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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年10月号

障害者の働く「パンハウス・ワークランド」の取り組み

中井潤一

自分たちでパンを作って販売したい!―パンハウスの誕生

1991年5月25日、箕面市独自の障害者事業所制度により、障害者の働く「パンハウス・ワークランド」(以下、パンハウスという)ができました。

「障害者の働く場を!自分たちでパンを作って販売したい!」という障害当事者の思いで始まりました。社会の一員として、当たり前に働き、給料を得て好きなことに使う。障害のある人もない人も共に差別も区別もなく共に働く。パンハウスはそういったことを実現していく場所です。

このような理念の下、パンハウスでは、障害者も健常者も全員が運営主体となり、仕事の分担など、みんなで決めています。また毎月1回は定期会議を行い、何か問題などが起きると、その都度、みんなで話し合っています。

何事も自分たちで決め責任を持つという意識を大事にして、担当した仕事は責任を持ってやるという考えで働いています。

現在は、障害者スタッフ12人、健常者スタッフ3人とパートさんが働いています。

箕面市独自の障害者事業所制度

箕面市には独自の障害者事業所制度があります。パンハウスの運営には、箕面市から障害者雇用助成金が出ています。

助成の要件は、次のとおりです。

  • 職業的重度障害者の雇用実数が4人以上かつ雇用割合が30%であること
  • 障害者雇用および職種開拓・職域拡大に向けた事業内容を社会的に明示していること
  • 障害者雇用に関して、箕面市・箕面市障害者事業団との連携を保持していること
  • 事業所内外で障害者問題、人権・福祉問題の啓発を実施していること
  • 事業所の経営機関に障害者自身が参画していること
  • 労働保険(労災保険、雇用保険)の適用事業所であること
  • 事業所として経営努力がなされていること

パンハウスは、以上の要件をクリアして、障害者事業所として認定されました。障害者スタッフも最低賃金を超える金額が支給されています。 

事業の内容

事業の内容は、主にパンの製造、販売です。

現在、一日に製造するパンの数は、季節によって変わりますが、350個ほどです。そのうちの300個くらいは、同じ箕面市にある箕面市障害者共働作業所そよかぜの家からの注文です。そよかぜの家が、箕面市内の公共施設や幼稚園、保育所などいろいろな所で販売をしています。

そのほかに、幼稚園にも定期的にパンを納入したり、箕面市内のさまざまなイベントやお祭りに出店して販売、ならびに宣伝活動をしています。

個人宅への無料配達、運動会などイベントで使われるパンの大量注文等も受け付けています。

仕事は、障害者、健常者の区別なく、できることを担当していますが、スタッフが休んだりした時でもだれかが代わってできるよう、日頃から分担を変えたりしています。

配達は、特に担当者が決まっているということではなく、手の空いている人が行っています。イベントは全員で参加し、販売活動をします。

50種類の無添加パン

現在、7人の障害者スタッフがところ狭しと働いています。

朝9時から夕方5時まで、パンの生地作り、生地の中に入れる具材づくり、下準備など、それぞれが責任を持って働いています。

パン生地は無添加というのがパンハウスのウリで、生地の中に入れる具材なども体に良いものを使って、できるだけ自分たちで作っています。

パンの種類は50種類以上ありますが、すべてスタッフが考えて作っています。定番は、あんパン、クリームパン、メロンパン、食パンなどです。食パンだけでもチーズ入り、雑穀入り、クルミ入りなどいろいろあります。パンハウスオリジナルはたくさんありますが、中でもクリームチーズパンが人気です。クリームチーズと手製のカスタードを練り合わせ、レモン汁を加えたものをパン生地で包んでいます。

ほかにも手作りで、夏季にはゼリーやシャーベット、プリン、白いチーズケーキ、カップケーキなど、新しい商品を生み出しています。

新しいパンや商品の開発は、比較的製造量の少ない夏場に考えて、試作や試食をみんなでしています。

「パンハウス・ふわふわふわ」

パンハウスができた頃は、パンの製造をするだけのパン工場だったのですが、近所に住む方などが「パンを売ってほしい」とよく来店されたので、後から工場に付け足した店舗部分で販売を始めました。

工場部分に付け足して作った店舗は、「パンハウス・ふわふわふわ」と言います。最初は名前がなかったのですが、リニューアルをした時に記念でつけました。この名称もみんなで話し合って決めたものです。

午後1時には、焼きたてパンがお店に並びます。パンハウスの店舗は行列ができるほどお客さんは来ませんが、パンハウスのパンを気に入っていただいた常連さんなどが買いに来てくれます。

「そよかぜ通信」の発行

啓発活動として、そよかぜの家と共同で「そよかぜ通信」を3か月に1回、発行しています。日々の活動報告や商品の紹介、スタッフの想いなどを載せています。原稿の作成から発送作業までを行っています。

そよかぜ通信は、パンを買ってくれた人をはじめ、パンハウスに何かしら関わってくれた人にも本人の了解を得て、送っています。

第2店舗「ぱんきぃ」

1997年12月、パンハウスの第2店舗として、障害者の働く店「ぱんきぃワークランズ」(以下、ぱんきぃという)がオープンしました。ぱんきぃでは、5人の障害者スタッフが働いています。ここではパンハウスでは扱っていないクッキーも製造し、そよかぜの家に卸しています。

ぱんきぃは店舗販売スペースが広く、来店するお客さん中心の販売活動をしています。

課題と展望

現状の課題としては、パンハウスの作業スペースが狭くなってきたことです。それからどんな障害者でも働けるとは言えない設備上の問題があり、車いすの人が働くのは難しい状況です。そのためこれ以上、障害のある人を雇用したくても狭くて危険なので、改修して広い作業スペース確保の必要性を感じています。

第2店舗のぱんきぃも狭くなり、今後は第3店舗を獲得し、さらなる障害者雇用ならびに新しい仕事を増やしていかなければと考えています。

(なかいじゅんいち 障害者の働く「パンハウス・ワークランド」)