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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年5月号

1000字提言

「我ら自身の声」をもって。つながり、興すこと。

及川智

2011年クリスマス。年末の大震災特番を見ようとテレビをつけた。あの凶悪な揺れの中、教室で叫び逃げ惑う子どもたち。思わず声を上げ、テレビを消した。

怖かった。あの時の記憶が襲ってきたのだ。車いす上で頭を抱えたあの時の。「一人であの時の映像が見られない」初めて知った事実だった。

私は家の被害もない。体も無事だったのに…、である。計り知れないものがある。日本中、いや、世界中の人々が、自分の胸に大震災の跡を残しながら、歩んでいる。

しかし、その歩みは着実に前を向き、進んでいるようにも思う。大震災から1年を迎える日、ささやかながら、被災地障がい者センターみやぎの活動を振り返り、新たな1年へ向けて集会を持った。新たな出会いとつながりに感謝し、地域ということを核にした障がい者支援活動をすすめることを共有できた集会だったと思う。

「復興元年」という言葉が示すとおり、今年はまちの将来を創る端緒の年となる。「創る」場面にどれだけ障がい者の視点を入れ込むことができるか、ということも重要になってくる。また、具体的な支援として障がい者が「動くため」の移送サービスなどの支援を増やすことも急務だ。障がい者がまちを歩いていない、歩けなかった状況を少しずつ変えていく。

石巻で活動を始めた障がい当事者は、日々、まちの中を歩き、障がい者施設、公共施設、商店とどんどんつながりを創っていっている。顔と顔を合わせて作り上げる関係は強固である。「障がい者と会わない」地域を変えるべく活動を続けていく。

「更地」には、着実に種が撒かれ、芽を出そうとしている。その芽を障がい者だけでもなく、健常者だけでもなく、一緒に育てていかなければならないのである。

「絆」という言葉がさかんに使われているが、双方を結んでいなければ、意味がない。これまで多くの課題が指摘されてきた初期避難、避難所、仮設住宅、そして、これからである復興計画、復興住宅を検討・整備していく過程でも同様である。

私の心にずっと残っている言葉に、前回書いた「更地と復興は紙一重」とともに、「CILの活動と被災地支援は同じ」という、質問から気づかされたものがある。障がいがあっても地域で生きられる社会を目指して行動する、という点で、全く同じであるということに気づいたのだった。それを基本におきながら、芽を強く大きく伸ばしていければと思っている。

(おいかわとも 被災地障がい者センターみやぎ)