「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年6月号
実践例
ケアスペースハウス―3坪型組立介護ユニットハウス―
伊藤利之
1 はじめに
障害者や高齢者にとって、福祉用具は彼らの生活能力の向上や介護の軽減に欠かすことのできないものである。とりわけ大型のリフターや段差解消機などは、人的介助の「力」を代替してくれるため、介護者の数を減らすことができる効率的な用具である。しかし、大型の用具であればなおさらのこと、それを有効に使うには環境を整えることが必要である。家具の設置場所を変えるだけで済む場合もあるが、大掛かりな住宅改修を必要とする場合もある。したがって、福祉用具の支給と住宅改修は一体的に検討されなければならず、介護者の条件を含む総合的な環境整備が求められている。
しかし、公的介護保険制度における「住宅改修」の費用は、それが家主の財産価値を高めることにならないよう、手すりの設置や簡単な段差解消の費用として限度額20万円と定められている。そのため適切な福祉用具の利用ができないことも多く、デイサービスにおける送迎サービスなど、介助者2人以上の確保を余儀なくされている実態もある。
今回紹介する「ケアスペースハウス」は、以上のような問題を解決するために開発したものである。
設計図
(拡大図・テキスト)
2 開発のコンセプト
(1)重度障害者や要介護高齢者の身の回りの世話を介助者1人で可能にする。
(2)1日以内に必要な生活スペースを用意でき、不要になった際には速やかに撤去できる。
(3)耐震性に富み、安心して生活できる。
(4)外観は、いわゆる「離れ屋」のイメージになるようにデザインする。
(5)レンタル方式とし、無駄なく安価に提供できる。
(6)建築確認申請などの法的な手続きを必要としない。
3 3坪型組立ユニットハウスの特色
(1)室内はバリアフリーで、トイレ・シャワーユニットに加えて天井走行式リフトを装備、一人でトイレやシャワーの介助ができるように設定してある。
(2)障害種別を問わず、車いすや段差解消機などの福祉用具を有効に利用できる。
(3)工場生産品のため施工が早く、平地さえあれば1日で組立設置を終了、撤去も容易である。
(4)本体構造は軽量鉄骨製で耐震性が高い。
(5)規格品に限らず、当事者および介護者のニーズに合わせた特注品の製造も容易である。
(6)外観は、母屋と合わせた色調を選択することができる。
(7)ハウスの面積は10m2未満で建築確認申請が不要である。
4 おわりに
ここに紹介した「ケアスペースハウス」は、現状では介護保険制度の適用対象ではない。しかし、レンタル方式で提供する予定であり、その点では家主の財産価値を高めることはないため、将来的には適用対象となる可能性を秘めている。また、平坦な空き地さえあれば設置可能なため、このユニットを必要なだけ並べることでグループホームなどを設置することも容易である。ちなみに、立ち退きを求められた際には他の土地へ移転することもまた容易で、その意味では汎用性の高いハウスといえよう。
(いとうとしゆき 横浜市総合リハビリテーション事業団顧問)