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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年1月号

市区町村首長

栃木市長(栃木県)
日向野義幸(ひがのよしゆき)

改めて「制度優先」から「人優先」のまちづくりへ

輝かしい新春を迎えるたびに、私にはいつも思い描く夢があります。

それは、私の市政運営の中心の考え方、個々人の課題に応じた豊かな暮らしを応援する、「自分らしく、笑顔で暮らせるまちづくり」の実現です。

私は、福祉とは「自分らしくよりよく生きる」ことと認識しています。それを実現するお手伝いが、地方自治を預かる私達の使命と思っています。しかしながら現実は、さまざまな制度の制約の中で、ともすれば制度優先、縦割り主義に陥ることがしばしばで、いつのまにか手段が目的化してしまいます。

そんな行政の仕組み、福祉の仕組みとそこにかかわる職員の意識を変革するために、私が提唱している考え方が「トータルサポート」です。

日々の暮らしは、過去から未来に向けて継続していきます。今現在は、過去の出来事の積み重ねであり、未来へ向かっての出発点です。人の人生を、一生をこのように継続性という視点で捉え、将来を見通した対応をすることが、トータルサポートの一つの柱です。

また、複雑・多様化する現代社会は、人々が抱える課題を単一の機関で解決することは困難になりつつあります。まさに組織の壁を越えて、複合的にかかわる必要があるのです。生活の課題を総合性という視点で捉え、課題に関連する分野が複合的、総合的にかかわることが、トータルサポートの二つ目の柱です。

つまり、時間を越えた縦軸の支援と、組織を超えた横軸の支援を、まさにトータルに行うことが、トータルサポートの真髄になります。そしてこれは、福祉ばかりでなく行政のすべての仕組みの根底に置かなければならない大切な視点と確信しています。

私は、このような考え方を、自閉症児の親の会の皆さんや、多くの障がいをお持ちの皆さんとの交流の中で教えていただきました。制度の壁、意識の壁、さまざまな壁が目の前に立ちはだかりますが、親や当事者の熱い思いが、壁を打ち破る推進役として、私の後押しをしてくれています。

住んでよかった。暮らしてよかった。と市民の皆さんが真に思えるまちづくりに向けて、人優先社会の実現を北関東の小都市から、全国に向けて発信し続けたいと、改めて強く思っています。

すべての人々の幸せのために……。