「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年11月号
障害者放送協議会放送・通信バリアフリー委員会の取り組み
寺島彰
1 障害者放送協議会について
障害者放送協議会は、1998年9月29日に設置された。その目的は、「障害者に関わる放送・通信等のモニタリングを行い、また障害者の放送・通信等に関する著作権等の制度・施策について調査研究、提言を行うとともに、障害者に関わる放送・通信等事業の研究開発を行い、放送・通信等におけるバリアフリー化の推進を図ること」であり、現在、表1に示す全国21の障害者関係団体によって構成されている。表2に事業内容を示す。
表1 障害者放送協議会構成団体(順不同)
- 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会(中央障害者社会参加推進センター)
- 社会福祉法人日本盲人会連合
- 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会
- 財団法人全日本ろうあ連盟
- 社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
- 社会福祉法人聴力障害者情報文化センター
- 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会
- 財団法人日本知的障害者福祉協会
- 社会福祉法人全国精神障害者社会復帰施設協会
- 社団法人日本自閉症協会
- 全国社会就労センター協議会
- きょうされん
- 日本陣害者協議会
- 社会福祉法人全国社会福祉協議会
- 特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会
- 全国LD(学習障害)親の会
- 社会福祉法人視覚障害者文化振興協会
- 特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会
- 特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構
- 特定非営利活動法人全国聴覚障害者情報提供施設協議会
- 財団法人日本障害者リハビリテーション協会
表2 障害者放送協議会の事業
- 障害者に関わる各種放送・通信等のモニタリング、必要な提言、ガイドラインの作成等
- 障害者に関わる放送・通信等の制度、施策、および障害者専門放送に関する調査・研究および提言
- 障害者に関わる著作権問題等の調査・研究および提言
- 障害者に関わる番組の企画制作についての調査・研究および実施
- 障害者に関わる番組の企画制作への支援、協力
- 放送を通しての障害者問題に関する社会啓発の推進、および優れた放送事業や番組の顕彰
- その他本協議会の目的を達成するために必要な事業
本協議会は、会員団体を代表する委員によって構成されており、委員の互選により代表が選任されている。現在の代表は、日本盲人会連合の笹川吉彦会長である。
また、本協議会には、著作権委員会、放送・通信バリアフリー委員会、災害時情報保障委員会の3つの専門委員会があり、それぞれの専門性を生かした活動を行っている。
2 放送・通信バリアフリー委員会の活動
放送・通信バリアフリー委員会は、障害者に関する優れた放送に対する表彰や、放送局に対する障害者番組制作のためのコンサルティング、字幕や手話の付与、副音声解説等を実現するため、放送局、企業、関係省庁との協力関係の構築を推進している。
また、障害者に関わる放送・通信等の制度・施策、障害者に関わる番組の企画制作、および障害者専門放送に関する調査・研究、提言も行っている。研究および社会啓発の目的のために、近年実施したセミナーやシンポジウムは、表3のようになっている。また、調査・研究や啓発活動(他団体に対する協力を含む)については表4に示す。
表3 講演会等の実施
「デジタル放送について」「アテネオリンピック放送について」講演会(2004年9月1日)
「障害者のための情報保障~テジタルテレビ放送の情報アクセス~」セミナー(2005年2月20日)
「障害者放送協議会 放送・通信バリアフリーセミナー~障害者と放送・通信~」(2006年2月28日)
「障害者情報アクセスのためのデジタル放送の技術の活用法」「字幕・解説・手話放送に対する障害関係団体の関与について」講演会(2007年12月12日)
「障害者放送協議会シンポジウム 情報アクセシビリティの実現に向けて~障害者権利条約の時代における、著作権と放送バリアフリー~」(2008年3月15日)
表4 研究・調査・啓発活動
デジタル放送に関するアンケート調査(2004年5月)
アテネオリンピック放送に関するアンケート(2004年9月)
海外の障害者放送に関する海外調査(2005年3月)
障害者の情報アクセシビリティおよび情報にかかわる人権擁護に関するマニュアル「障害者とメディア」作成(2005年3月)
「障害者情報バリアフリー好事例ビデオ」作成(2005年3月)
視覚障害者が製品を使用する際の問題点に関するアンケート調査(2005年12月)
個人情報保護法の実施に伴うアンケート調査(2006年5月)
「デジタル放送に関するアンケート」(2008年2月)
障害者専用放送と情報アクセス支援のあり方に関する検討会報告書(2008年3月)
3 放送・通信バリアフリー委員会の現状と今後の取り組み
本年、5月に国連障害者権利条約が発効し、障害者の権利擁護の観点から放送・通信バリアフリーに対する取り組みが重要性を増している。ところが、残念なことに、障害者を憐みの対象にしたり、あるいは、逆にヒーローとして描くような番組が横行していることからみても、放送・通信の領域における障害者の権利に関する意識は高いとは言えない。そのため、本委員会の現状での主な取り組みは、障害者の権利擁護の立場から、デジタル放送を含む、字幕放送、解説放送、手話放送など障害者に関わる放送に関する要望、関係機関への働きかけを行ってきたところである。たとえば、平成19年度には、表5のような要望と提言を行った。今年度は、次のような取り組みを行っている。
表5 平成19年度の要望と提言
- 総務省との協議(2007年8月30日)
- 地上デジタル放送の開始に当たる要望ならびに緊急災害時における字幕放送、手話放送、解説放送に関する要望(総務大臣宛、経済産業大臣宛)(平成19年7月4日)
- 「『視聴覚障害者向け放送普及行政の指針(案)』意見募集」への意見提出(2007年9月27日)
- (社)デジタル放送推進協会(Dpa)「地デジ完全移行に向けた『簡易なチューナー』の仕様ガイドライン」についての確認(2008年1月11日)
- 総務省情報通信政策局放送技術課との懇談(2008年2月8日)
- 情報通信審議会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)意見発表(2008年2月29日)
(1)政策決定の場への参画と発言
情報・通信バリアフリーに関わる政策決定の場に、障害当事者の参画と発言を確保できるよう、情報通信審議会など政策的な影響力のあるところに、障害者団体の代表者を含めるよう要請する。この他、さまざまな場面で参画と発言の機会を確保していく。
(2)団体同士の情報共有と連携
本協議会は各障害種別、分野の団体から構成されていることから、それぞれの活動に関する情報共有や意見交換を今後とも行っていく。また特に、視聴覚障害以外の障害に関わるニーズや課題についても積極的に取り上げ、相互に一致できる課題については、連携して取り組みを進める。
(3)関係省庁や関係機関への働きかけと意見交換
引き続き、関係省庁や放送事業者、業界団体、関係機関等に対し、情報・通信バリアフリーの推進に関する要請と働きかけを行う。また、昨年度から始まった、全国文字放送・字幕放送普及推進協議会(全文字協)との意見交換を継続していく。
(てらしまあきら 放送・通信バリアフリー委員会委員長)