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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年12月号

1000字提言

ひとりにさせないよ!

宮野秀樹

頸髄損傷となって19年が経つ。四肢がマヒした体に当初は戸惑ったが、同じ障がいの仲間に支えられて今日に至った。私が所属するセルフヘルプグループ・兵庫頸髄損傷者連絡会について少し書きたい。

頸髄損傷者(けいずいそんしょうしゃ)は言いにくく舌を噛(か)みそうになるので、頸損(けいそん)と略すのが一般的である。頸損連絡会は全国組織で、本部と9支部・4地区窓口で構成されており、頸損者の抱える問題の解決のために活動している。兵庫は支部としては一番歴史が浅く、発足して8年目。関西と言えば“大阪”“京都”と連想され、兵庫はなぜか影が薄いが立派な関西である。両府を凌ぐほどの良い意味での“おせっかい”で“あつかましい”気質があり、兵庫の役員は全員がこの気質を持ち合わせている。

自立生活を支援する団体、医療機関、福祉施設はもとよりボランティア、NPO等の地域生活に密着した関係機関との信頼関係を役員一丸となって築き、その上で各機関より得た情報を元に、地域で何の情報も得られず困難な生活を送っている頸損者を見つけ出しセルフヘルプを展開していく。

1人の頸損者に5、6人のおせっかいが押し寄せるのだから、否が応でもロールモデルを見ることになる。介護保険と自立支援法に翻弄される年配頸損者から復学しようとしている若年頸損者に至るまで、一人ひとりに対してその問題解決から社会参加や社会復帰のきっかけづくりに従事することで、役員の高齢化と後継者不足に悩む会に若い頸損者を引き入れ、幅広い年齢層での運営を実現させている。当会のスローガンは「ひとりじゃないよ」である。

そんな当会が力を入れているのが、今秋ようやく創刊できた情報機関誌『縦横夢人(じゅうおうむじん)』。「自由自在。思う存分。」という意の熟語「縦横無尽」を、東西南北に広い面積を擁する兵庫県にセルフヘルプという輪を『夢』を持って広げていく『人』であろう!という我々の思いを込めて「無尽」を「夢人」にした。兵庫発、全国へも夢を届けるべく駆け巡ろう!という熱い思いも込められている。

編集に携わるのは30代を中心とする若手頸損者3人。幾多の情報誌が発行されている中で、当機関誌も会員に限らず多くの仲間に声を届けたい!という思いで編集作業を行っている。つい最近も、明石市にある絶品の玉子焼き(たこ焼き:明石市ではダシにつけて食べる)のお店を3人で取材に行った。雑誌に載る有名店ではないが地元の人に人気のお店で、確かに今までに食べたことがないくらい美味しかった。ビールを飲んでイイ感じになったみんなの意見は「流行(はや)るのは困るのでボツ」とのこと。自らが楽しんで記事を作ることを大切にしている。そんな「縦横夢人」を読みたい方は私までご連絡ください。

(みやのひでき 兵庫頸髄損傷者連絡会事務局長)