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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年9月号

知り隊おしえ隊

まちを探検しよう!
~ぶらぶら博物館めぐり in 大阪~

鈴木千春

車いすと健常者で歩く大阪のまち

二本足で歩く友人と車いすで歩く私が一緒に遊びに行くと、友人は普段知っているまちなのに、全く知らないまちになってしまう感覚に陥り、衝撃を受けるのだそうです。たしかに普段、段差や階段などを使っていると、エレベーターがどこにあるのか分からなくなるのだと思います。それほど、エレベータールートでの迂回率はまだまだ多くあります。地方からやって来る車いすユーザーなどからは「エレベーターの位置が分からず、迷子になった」と、聞くことがあります。迂回率の課題は大きく、歩行できる軽度障害者や高齢者などは、階段は大変だけど、エレベーターは遠いから、近くにある階段をがんばって使うという移動の方法が生まれたりすることもあります。

目的地に向かうための移動という手段が、大きなハードルになり、外出が難しくなることもあるのです。移動困難者が快適な移動を確保することは大切であり、迂回率の少ないエレベータールートの確保がなされていくことを願います。

大阪の地下街(梅田・なんば・天王寺・京橋)ではマップを作っていて、トイレやエレベーターの情報が載っています。地下街のインフォメーションセンターでほしいと言えば、無料でもらえます(制作:大阪地下街株式会社http://www.osaka-chikagai.jp)。

私は、どんな場所でも、基本的に行きたいところには行ってしまいます。しかし、行きたいところへ出かけると、たどり着くまでに疲れきってしまうことも間々あります。

大阪市内の場合、地下鉄はほぼ100%エレベーターでのワンルート確保がされていますし、JR環状線も小さいエレベーターも多いですが、新今宮駅・大正駅以外はエレベーターが設置されています(可動式ホーム柵・ホームドアの設置は、なかなか進んでいない状況ですが)。

「大阪のええとこってどこ?」と聞かれたら、いつも悩んで「食べ物ならいろいろあるよ」と答えてしまうのですが、果たして、今回のような大阪のオススメスポットを紹介できるのか?悩むところです。

おまけに、観光スポットと言われているUSJや観覧車、展望スポットなどへは、入口までは行けても、車いすのままでは入れない・乗れないような場所が多かったりします。まだまだ運動の余地あり!大阪を楽しみきるためのバリアフリー度は、まだまだ課題ありだなぁと痛感しました。

そんなこんなで、悩んだ挙げ句、私の趣味でもある美術鑑賞から攻めてみたいと思います。いきなり余談ですが、美術館・植物園・動物園・水族館のいずれも、法令上は博物館の一種とされるのだそうです。動物園の動物も、水族園の魚も、法令上では、みんな資料なのだそうです!何とも、不思議です。そういえば、大阪っぽい博物館もいくつかあるので、まずはそのあたりから紹介していきます。

大阪歴史博物館(愛称:なにわ歴博)

大阪城の近くにある大阪歴史博物館は、地下鉄谷町線「谷町四丁目駅」の近くに位置します。館内はNHKが隣接しているので、タイミングがよかったら、ロビーなどで撮影している現場に遭遇できるかもしれません。入口を入ると一気に10階まで昇ります。大阪のまちを展望することができ、間近に大阪城が一望できます。各フロアにはそれぞれ映像や体感コーナーがあり、大阪の時代別の展示を楽しむことができます。

国立国際美術館

地下鉄四ツ橋線「肥後橋駅」から10分。ビルの中に現れる大きなオブジェ風建物が国立国際美術館です。地下3階へ降りると企画展のフロアになっており、地下2階は常設の作品が展示されていました。今回は、「モディリアーニ展(企画展)」を観ましたが、フロア別になっていたので、鑑賞の順序が途切れることはなく、快適に絵画を楽しむことができました。

また、大阪市立科学館が隣接して建っています。ここには、プラネタリウムがあります。車いすのままでも見ることができますが、頭上の星たちを眺めていると首が痛くなってしまいます。移乗が可能な方はリクライニングする座席への移乗をオススメします。他にも、化学の不思議を体験できるコーナーがたくさんあり、きっと子どもに戻ったような気分で楽しめますよ。

大阪市立美術館と天王寺動物園と通天閣と串カツ

この4つのスポットはぜひ通しで楽しんでいただきたいところです。JR、地下鉄谷町線・御堂筋線の「天王寺駅」下車。駅を降りるとすぐ天王寺公園があります。緑の中を通り抜けると、大阪市立美術館へと続いていて、1936年開館の外観とアールデコ調の装飾なども楽しめます。また、すぐ近くにある天王寺動物園も、サバンナゾーンやカバ舎など、動物を見せる工夫をしようという意気込みが感じられます。ゆっくりまったりしたい時にはオススメです。

動物園には出入口が2か所ありますが、通天閣側の出入口を出てちょっと進むと、通天閣が目の前に!ここからは、新世界。なにわのまちの雰囲気を感じることができます。通天閣の展望台にはエレベーターで昇ります。展望台フロアから大阪のまちが一望でき、ここでは、あらゆる願いを聴いてくれる「幸福の神様、ビリケン像」がお出迎えしてくれます。私も、いっぱい触ろうと思って行ったことがあるのですが、足しか届かず、足をおもいっきりナデナデしてきました。

そして、新世界周辺には、串カツ屋さんも多くあり、お気に入りの一軒を探し歩くのも、楽しいかもしれません。私が見つけた一軒は、カウンターとテーブルのあるお店です。一番入口側に近いテーブルに着席しました。車いすで入れるかどうか悩むお店でしたが、入れたうえに、さらに美味しかったりすると、良かったなぁ~と思わず笑顔になってしまいます。ここまで来れば、帰りは地下鉄御堂筋線・堺筋線「動物園前駅」が最寄り駅になります。

大阪人権博物館(リバティおおさか)

JR環状線「芦原橋駅」から徒歩15分。さまざまな人権問題を扱う博物館です。障害者のコーナーもあり、そこには今までの運動の歴史やキャプションに出てくるコメントや映像からも、当事者の声を感じることができます。私の問題認識を問われるようであり、逆に私を自覚して、考えることのできる場所であると思います。

展示の中には、「誰でも乗れる地下鉄をつくる会」など、駅に階段しかなくて、乗車拒否が当たり前であった時代から移動の保障を求めた取り組みもあり、エレベーターの要求の仕方も、障害者だけでなく、階段が使いづらい駅利用者の利便性を訴えてきたことが分かります。実は、私も少しコメントをしました。「“まち”に出かけることへの努力が必要とされている。健常者の視点で創られてきた“まち”だけど、私の歩き方は車いすというスタイル。快適な場面も増え、ユニバーサルデザインという視点で“まちづくり”が進められようともしている。しかし、創られてきた“まち”の結果、諦めさせられる部分も多くある。人にはさまざまな歩き方があり、健常者視点の発想を変える必要もある。そのためには“まち”に出かける努力も必要なのだと思う」と、書いてきました。

障害者の取り組みの中で、交通アクセスに関しては、移動の権利を求めてきましたし、これからも求め続けていきます。私は今日も、何か楽しいこと探しに大阪のまちに出かけようと思います。

(すずきちはる 自立生活センターあるる)

大阪歴史博物館
http://www.mus-his.city.osaka.jp/riyou/index.html

国立国際美術館
http://www.nmao.go.jp/japanese/kaikanjikan.html

大阪市立美術館
http://www.osaka-art-museum.jp/

天王寺動物園
http://www.jazga.or.jp/tennoji/shisetsu/index.html

通天閣
http://www.tsutenkaku.co.jp/annai/annai.html

大阪人権博物館
http://www.liberty.or.jp/information/index.html