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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年5月号

ヘルパー派遣事業所の現状

谷口幸生

【自立支援法後の状況】

一昨年の10月に自立支援法が本格的に実施されてから、主たる事業として在宅訪問介護を行う私たちの状況は一変している。特に報酬単価の引き下げにより、運営が厳しくなり、経費の見直しを余儀無くされた。できる限り事務的経費の見直しのみでとどめるよう努めたが、それでは納まらず、本意ではないが人件費の見直しにも着手した。

具体的には職員の給与体系やヘルパーの時給を改めたのだが、人件費の削減については、職員、ヘルパーの急激な負担を軽減することや給与にメリハリを持たせ、働く方々の気持ちを低下させないよう留意した。たとえば、職員については給与を段階的に削減し、また、給与の下がり幅が大きい職員に対しては激変緩和手当ての支給を行った。また、パートヘルパーについては時給が下がると生活に直結することから、職員給与の見直し後に時給の改定を行い、その他に当事業所をメインの仕事としているヘルパー対象の手当ての創設等を行った。できる限りの対応は行ってきたつもりではあるが、残念ながら多くの人材が去る結果となった。

無論、ヘルパーの確保のため求人についてはあらゆる媒体で継続的に行い、また、障害者スタッフが中心となって、路上でビラ配りをするなど心血は注いでいるが、応募者はほとんど無く、マンパワー不足が極めて深刻化している。

先の状況から新規の利用希望者についてはすべてお断りしているのだが、ただ、断る際に『時間数は支給されても派遣してくれる事業所が無い』と憤られる方や『来月には介助者を見つけないと生活が成り立たないから何とかしてもらえないか』と懇願される方もあり、断るたびに胸が詰まる思いと利用者の切迫感が伝わってくる。できることとして、利用者に他事業所を紹介させていただくこともあるが、すでに断られているケースは希ではない。在宅訪問介護サービスにおいては需要と供給がアンバランスとなっており、一事業所の努力ではどうにもできないところまできていることを実感している。さらに深刻な問題として、当事業所では現在、派遣している利用者も、お断りしなければならない状況もでてきている。

【在宅福祉サービスの崩壊を防ぐために】

自立支援法施行後、ホームヘルプに限って言えば利用者がサービスを選択するということは夢物語で、現状はサービスを享受することが困難となっている。このままでは在宅福祉サービスが崩壊するのではと危惧している。それを防ぐためにはマンパワー不足を解消しなければならず、そのためにもヘルパーの待遇を向上させる報酬単価の引き上げが必須である。手遅れにならないよう、早急な改善を期待したい。

(たにぐちゆきお 社会福祉法人幹福祉会、ヘルプ協会〔たちかわ〕所長)