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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年7月号

時代を読む33

障害者リーダー育成海外研修派遣事業の実施(1981年)

1981(昭和56)年3月22日、全国紙朝刊に「ミスタードーナツ障害者リーダー米国留学生募集」の15段全面広告が掲載された。その広告はひときわ目立った。

そこには、ねむの木学園の宮城まり子先生の写真とメッセージが掲載され、下段に障害者リーダーを募集する要項が掲載されていた。

これは、ミスタードーナツが創業10周年を迎えたのを機に、地域のお客様に「お礼返し」をと企画された記念事業であった。

この年、国際連合は全世界に向け「障害者の社会への完全参加と平等」を実現するために「国際障害者年」を提唱していた。この記念事業は、その呼びかけに応えたものであった。

この障害者リーダー募集の全面広告は、全国に大きな反響を巻き起こした。その日からミスタードーナツ事業部には激励や共感の声が寄せられ、当事者からは募集の問い合わせが殺到した。手紙も多数寄せられた。「障害者として生まれたわが子と今日まで苦闘してきた歴史を綿々と綴り、明るい希望が見えてきた」と語る母親。「快挙だ!感激した。いつまでも続けて」と、この制度の永続を願う手紙。「こうした制度を待っていた。よくぞやってくれました」と、率直に喜ぶ当事者の手紙等々…。

一般の方々のこうした熱狂的とも言える反響に、事業部は大いに勇気づけられた。

あまりにも大きな反響に、この事業を1回限りのキャンペーンに終わらせず、永続させるために、1981年9月にダスキンは「財団法人広げよう愛の輪運動基金」として許可申請を行い、同年11月26日に公益法人として認可された。

この事業で海外研修を経験した卒業生が地域の障害者仲間と共に自立生活運動を通して「自立生活センター」を立ち上げ、地域での障害者の地位向上に大きく貢献してきた。このほかにも、大学で教鞭を取る人や県会議員として政策の立案に携わったり、障害者スポーツで活躍される方など…。

ここには研修生449人の物語がある。

(谷合文廣 公益財団法人愛の輪基金常務理事)