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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年6月号

時代を読む8

アイラブパンフ運動

アイラブパンフ運動を一言でいうと、「IアイLOVEラブコミュニケーション―手話通訳制度化のために―」というパンフレット(定価200円)を普及させる運動です。

1970(昭和45)年頃から、手話通訳の派遣、設置、養成の事業が始まり、手話に対する国民の理解は広まりつつありましたが、ろうあ者の問題、手話通訳の業務、責任についての理解がまだ不十分であり、手話通訳者の認定基準もなくレベルの格差が大きい、身分が不安定であるなどの問題が出ていました。

その状況の中で、全日本ろうあ連盟(以下、連盟)が厚生省(当時)の委託事業を受けて、学識経験者、関係団体、行政機関などから構成される「手話通訳制度調査検討委員会」を発足させ、1982(昭和57)年から2年半に及ぶ調査・検討を経て、「手話通訳制度調査検討報告書」(以下、報告書)をまとめて厚生大臣に提出しました。

この報告書の内容を国民に知ってもらい、手話通訳制度化の実現に協力してもらう必要があると考え、報告書の内容を分かりやすくまとめたパンフを作り、国民の人口の1%に読んでもらうことを目標とし、120万部を普及目標数としました。

厳しい運動でしたが、連盟全体を挙げて取り組んだ結果、2年間で普及目標を達成することができました。

パンフを読んだ方から寄せられたハガキの総数は、1987(昭和62)年6月30日までで28,343通に達し、手話通訳制度の必要があるという声が90%以上と、国民に理解を広めることができたことが示されました。

パンフ普及運動の成果により、1989(平成元)年から厚生労働大臣「手話通訳技能認定試験」制度による手話通訳士試験が開始し、現在までに、手話通訳士の数は2、594人に達しました。私たちは、この手話通訳士試験を司法試験などと同等の国家試験へ格上げすることを要求していますが、まだ実現していません。

現在、聴覚障害者の福祉に限らず、司法、教育、労働などのあらゆる分野で「いつでも、どこでも、情報へのアクセスとコミュニケーションが保障されている」環境を実現させるために、「情報・コミュニケーション法(仮称)」の整備を目指して新たな運動を始めました。

(松本正志 財団法人全日本ろうあ連盟手話通訳対策部長)