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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年1月号

市区町村首長

明石市長(兵庫県)
北口寛人(きたぐちひろと)

市役所から就労支援を発信

明石市では、昨年9月、市役所庁舎内に障がい者作業所「時のわらし」を開設。また、11月には、「福祉コンビニ」を庁舎2階ロビーの一角にオープンさせました。

一昨年、障害者自立支援法が施行され、その中では障がい者の皆さんの自立支援、とりわけ就労支援が大きな目標となっておりました。一方では、授産施設等の施設利用者で、支給される工賃よりも利用者負担額のほうが高額になるなどの利用者負担の問題や、施設から就労移行が進んでいないなどの状況が明らかとなってきました。

私は、弱い立場の人、光が当たらない人のために手を差し伸べることが、行政の原点であると考えています。障がいのある方が仕事をすることに夢を持つことは当然のことです。しかし、現実には仕事を得ることが難しいなかで、行政としての支援策を熟慮してきました。障がい者の就労支援を民間事業者の方々に頑張っていただこうとしても、行政からただお願いするだけでは効果は期待できません。

そこで市役所自らが、その就労支援の取り組みを率先して行い、それらをもとに民間の方々にもぜひ、こうした取り組みを進めてほしいと訴えかけるべきではないかということで、若手職員のプロジェクトチームで検討させました。その成果物が、この「庁内作業所」と「福祉コンビニ」のアイデアでした。「時のわらし」(日本標準時のまち明石のシンボルキャラクターの名前からつけたもの)は、NPO法人「明石障がい者地域生活ケアネット」に運営を委託し、所長以下2人の指導員の下、身体障がい者1人、知的障がい者3人、精神障がい者1人の5人体制でスタートしました。現在、郵便物の封入、軽印刷、コピー、公用車の洗車などを行ってもらっていますが、その他にも市役所内の事務作業で、作業所に委託できるものがまだまだあるはずなので、試行を繰り返しながら、今後、業務を増やして行きたいと考えているところです。

もう一つの取り組みが「福祉コンビニ」の誘致で、市役所でいちばん目立つ2階ロビーに、大手コンビニチェーンの明石市役所店として開設いたしました。これは、「障がい者もコンビニで十分仕事ができる」というモデル事業所にという目的で取り組んだもので、現在4人の障がい者が働いています。

実際に障がい者の皆さんが活き生きとした表情で作業に取り組んでいる姿に触れ、ハンディキャップをもつ方々に、仕事を通じ社会に貢献していただくことで、より充実した人生を歩んでいただきたいという思いをさらに強くしました。

こうした市の取り組みがきっかけとなり、障がい者就労支援の輪が市内外に広がっていくことを期待しております。さらに彼らが就労訓練をしたり、就労する姿に触れることにより、職員の福祉に対する意識の向上につながるものと思っています。