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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年4月号

地域移行推進員の活動を通して思うこと

金川洋輔

推進員の主な活動は「個別支援」と「本人のためのチーム作り」になります。そのためフットワークが軽く、動き回れる人材が求められています。

病院から連絡をもらい、ご本人に会わせていただいて事業説明をし、ご本人が退院してどこで暮らしたいと思っているのか、退院した後にどんな暮らしをしたいのかを聴かせていただきながら、“そのためにどんな準備が必要なのか”を一緒に考えながら行動していきます。かつてはご本人との二人三脚で進めていく感じでしたが、今はご本人とその方の味方になってくれる人たちとのチームで動いていくように、少しずつ変わってきたように感じています。

私も活動を始めてしばらくは、他業務との兼任で支援していましたが、ご本人のタイミングや都合に合わせられず、こちらの都合に合わせていただくことがほとんどで、そのせいでご本人のタイミングを逃がしてしまったりすることばかりでした。時にはご本人のモチベーションが下がってしまうこともあり、病棟の職員と「これはご本人のせいではなく、自分たち支援者のせいではないのか?」ということをよく話し合っていました。

ここ数年は、推進員専従としての毎日を送っています。ご本人と会えた時に自分の手帳を見せて、一緒にその場で、次の約束とその時にすることを決めることができるようになってきました。「当事者中心」とは口ばかりで、合わせてもらうばかりの時からすると、まだ狭い選択肢でしかありませんが、以前よりは少しだけ、ご本人と一緒に歩めるようになってきたのは専従業務になったからだと感じています。

都内でも専従で業務についている推進員はとても少なく、人材育成以前の人材確保もままならない状況、確保しても専従職員2人は雇えない事業費の現状、にもかかわらず、国全体で見た時には予算が使い切られていない矛盾等々が背景にあると感じています。

名称は変わりつつも、地域移行推進員として、東京都モデル事業時から数えて5年が経ちました。その間に退院された方たちが、事業自体からは卒業された今でも、街中で偶然会えば遠くからでも声をかけてくれたり、時々電話をくれたりします。そして、「今度一人暮らし始めたんです!」とか、「元気ですか?自分は元気です」といったことを教えてもらえることをエネルギーに活動を続けています。

(かながわようすけ 地域生活支援センター サポートセンターきぬた)