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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年6月号

1000字提言

虹色の幸せ

尾濱由里子

目が見えない中での私の子育てももうすぐ丸6年。

一人娘はあっという間にすくすく育って、ついに保育所の年長さんです。

保育所に通い始めた頃は、ガイドヘルプが保育所の送迎に利用できないという大きな壁にぶつかりました。「通年かつ長期にわたる外出には使えない」という決まりがあり、ただ当たり前に母親として娘の送り迎えをしたいだけなのに、その当たり前がかなわず悔しい思いをしました。その後、要望が通り、堂々と送迎ができるようになった日、あまりのうれしさに思わず泣いてしまったことを覚えています。

保育所の先生にその日の娘の様子を聞いたり、他のママとたわいのない話をしたり、帰りの道中に咲いている花やいつもほえる犬、焼き芋の匂い、商店街のおじさんの掛け声など、娘が興味津々のあれこれを一緒に楽しむことができるようになりました。

成長につれて娘の行動範囲は広くなり、時にはお蕎麦(そば)屋さんの前で水槽の金魚をず~っと見たり、だんご虫やありんこを探しながら歩いたり、わざと側溝に入ってみたり、お友達と手をつないで洋服屋さんに走りこんでしまったり…。私はヘルパーさんとはぁはぁ息を切らしながら追いかけます。

遊び疲れたのか「抱っこして~」と一歩も歩かなくなってしまうこともあり、5歳の今でもその甘えん坊っぷりを発揮してくることもたまにあります。

どんな些細(ささい)な出来事も娘の目や心にはキラキラと映り、それが私にとっては何よりうれしいこと。

ママ友がたくさんできたことも、保育所送迎ができてよかったことの一つです。役員を引き受けた時、要点をテキストデータにしてメールしてくれた人、ヘルパーさんがいない時に一緒にお迎えを手伝ってくれた人、うだうだとランチに付き合ってくれる人、みんな私の障害をいろんな形で受け止めてくれているようで、ママ女子会や家族ぐるみでの遊びなど、たぶん多くの健常者のママたちが経験するであろうことを、やすやすと私に経験させてくれるのです。「視覚障害者の尾濱さん」ではなく、「○○ちゃんのママ」というよくありがちなそこらへんにいる母親として存在していられる居心地の良さはたとえようがありません。

ある日のお迎えの時、空に大きな虹が出ていたのを娘が見つけて大喜び!「ママ、虹はなんで出るか知ってる?」わからないなぁと答えると、「雨があがってなんにもなくなって、お空が寂しがるからやで」そんな素敵なことを言うようになった娘の成長に感動しながら、手をつないで一緒に虹を見ました。

私の目にはもう虹は映らないけれど、これからも娘の目を通して七色に輝く幸せを胸いっぱい感じていきたいと思います。

(おはまゆりこ 障碍者自立生活センター・スクラム)