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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年1月号

●インタビュー●
国連障害者の権利条約推進議員連盟会長・中山太郎氏に聞く

聞き手:松井亮輔
(法政大学教授、日本障害者リハビリテーション協会副会長)

▼国連障害者の権利条約推進議員連盟の設立経過について教えてください。

2001年12月に国連総会で障害者権利条約を検討するための特別委員会の設置が決議されて以来、特別委員会では8回にわたり条約策定に向けて精力的に交渉が行われました。交渉には政府だけでなく日本を含む各国の障害者関係団体も参加していましたが、国会議員も条約策定の過程に積極的に関与したいということと、条約が採択された暁には、日本の早期批准に向けて努力したいという思いから2005(平成17)年2月に連盟を設立しました。

設立に中心となって尽力したのは、自らも障害をおもちである八代英太さんでしたが、私が外務大臣経験者ということもあったのでしょうか、会長を引き受けることとなりました。

連盟は、全党から多くの有志議員が参加し、超党派の組織として活動をしてきたことに大きな意義があったと思います。

▼これまで議員連盟は、どのような活動をされてきたのですか。

7回ほど勉強会を兼ねた総会を開催してまいりました。総会には毎回、日本障害フォーラム(JDF)の方々と各省の担当者にも参加していただき、活発に議論を重ねてまいりました。なお、権利条約採択に至る議論の過程には障害者団体も積極的に参加し、政府と障害者団体のパートナーシップが形成されていきましたが、このことには議員連盟の活動も寄与できたのではないかと思っています。

また、第4回と第8回の特別委員会には一部の議員も参加したところです。

▼2006年12月に国連で権利条約が採択されましたが、会長のお気持ちはいかがでしたでしょうか。

条約採択直後の議員連盟と日本障害フォーラム共催の記者会見および日本障害フォーラム主催の権利条約採択を祝う会に私も参加いたしましたが、障害者にとって歴史的な出来事であり、感慨深いものがありました。同時に、できるだけ早い批准に向けて気を引き締めていかなければと決意を新たにしました。

▼国連には7つの人権条約がありましたが、障害者の権利条約ができた意義は何でしょうか。

これまでも国連において、障害者の権利宣言や障害者に関する世界行動計画、障害者の機会均等化に関する標準規則の策定等が行われてきましたが、何となく障害者のことが政府だけの課題としてとらえられているような感がありました。条約ですから締約国に遵守義務があるということは当然ですが、障害者問題に社会全体として取り組む必要があることを国際的に明確にしたという意味において、障害者権利条約は画期的なものだと思います。

▼昨年9月28日に、日本政府は署名しました。今後、批准に向けて議員連盟としてはどのように活動されますか。

批准のために、政府も法律や制度の必要な見直しを検討するでしょうが、障害者団体からも積極的な意見が出されるでしょう。議員連盟も、政府と障害者団体との架け橋役も果たしながら議論、検討を行い、早期批准を推進していきたいと思います。

▼批准に向けて、解決すべき課題は何でしょうか。

教育、福祉、雇用、アクセシビリティ等多くの分野で大小さまざまな課題があると思います。私も妻が車いすを使用する状態になって、障害者の方々のご苦労の一端を実感するようになりましたが、同時に、交通機関などのバリアフリーも年々良くなっていることも分かりました。施策や事業の充実を図るためには、必要な予算をどのように確保していくかということも大きな課題であり、すべてを一度に解決するのは困難でしょう。

課題の解決を図るためには、課題ごとの計画、優先順位をどうするかを考えていくことが必要と思っております。障害者団体や関係者の方々にもこのようなことも踏まえたうえでの建設的提言を期待しております。

▼障害者権利条約では、国際協力の推進もうたわれております。アジア太平洋地域への日本の支援は各国から高く評価されていますが、特に途上国における条約の履行に向けて、日本への期待はさらに大きくなると思いますが、いかがでしょうか。

日本は、これまでJICAを通して長年、障害者支援の専門家や障害者リーダー育成等の人材育成、関係施設の整備等を行ってきました。また、国連ESCAP総会でアジア太平洋障害者の十年、第二次アジア太平洋障害者の十年の決議のイニシアチブをとるとともに、2004(平成16)年にはタイ政府と共同でバンコクにアジア太平洋障害者センター(APDF)を設立するなど、幅広く支援を実施してきました。

障害者権利条約は、発展途上国においてより大きな意義があるものと思いますが、各国が障害者への支援体制を構築していくうえで、日本は引き続き技術的支援等で一層の協力をすべきと思います。

政府による開発支援、技術支援とNGOの自主的支援双方が今後も積極的に進められていく必要がありますが、政府の関係予算及びNGOの活動資金をどのように確保するかというのも大きな課題だと思います。

▼最後に、障害者権利条約に期待を寄せている関係者にメッセージをお願いします。

障害者問題は、障害者や家族だけのことではありません。国民全体のこととしてすべての人々が理解を深め、関心を持つようにならなければなりません。そうなることによって、みんなが明るく希望を持っていける社会ができ上がっていきます。

障害者権利条約は、そのための大きな梃子(てこ)となるものであり、一人でも多くの方々に知ってもらいたいと思っています。

議員連盟も早期批准に向けて引き続き努力してまいりますので、皆様のご支援をお願いします。


国連障害者の権利条約推進議員連盟

設立総会:2005年2月22日

役員等(2007年10月16日現在)

会長【中山太郎(自民)】

副会長【岩永峯一(自民)・原口一博(民主)・福島豊(公明)・小池晃(共産)・阿部智子(社民)】

事務局長【小野寺五典(自民)】

事務局長代理【谷博之(民主)】

国連障害者の権利条約推進議員連盟とJDFとの意見交換会はこれまでに2005年に1回、2006年に4回、2007年に2回、開催されている。2007年12月現在。