「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年11月号
1000字提言
チェアスキーツアーを継続して思うこと
沖川悦三
今から約30年前「チェアスキー」という車いすの人たちのためのスキー用具が開発され、1980年に日本チェアスキー協会主催の第1回チェアスキーツアーが開催されました。それから年に1回ずつ開催され、来年が30回目のチェアスキーツアー(今はチェアスキー全国大会)です。思えば私は第3回からずっと参加しており、そういう意味では相当な古株になってしまったようです。
このチェアスキーツアーの特徴は、チェアスキーが神奈川県総合リハセンターで開発されたものであったため、初期の参加者が神奈川県や東京都に住んでいる人だけだったということ、リフト付きバスなど無かった時代に観光バスをチャーターして行ったこと、ボランティアとしてお手伝いをする人たちを「スタッフ」と呼び、チェアスキーヤーもスタッフもみんなでスキーを楽しみましょう!というスキーツアーだったことです。とにかく昼も夜も楽しいスキーツアーでした。
その後、少しずつ全国から参加者が集まるようになり、総勢100人以上の参加者になっても、チェアスキーヤーとスタッフの比率(1対2)はあまり変わりませんでした。また、この時代は障害のある人たちの事業に多くの助成金がいただけた時代で、それでなくてもお金のかかるスキーというスポーツをみんなで楽しむ上で本当に助かりました。
最近の5年くらいはチェアスキーヤーが増え、スタッフが減るという状況で、参加者の総数は70~80人、比率がほぼ1対1になり、チェアスキーツアーの運営も苦しくなってきました。助成金がほとんど無くなった今、スキーツアーを企画すると個人や家族で行くより少し費用が高くなります。それでもこのツアーを継続していくのは、この楽しさを多くの人に味わってもらいたいからなんだろうなと思います。
車いすの人にとって雪山は今でも過酷な条件です。このツアーに参加してチェアスキーが上手になった人は、一人でもスキー場に行ってスキーをすることができます。でも、初めての時や自分で車の運転ができない人にとって、みんなで行くこのスキーツアーは何より強力な助っ人になります。
30年前と比べると参加者の意識もスキー場やホテルの条件もずいぶんと変わってきましたが、その時代なりのチェアスキーが楽しめるよう継続していきたいものです。
(おきがわえつみ 神奈川県総合リハビリテーションセンターリハ工学研究室)