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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年1月号

知り隊おしえ隊

点と点が繋がって、ふらっと出かけられるまちへ、名古屋

橋本知佳

はじめに

名古屋に生まれてン十年、ず~っと名古屋在住です。25年ほどは松葉杖で歩き、10年ほど前からは電動車いすユーザーです。お陰で楽に出かけられるようになりました。電動車いすで出かけるようになった10年前は、まちの中や公共交通機関はまだまだバリアがいっぱいでした。

名古屋と言えば地下街、そして、地下鉄です。地下鉄に乗って出かけるぞ!と思ったのもつかの間、階段しかない駅って何なの?と…。

バリアフリー情報

今、本当によく車いすの人たちの姿をまちで見かけるようになりました。

まちや施設のバリアフリー化が進められる一方で、マップやHP等でバリアフリー情報が提供、発信されています。でも施設をつくる側から発信されるものは、情報の有無や信頼性という点だけでなく、せっかくの情報が各施設からバラバラな形で提供されていて、必要とする情報にスムーズにたどり着けないこともしばしばです。一方、障害当事者がつくる情報は、当事者ならではの使える情報をつくることができますが、当事者向けの狭い関係の中でつくられていて、社会に対しての広がりがないように感じられます。

そこで、施設をつくる側(設計、施工、オーナー等)と施設を利用する側(今回は、車いす利用者)と共同で情報をつくろうという取り組みを始めました。今年度は、(財)名古屋都市センターまちづくり活動助成金を受けられることになり、「車いす利用者等に向けた本当に使える、使いやすい情報」として、どのような内容をどのような形につくり込むとよいか、と検討しています。

名古屋には、名古屋駅周辺と栄(さかえ)の2つの大きな繁華街があり、どんどん施設づくりが進んでいます。今回の取り組みにあたって、みんなが行くところ、行きたいところをと考えて、名古屋駅周辺と栄にあるいくつかの素敵な施設に見学の協力をお願いしました。今回は、この取り組みを理解してくださり、施設見学をさせていただいたところをお勧めスポットとして紹介します。

名古屋の二大繁華街、名古屋駅周辺と栄(さかえ)周辺

◆ラシック

栄に2005年にオープンしたラシック。ラシックは三越の専門館で、連絡通路で繋がっています。B4F~B2Fは駐車場、B1F~6Fはショッピングフロア、7F・8Fはレストラン階です。施設内は店舗内通路も含め、広くて、明るくて、フラット。横移動は楽々。すべてのエレベーターが車いす対応で、縦移動もスムーズです。

施設見学でB3F駐車場を見せていただいていたとき、メンバーの1人が「トイレに行きたいんだけど…」とボソリ。すると担当の方が、「そこにありますから、どうぞ」と言われたのです。駐車場階に広いスペースの車いす対応トイレがあった!のです。

車いす使用者用駐車場は、B4Fに1台、B3Fに3台、B2Fに2台分あり、満車の場合は一般駐車場を広く使って車いす用にすることも可能とのこと。どの階もエレベーターホールのすぐそばに設置されています。

全館、トイレの設置階には、多機能トイレか一般トイレ内に小スペースの車いす対応トイレ(車いすのサイズにより使用できない場合もあります)が設置されています。

ショッピングフロアもさることながらレストラン階は人気のあるスポットです。車いすの友だちと3人で行ったときも、1時間半待ってビュッフェスタイルの農場レストラン・モクモク風の葡萄へ。「料理をお取りしますので言ってくださいね」と、何回も取ってもらいましたが対応はとってもグッド。出入口に階段のあるお店が3軒ほどありますが、後はどのお店も出入口はフラットかスロープ状態で店内もスムーズに移動できます。名古屋めしの、ひつまぶし、味噌カツ、エビフライ、きしめんや、名古屋コーチン料理のお店もあり、さまざまなスタイルのお店が並んでいて目移りしてしまいます。

夜はライトアップで建物がとても美しく、レストラン街は23時まで営業しているので夜のお食事もお勧めです。

http://www.lachic.jp/

◆三越名古屋栄店

栄には有名百貨店が集まっていますが、三越はその一つです。

「何度かの建て増しを経て現在の建物となっていますので、ご案内がなかなか大変なのですが…」と、店内を案内していただきました。HPに紹介されている通り、地下街から店内へ入るバリアフリールートがあり、車いす対応エレベーターが2基設置されています。このエレベーターは奥行きが浅いので、店内の縦移動をするときは他のエレベーターに乗り換えるとスムーズです。

三越はB1F、6Fに多機能トイレ、B1F、2F、4F、6F、7F、9Fに車いす対応トイレを設置しています。バリアフリー整備にとても力を注いでいます。常時、店内をサービスアテンダント(男性3人、女性8人)が回っていて、「困ったことがあれば遠慮なく声を掛けてください」ということでした。

お勧めはデパ地下の食品売り場です。ワンフロアでまとまっているので便利です。季候のよいときはお弁当を買って、すぐ前にある久屋大通公園(南北2kmにわたる都市公園、樹木も多い)で食べるというのもいいですよ。

デパ地下のところどころスロープ状になっているところがあります。元は段差だったところを改修したのだそうです。

http://nagoya.mitsukoshi.co.jp/

アクセス:地下鉄東山線・名城線栄駅を利用する場合、20時までは三越B2Fから地下街を通って行けます。22時までなら、三越の向かいの中日ビル。サンシャイン栄ビルのエレベーターは始発から終電まで利用可。

http://www.crayon-box.jp/news/2005sakae/200502sakae.htm

◆名古屋ルーセントタワー

名古屋駅周辺にはランドマーク的な存在の建物がいくつかありますが、ルーセントタワーもその一つで2007年オープン。B1F~2Fはレストランやコンビニ、3Fはクリニックフロア、上階はオフィス棟となっています。車いすルートとしては地下鉄東山線名古屋駅からバリアフリーで繋がっていて、ルーセントアベニュー(地下道)を行くとルーセントへ。この地下道は名古屋市の要請もあって地域住民の生活道路としても利用されていますが、管理はルーセントが行っているそうです。

実はこのお話を聞いて納得したことがあります。というのは、ルーセントアベニューからルーセントに入るエレベーターはちょっと奥まったところにあり、B2F~1Fまでの稼働ですが、1Fで降りると施設の外に出てしまうのです。ルーセントに入る場合は、B1Fで乗り換えるとよいです。

飲食店はほぼどのお店も車いすで入れますが、寒い日には、B1F味噌煮込うどん専門店・山本屋本店はぜひ出かけてみてください。芯から身体が温まります。2Fの琉球ダイニング・どなんちはカジュアルな雰囲気で楽しめます。対応はもちろんグッド。

B1Fに多機能トイレ1か所、1Fに左右レイアウトの違う多機能トイレ、2F一般トイレ(女性用、男性用)内に小スペースの車いす対応トイレがあります。

あっ、それから、ルーセントアベニューのアートは必見です。動物のシルエットがストーリー仕立てで通路を案内してくれます。2007年度グッドデザイン賞を受賞。その他にもルーセントはアート作品がいっぱいです。HPでアップされていますが、実際を見てもらえるとよいですね。

http://www.lucent-tower.jp/

地下道は7時~23時まで利用可能。

おわりに

施設は、車いす利用者にとっても、どんどん良くなっています。そうした一つ一つの点を結ぶのが交通、公共交通や道路です。こちらも良くはなってきてはいますが、まだまだです。情報環境も含めて、改善を!と思っています。名古屋のまちが、点と点が繋がってふらっと出かけられるまちになるように。

(はしもとちか NPO法人ひとにやさしいまちづくりネットワーク・東海)