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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年6月号

自治体の支援施策 兵庫県太子町
人生80年いきいき住宅助成事業

杉原勝由・高見真輝子・三木隆史

聖徳太子ゆかりの歴史と伝統を培う兵庫県太子(たいし)町は、兵庫県南西部に広がる播州平野に位置し、穏やかな瀬戸内気候のもと姫路市およびたつの市と接し、東西6.4キロ、南北3.7キロのほぼ整形に近く平坦な土地です。古くから交通の要衝として栄え、山陽自動車道にも接続している国道2号線バイパスや国道179号線など自動車の利便性が良く、JR西日本網干総合車両所から京阪神方面への始発電車が頻繁にあり、座って出勤できると評判です。

また、大手電機メーカーなどの工場をはじめ事業所、商業施設が地域集約的に立地し、コンパクトなベッドタウンとして西播磨地域で唯一人口が伸び続け、今では3万4千人を超えています。高齢化率は19.4%と低く、若い人の転入や新生児が多いのが特徴で、まちの様相や人々の暮らしは都市的なまちへと変貌を遂げていますが、「街並みは変わっても、町の持つ温かな雰囲気は変わっていない」とは、本町出身の野口聡一宇宙飛行士の言葉です。

このように古来から受け継がれてきた聖徳太子のご精神である「和の心」を大切にしながら互いに支えあい、安全で安心して暮らせるまちづくり、そしてだれもが住んでよかったと実感し誇りに思えるまちづくりをしています。

さて、人生80年いきいき住宅助成事業(以下、本事業)の兵庫県の実施要綱では、次のタイプがあります。

住宅改造・一般型:60歳以上の高齢者または障害者手帳などをお持ちの方がいる世帯で、今住んでいる家のバリアフリー改造

住宅改造・特別型:介護保険の要介護・要支援の認定を受けた方または障害者手帳などをお持ちの方が、自宅で自立して生活できるよう身体の状態に適した改修

増改築型:住宅改造・一般型や住宅改造・特別型の助成と併せて増改築の経費を追加しての助成

共同住宅(分譲)共用型:分譲マンションの共用部分を高齢者や障害者をはじめだれもが住みやすくなるようなバリアフリー改修

本町での本事業は、平成6年度から事務担当者と建築士で始めました。平成9年度からは理学療法士、平成11年度からは社会福祉士も加わりました。平成12年度からは介護保険の住宅改修と一体的に行うよう制度改正がありました。申請・受付事務の流れは次のとおりです。

介護保険の住宅改修申請書は本事業の申請書も兼ねていますが、受付は本庁舎から約2キロ離れた保健福祉会館内の生活福祉部さわやか健康課介護保険係で行い、申請内容を確認します。介護保険住宅改修助成対象限度額の20万円を超えていると、その場で同じフロアの同課老人福祉係に連絡が入ります。老人福祉係では所得調査を行い、世帯の中に7万円以上の所得税課税者がおられると本事業の助成対象外となるため、介護保険係に返却します(申請書には世帯全員の所得調査の承諾項目があります)。

助成対象者と判明すると、本事業の住まいの改良相談員である老人福祉係の社会福祉士、理学療法士および本庁舎内の経済建設部街づくり課建築係の建築士の訪問可能日を調べ、申請者に本事業の説明と現地訪問の日程を調整します。最近は職員間が携帯電話で確実に連絡できるようになり、多くは3日以内で、場合によっては即日訪問もあります。申請者の「1日でも早く」という気持ちを考慮し、他の業務を後回しにすることもあります。

障害者等の住宅改修申請の受付は本庁舎内の生活福祉部社会福祉課障害福祉係で行い、申請額にかかわらず、建築士と理学療法士に連絡が入り、20万円を超え、所得を調べ、本事業対象と判明すると社会福祉士も加わります。

現地訪問では、申請内容から家族構成、障害の内容を共通理解し、調査に臨みます。

建築士は、申請者の希望する改修方法が家屋構造に対し適切か、安全に使っていただけるかを判断します。施工業者には不慣れな業者もおり、補助対象内外の仕分けが容易な見積書の作成指導を行うことがあります。中には急なスロープが道路に向かって計画された危険なケースもあり、現地で施工業者と一緒に再検討したり、工事費の負担が困難な申請者には、個人負担を極力抑えたプランを提案することも必要です。

理学療法士は、申請者の体の動きを確認します。出来る限り、リハビリ通院などをされている場合は本人の同意を得て、担当の理学療法士や作業療法士からも情報を得るようにしています。余談ですが、私たちの前での本人の動作と後で療法士から得る情報が食い違うこともあり、質問し答えを聞いているうちに療法士の力量を伺い知ることがあり、リハビリ訓練室だけでしか接していないことが原因と思われることが多々あります。私たちとしては、在宅での生活動作にもっと関心を持ってもらいたいと思うこともあります。

社会福祉士は、家族構成、経済状況、介護状況等を確認し、申請者に有益な他の制度や社会資源を提案します。

この現地訪問の結果を基に住まいの改良相談員として意見書を出し合い、申請者に必要な工事内容を特定し、補助対象工事費を算出します。その過程は、兵庫県作成の詳細なマニュアルに則り行います。

この結果をもって許可通知を行った後、完了の際には検査を行い、申請者の感想も聞き、中には数年後の状況も確認することもあります。常勤正規職員で三職種が揃い、円滑に対応できる市町は県下でも希(まれ)とのことなので、これを生かしていきたいと思います。

(すぎはらかつよし・たかみまきこ 生活福祉部さわやか健康課、みきたかし 経済建設部街づくり課)