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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年11月号

1000字提言

コロンビアの地雷被害当事者組織

高橋競

南米大陸にコロンビアという国があります。コーヒーで有名なこの国は、ゲリラによるテロや誘拐、麻薬といった深刻な問題を抱えた国としても知られています。

近年、大きな社会問題のひとつになっているのが地雷です。国内紛争が解決していないコロンビアでは、地雷除去活動や地雷回避教育が進んでおらず、毎年、多くの一般市民が地雷による被害に遭っています。

コロンビアの地雷被害のほとんどは、ゲリラのいる山間部で起こります。都市の病院に搬送され一命を取り留めたとしても、元の地域に戻れずに国内避難民になってしまう人も多いそうです。

地雷は、さまざまな障害の原因になります。もっとも多いのは、手足の切断。火傷(やけど)、骨折、視覚障害、聴覚障害なども数多く報告されています。また、被害者の多くはPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいるとも言われています。

先日、地雷被害がもっとも多く報告されているアンティオキア県で、地雷被害当事者組織の方々とお話しする機会がありました。

代表を務めるのは、地雷で両手と視覚を失ったオスカルさん。組織のことについて聞いてみると、「コロンビアでは毎年、何百人もの人々が地雷の被害に遭う。でも、被害者同士のつながりはほとんどないんだ。今はまだ小さな集まりだけど、将来は被害者のつながりを全国規模にしたいと思っているよ」と話してくれました。

この組織のロゴマークには、片足を切断した地雷被害者と、その人を支える人が描かれています。しかし、影をよく見てみると、2人とも両足でしっかりと立っていることが分かります。この不思議なロゴマークには、光が当たることで、障害は障害ではなくなる、とのメッセージが込められているそうです。

格差の大きいコロンビアの社会で、理念だけを打ち出して組織を発展させることはできません。まだ生まれたばかりのこの組織が、自分たちの理念に基づいた活動を広げていくためには、良い意味でのしたたかさを身につける必要があります。

最近、オスカルさんは観光ガイドの仕事を始めたそうです。まだお客は全然来ていません。来月、日本から知り合いが来る予定なので、時間を見つけて彼にガイドを頼もうかと思っています。わがままな日本人観光客へのガイド経験は、きっと彼の役に立ちます。

(たかはしきょう JICA専門家)