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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年1月号

障害者政策委員会に期待すること

障害者政策委員会への期待

倉田哲郎

国の責任の明確化と地方の取り組みの吸い上げを

障害者基本法(以下「基本法」という)第11条第4項には「内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、障害者政策委員会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。」とある。

障害者政策委員会(以下「委員会」という)には、まず障害者基本計画において、国の責任の明確化と地方公共団体の先進的な取り組みを吸い上げる仕組みを確立していただきたい。

障がい者制度改革推進会議(以下「推進会議」という)・総合福祉部会(以下「部会」という)でも発言したが、地方行政を預かる立場から、国の政治と役所に対して申し上げたいことがある。

それは、地方分権・地域主権という言葉を都合よく解釈し、国の責任を放棄する言い訳に使わないでいただきたいということであり、少なくとも生存や生活の基礎となる社会保障分野においては、A市では生きていけるが、B市では生きていけない、そんなことがあってはならないと考えている。

地方分権・地域主権は、多くの分野で大いに進め、地方が競うべきだと考えるが、分権してはならない分野がある。

人の生存を保障する分野がまさしくその典型例で、そこは国が積極的に最低ラインを確保する責任と矜持、これをぜひとも忘れないでいただきたい。

一方で、障害福祉の分野では、各地域の試行錯誤の取り組みが先行し、そこから良いものが国で全国制度化され、日本の障害福祉の水準を少しずつ押し上げてきた歴史がある。

こうした過去からの経緯を踏まえ、障害者基本計画素案策定においては、第一義的には国の責任を明確化し、その上で地方のパイロット的取り組みを、国制度に反映できるよう仕組みを整えていただきたいと考えている。

就労系パイロット・スタディの実現を

また、そうした「地方の動きを国制度へ」という流れの一環として、就労に関わる試行事業(パイロット・スタディ)を、委員会の場で具体的に検討していくことをぜひとも、実現いただきたい。

これは、基本法第32条第2項第2号に書かれている「前号に規定する事項(注:障害者基本計画関係事項のこと)に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告すること。」に関わることである。

平成23年(2011年)8月30日、部会で「障害者総合福祉法の骨格提言」がまとめられ、新たな就労の仕組みとして、一般就労・自営と、デイアクティビティセンターとの間に、障害者就労センターという中間的な働き方を設定する仕組みが提案された。

併せて、「社会的雇用等多様な働き方についての試行事業(パイロット・スタディ)を実施し、障害者総合福祉法施行後3年をめどにこれを検証する。その結果を踏まえ障害者の就労支援の仕組みについて、関係者と十分に協議しつつ所管部局のあり方も含め検討する。」とも提案された。

社会的雇用とは、本市が昭和61年(1986年)から実施してきている市単独制度であり、一般企業と福祉的就労の谷間を埋めるものとして、障害者賃金への補てんも含めた補助を行っている。

また、推進会議と部会合同の「就労」作業チームでは、福祉的就労への労働法規の適用を検討する社会支援雇用や、障害者以外の就職困難者をも含めた働き方を保障する社会的事業所なども提案され、提言では、障害者就労センターという概念でまとめられた。

パイロット・スタディについては、強調しておきたいことが2点ある。

まず、既存の就労継続支援A・B型も参加してもらえる仕組みが想定されており、官公需優先発注の仕組みをどう作っていくか等も、共に検討していきたい。

もう一点は、自治体の積極的な参加をお願いしていきたいことである。

自治体独自の制度としては滋賀県および大津市等、札幌市、箕面市が、部会でも紹介されたが、私たちが知らないだけで、ほかにも類似の独自制度で、障害者の働く場づくりを促進している例もあると思う。

また、これから検討していきたいという声も、本市に寄せられており、このパイロット・スタディの実現に、地方からの声をぜひとも上げていただきたい。

改正障害者基本法

第十八条 国及び地方公共団体は…障害者の多様な就業の機会を確保するよう努めるとともに、個々の障害者の特性に配慮した職業相談、職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、障害者の多様な就業の機会の確保を図るため、前項に規定する施策に関する調査及び研究を促進しなければならない。

周知のとおり、基本法には、上のような画期的な記載がある(傍線が改正部分)。今般挿入された「多様な就業の機会の確保」を実現していくためにも、政策委員会には、前記の事柄を大いにご期待申し上げ、私からの意見とさせていただきたい。

(くらたてつろう 箕面市長)