音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年5月号

福祉に「デジタル」はなじまない。

海老澤浩

「1法人1寮、定員4名、住込み世話人」首都圏における典型的なグループホーム(以下「GH」)である。

自立支援法の具体的な内容を見てまず驚かされたことは表題に現したデジタル化である。入居者が入院、帰宅等で外泊した期間の給付費が減額されるが、仮に4人中1名が1か月間入院した時は、世話人を4分の3人で対応する計算式である。病院との連絡、見舞い、洗濯物の心配等一切GHは関わるなということであり、と同時に世話人を4分の1減らせということになる。1名の世話人しかいない所は、どう分割できるのか。この点についてはさすがに帰省、入院加算の修正がなされたが十分とは言えない。

「障害区分認定」もデジタル化された。一部に書き込みができるようであるが、本人聞き取りで(世話人は口出しできず)、いきなり「幻聴はありますか?」の質問に本人は首をかしげるのみ、この処理はどうされるのか?小規模なGHは、この先どのような施策が出されるかビクビク怯(おび)えている状態である。

定員増、ユニット・サテライト化は、GHの基本理念「ミニ施設では無い」に逆行する危惧を有している。

GH法制化当時の事が書かれている『グループホームからの出発』元厚生省障害福祉専門官、中沢健編者には「国レベルで、ここまで配慮したのか」と思うくだりが数か所あり、その中で繰り返し「GHは生活の場」が強調されている。

私は町内の方々に「GHとは、賄い付き下宿屋のようなもの」と説明、「少し親切過ぎる大家さんがいる」とも付け加えた。下宿人の体調を日々見ることによって不調を察し、会社を休む必要があれば、会社に連絡をする、医者に連れて行く、昼食を食べさせる、多くの世話人さんたちが普通に行っている業務である。このような対応が日々ローテーションで変わる職員でできるのだろうか?

極端な表現であるが、自立支援法ではGHの職員は朝食と夕食の提供だけ対応すればよい、昼間と夜間は不要と言わんばかりに感じる。

個人的には「見直し」でなく「抜本的改正」を切望する。が、それがあまりにも望み薄な提言だとするなら、都の「都外施設からの移行支援」施策のごとく、時代の流れから今後、GH入居者の増員を図らなければならないことは必至である。このためには大規模な組織による効率的な運営が必要になるであろう。それについてとやかく言う気は無い。が、同時に、私どものような小規模なGHが地域の中で細々と生活していることを忘れないでほしい。

最後に、『知的障害者GHの世話人業務と実態と思い』(東社協)をぜひ読んでいただきたい。

(えびさわひろし NPO法人アーテム「海老沢寮」サービス管理者)