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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年4月号

障害者自立支援法の見直しと就労支援

厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課

はじめに

障害者の自立と共生社会の実現を理念とした「障害者自立支援法」が施行されて3年目を迎え、同法附則の規定による見直しが検討されてきた。本稿では、このうち、就労支援の見直しの内容・方向性について、概括的に説明する。

社会保障審議会障害者部会の報告・与党PTの報告

昨年12月の社会保障審議会障害者部会の報告において、就労支援については、1.一般就労への移行支援の強化、2.就労継続支援の在り方、3.障害者雇用施策等との連携強化等、という観点から就労支援の充実を図るべきとされている。

また、本年2月の与党障害者自立支援に関するプロジェクトチームの報告では、同様に一般就労に向けた支援や工賃倍増計画の着実な実施等を図るとされている。

これらを踏まえ、就労支援のより一層の促進を図るための必要な対応を図ることとしている。

就労支援にかかる見直しの方向性

1 一般就労への移行支援の強化

(1)一般就労への移行に対する報酬上の評価

就労移行支援事業における、一般就労への移行・定着の実績をきめ細かく報酬上の評価に反映するなどの見直しを行っている。

(2)企業への理解の促進等

一般就労への移行を促進するうえで、企業等の理解が重要となることから、障害者自立支援対策臨時特例交付金による基金事業(以下「基金事業」)において、1.企業側の理解促進と併せ、障害者の職場実習を受け入れる企業への助成(「職場実習・職場見学促進事業」)や、2.職場見学を実施する場合に助成(「職場実習・職場見学促進事業」(新規))するとともに、3.就労移行支援事業者が、障害者の雇用を検討する企業に対し、職務内容の提案等を実施した場合に助成(「障害者一般就労・職場定着促進支援事業」)することとしている。

(3)就労支援ノウハウを持った者の配置等

就労支援を担当する職員について、一般就労への移行支援の質の向上を図る観点から、高齢・障害者雇用支援機構で行う就労移行支援事業における就労支援員向けの研修(21年度中に開始予定、内容等は後日通知)や職場適応援助者養成研修修了者を就労支援員として配置の場合、報酬加算で評価をしている。

就労移行支援において、第1号職場適応援助者(ジョブコーチ)を配置する場合、これまでは最低基準に定める人員とは別に配置することとされていたが、非常勤の就労支援員等が就労支援員等としての勤務を要しない日については、ジョブコーチとしての活動を認めることとしている。

就労定着実績

《見直し前》 20%以上 26単位/日
《見直し後》 5%以上15%未満 21単位/日
25%未満 48単位/日
35%未満 82単位/日
45%未満 126単位/日
45%以上 189単位/日

2 就労継続支援事業の在り方

(1)就労継続支援A型の充実

就労継続支援B型事業所等から雇用契約に基づく就労継続支援A型事業所への移行を促すため、基金事業において、「就労継続支援A型への移行助成事業」を新たに実施することとしている。

(2)就労継続支援B型の新規利用

障害者部会の報告では、特別支援学校卒業者等、未就労障害者の就労継続支援B型の新規利用にあたっては、利用サービスの適否判断のための客観的指標の作成が困難な中、本人の能力・適性について、短期間のアセスメントを経ることが必要とされ、そのために就労移行支援事業等を短期間の利用を明確化することとされた。これについては、文部科学省と協議し、特別支援学校に在学中の生徒が当該学校の教育活動としての現場実習において、短期間のアセスメントとして、就労移行支援事業等を利用し、卒業と同時に適切なサービスを利用可能とするよう見直しを行うこととしている。

また、基金事業の「就労系事業利用に向けたアセスメント実施連携事業」により、特別支援学校等との連携によるアセスメントの実施体制整備に対し助成を行うこととしている。

(3)工賃引き上げの推進

就労継続支援B型の目標工賃達成加算において、「前々年度の平均工賃額を超えていること」の要件を廃止するとともに、基金事業においても、高い目標工賃を掲げ、かつ達成した事業所に助成することとしている。

平成19年度からの各都道府県での「工賃倍増5か年計画」に基づく事業において、平成21年度は、福祉施設で働く利用者の一般就労への移行を促進するため、新たに施設職員の能力向上に向けた研修を事業対象とする一方、国や地方自治体、企業等からの仕事の受注や分配等を円滑に行う、都道府県ごとの共同受注窓口の設置・運営を可能とするため、「工賃倍増5か年計画支援事業」の実施要綱の改正を行うこととしている。

(4)障害者の就労支援施設等に対する官公需等の発注促進

昨今の厳しい経済情勢の中、企業・経済団体と合わせ、国や地方公共団体の官公需促進のため、本年2月に各都道府県等宛に通知を発出する一方、また、国においても各中央省庁の会計担当者を集めた福祉施設受注担当者会議を本年2月に開催して、官公需等についての共通認識を高めるとともに、3月には各省庁官房長等宛に、内閣府政策統括官、職業安定局長及び社会・援護局長連名により、発注のさらなる促進をお願いする通知を発出した。

(5)施設外就労・施設外支援の積極的な取組

就労移行支援事業、就労継続支援事業において、一般就労への移行や工賃(賃金)の引き上げに有効な事業所以外での活動(施設外就労等)については、ユニット単位で施設外就労を実施した場合の報酬加算を創設(施設外就労加算(20年度まで基金事業で一部実施))することとしている。

図 「施設外就労への支援策拡大図・テキスト

3 障害者雇用施策等との連携について

(1)障害者就業・生活支援センター事業

障害者就業・生活支援センターは、「成長力底上げ戦略」等で、平成23年度までに全障害保健福祉圏域に設置することとしているが、21年度より、生活支援部分について、地域生活支援事業費補助金から移替し、単独の補助事業とし、21年度は新規増分を60か所加え、全国265か所で実施予定である。

(2)一般就労後の職場定着フォローアップ等

障害者の一般就労後のフォローアップのさらなる促進のため、基金事業において、就労移行支援事業者が障害者就業・生活支援センター等と協力し、一般就労後、一定期間経過の者を対象とする交流会等を開催の際の助成の新たな実施(障害者一般就労・職場定着促進支援事業)や、就労移行支援事業の就労移行支援体制加算見直しを実施することとしている。

また、障害者部会の報告を踏まえ、旧通勤寮の担ってきた機能について、生活訓練の宿泊型自立訓練として、充実・強化を図ることとしている。

(3)離職した者の受入先の確保等

離職した者等への受入先確保促進のため、障害福祉課長通知を改正し、企業を離職したことに伴う施設への再入所を希望する者等を受入の場合の定員外の入所児・者の受入可能な範囲を、入所定員または利用定員の5%から10%まで拡大するほか、離職の危機を迎えている者や、やむを得ず離職した者に対して、障害者就業・生活支援センター等と連携し、支援実施の事業所に対し、基金事業により助成することとしている(離職・再チャレンジ支援助成事業)。

障害者雇用促進法の改正

昨年12月の障害者雇用促進法の一部改正により、障害者雇用納付金制度(納付金の徴収・調整金の支給)の適用範囲を、常用労働者101人以上の中小企業に拡大するなど、今後、さらなる雇用の拡大が期待されるが、この期待に福祉サイドがどこまで応えられるか問われることとなる。