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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年11月号

生活支援センターと地域生活者の防災の取り組み

本田隆光

防災についてどう考えどう対応しているのか、当センターで支援している知的に障害のある地域生活者の中から、単身生活者2人と夫婦生活者1組に意見を聞いてみました。

◎Aさん(50歳代・女性)単身アパート暮らし

1.防火対策

(1)ガスを利用し終わったら、元栓を締める。

(2)出かける時には、電化製品のコンセントを抜いておく。もし火事が起きた場合には避難する。火事を未然に防ぐために、火の元に気をつけることを心がける。

2.防災対策

(1)棚の上にたくさんものを置かない。

(2)懐中電灯を準備する。地震が起きた時には、机の下に隠れる。

支援者から見て、居間にはタンス類が多いので、転倒対策が必要と思われる。本人へは、有事の際にけが等があれば、支援センターへ電話するよう指導が必要である。

その他、災害が起きた際の近所との協力体制などは築かれておらず、また付き合いもないため、どのような体制になっているかの確認は必要である。ただ隣人が知り合いのため、困った時には頼ることは可能である。また、避難場所の公園も理解している。

◎Bさん(30歳代・男性)単身アパート暮らし

1.防火対策

(1)ガスを利用し終わったら、元栓を締める。

(2)出かける時には、電化製品のコンセントを抜いておく。

(3)コンロを使う時に、食器等物が置いてある側のコンロは使わないよう心がける。また、使う時には、近くに物がないように移動させる。

(4)コンセントの差し込み口のところに物を置かないようにしたり、ほこりがたまらないようにする。

(5)消火器の場所は把握している。これから冬になり、ストーブを使うので、ストーブの前に燃える物やスプレー缶等を置かないよう気をつける。

2.防災対策

特にしていることはない(実際、タンス等危険な箇所も特にない)。地震による火事等の二次災害に関する危険意識はあり、元栓を閉める、ストーブを消す等の緊急時の対応は可能である。

3.その他

(1)冬になると、アパート外の階段が凍り滑りやすくなるので危険だ。危険とは認識しているが、具体的な対策はとっておらず、滑らないよう端を降りる程度の対応である。

(2)近所との付き合いは無く、緊急時にどのように協力体制を敷くかは不明。

(3)有事の際の避難場所(公園、学校の校庭)は理解している。

◎C、Dさん(夫婦同居世帯・アパート暮らし・Cさんは歩行障害のある身体障害を合わせ持つ)

1.防火対策

ガスレンジを利用せず、IHヒーターを利用(IHヒーターを利用できるように工事した)。家事はヘルパーを利用しているため、自分で火を使うことがないので、特に注意はしていない。

火事が起きた際には、近隣に助けを求める等の対応をする。また、支援センターへも連絡が来ると思われる。

2.防災対策

特に対策はしていないが、棚やタンスが倒れないかが心配箇所である。地震が起きた場合、本人らはテーブルの下に隠れる等の対応を考えてはいるが、支援者としては、対象者Cさんは足が不自由なため、慌てて動かない方が良いと考える。災害に備えての準備は、本人たちが分かっていなかったので、支援者と防災グッズをそろえたり等の支援が必要と思われる。

3.その他

(1)本人たちは意識していないが、支援者は、玄関にある段差を危険と感じる。しかし、アパートであるため改善は難しい。

(2)今後は棚やタンスの固定等、防災への支援が必要。

(3)近所の人とは挨拶程度で、災害時の協力体制はない。また避難場所も本人たちが知らないため、確認が必要である。

今回の聞き取りで確認できたのは、グループホームなどを活用して地域生活している人たちは、非常通報設備や警報機器の取り付けさらに、定期的な避難訓練など安全対策は十分ではないにしても講じられているのに対して、アパート等で一人暮らしなどをしている人たちは、相談支援事業所によるサービス調整でヘルパー派遣等の支援は講じられているものの、いざという時、安全対策がシステム化されていないことが浮き彫りになった。

このことは、グループホームなどでの生活には設置者である法人の責任が大きいのに対して、単身生活者の安全は軽視されてしまいがちになっているのではないかと思われる。また、そもそも単身や夫婦での暮らしを考えると戸建て住宅は少なく、多くの場合、アパートなどの共同住居が想定されている中で、近隣住民との付き合いがどこまでできるのか不安もある。

災害弱者として常に対応しなければならないと想定される人たちへの安全な地域生活のために必要なポイントとしては、本人の同意を得ることを前提として、以下が考えられる。

  1. 火災予防として、電磁調理器などの安全な機器の設置や非常通報設備の設置
  2. セキュリティ面の強化も含めた警備保障会社の活用
  3. 避難先の定期的な確認
  4. 消防署や、民生委員などへの居住情報の提供
  5. 地域の相談支援機関の緊急時対応の方法の確立

(ほんだたかみつ 障害者総合生活支援センターふくいん所長)