者の実施で重要となる安全性の面についても、それほど気になる点は見受けられなかった。もちろん、障害の状況等によっては適応のない場合もあるだろうが、屋外での立位歩行がおおむね自立しているようなケースであれば、比較的容易に取り組めると思われる。

三ツ沢公園の新しいトリムコース

さて、横浜市の三ツ沢公園では、公園内で気軽に健康増進を図ってもらうためのウォーキングまたはランニングコースに軽運動の設備を加えた新しいトリムコースを今春オープンさせた。

トリムコースの設置にあたっては、当初から高齢者や障害児者等の利用が視野に入っていた。そのため、筆者の勤務する障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(以下、横浜ラポール)に対しても、設計段階から意見を求められ、完成に至った経緯がある。

図4にこの新しいトリムコースの概要を示す。スタートとゴールは同一地点で、図4のほぼ中央、陸上競技場と球技場に挟まれた部分である。コースは大きく二つで、コース1は1周1,350m、コース2は同1,000mである。図4の☆印から右に大きく陸上競技場を回ってくるのがコース1で、☆印から上に直接ゴールするのがコース2となる。

コースはもちろん無料で、基本的にだれでもいつでも利用できる。公園の中にあるため、緑や花などがとてもきれいであり、またトイレ(車いす用トイレも当然ある)やベンチなども適宜設置されていて安心感がある。

図4 三ツ沢公園(横浜市)トリムコースの概要
図4 三ツ沢公園(横浜市)トリムコースの概要拡大図・テキスト

また、駐車場には障害者専用スペースも大きく取られていて利便性も高い。ただし、球技場でサッカーJリーグの試合がある日等は、駐車場その他多くの人で賑わうので、来場に注意が必要である。

図5にトリムコースの工夫したいくつかの点を示す。図左上の写真のように、コース上には100mごとにスタート地点からの距離を示す標識がある。また、路面上にも黄色いコース表示の文字があり、初めての方でもコースを間違えないように工夫されている。

図右上の写真は、立位歩行に不安のある高齢者や身体障害児者が歩行や、階段昇降の練習を行うスペースで、図4では1で示した部分にあたる。

なお、この部分については横浜ラポールだけでなく、横浜市総合リハビリテーションセンター(以下、横浜リハセンター)の理学療法士やリハ工学技師にも専門的な意見を求め、使い勝手と安全性の確保、実施効果等が十分に検討されている。

図5 三ツ沢公園トリムコースの工夫
図5 三ツ沢公園トリムコースの工夫拡大図・テキスト

ちなみに横浜リハセンターと横浜ラポールは同一の(社会福祉法人)横浜市リハビリテーション事業団が運営し、スポーツ指導員と理学療法士、リハ工学技師等々が日常的に連携しているので、このような場面でも非常に有効に機能したといえよう。

図5左下は休憩スペースである。トリムコースの周辺にはこのような休憩スペースがいくつかあり、疲れや少し調子が悪くなった場合もすぐに休めるようになっている。

図5右下はコースの途中に設けられたトレーニング機器の一部と、そのマニュアル表示の一部である。

図4では2・3で示した部分にあたる。身長、体重、年齢、障害の状況等々が著しく異なる人の利用があることを想定すると、すべての人にお勧めできるトレーニング機器を用意することは、当然のことながら困難である。

ここに設置されているのは、ウォーキングやジョギングの合間に軽く体をほぐしたり、ストレッチをしたり、少し筋トレをしたり、という程度のものである。とはいえ、適当に機器に触ると、思わぬ怪我をするような可能性もあるので、必ずマニュアル表示の案内を見てから実施してほしい。

横浜市開港150周年記念事業

最後に、横浜市では2009年に開港150周年を迎える。我々は横浜市健康福祉局障害福祉課とともに、障害者と健常者がスポーツや文化活動で交流を深める記念事業を計画し、一部をすでに今年度から実施している。

今回紹介した新しいウォーキングは障害者と健常者が交流できる種目であり、そのコースとして、三ツ沢公園の新しいトリムコースには大変良い環境が整った。

そこで、我々は2009年の夏頃に開港150周年記念事業の一環として三ツ沢公園のトリムコースを利用したウォーキングイベントを行う予定である。

読者の皆さんも、ぜひ新しいウォーキングにトライしてください。そして、2009年に横浜へいらっしゃいませんか?

(たがわごうた 障害者スポーツ文化センター横浜ラポール)