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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年10月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●ズボンに紐をつけてラクラク着替え、他●

提案者:押切真人 イラスト:はんだみちこ

押切真人(おしきりまさと)さん

18歳の時、大学の柔道の試合中に頚椎を損傷。車いす生活を始める。2つのリハビリ病院・施設に入り、自立生活の実現に向けてリハビリを行なった。2011年10月にリハビリ施設を離所し自立生活をスタートした。また、大分県別府市にある「自立支援センターおおいた」のスタッフとしても活動している。


ズボンに紐をつけてラクラク着替え

私は現在ヘルパーさんを利用し、一人暮らしをしています。朝、痙性(けいせい)が強い時や体調が悪い時以外は、自分で衣服の着脱をしています。

服を着るという動作で一番きついのは、ズボンを上げる動作です。私はベッド上で寝返りをうち、左右少しずつズボンを上げ、着替えます。しかし指が動かないため、なかなかズボンが上がりません。そこで、ズボンの左右に紐(ひも)をつけました。すると、紐に手をかけて上に引くだけなので、簡単にズボンがはけました。

紐をつける前は、痙性が少し強いというだけで、ヘルパーさんに手伝ってもらっていました。しかし今では、簡単な着替え方を覚えたので、痙性が強くても頑張って自分で着替えています。


キーボードを打つには消しゴム付き鉛筆

私は頚椎損傷のため手がマヒしています。しかし、仕事はパソコンを使って行う業務がほとんどです。マヒに加え指が拘縮しているため、キーボードが上手く打てません。キーボードを打つための装具などが売られていますが、値段が高いため「自分で作れないかな?」と考えました。

そこで思いついたのが、消しゴム付きの鉛筆に輪ゴムを巻き付けるというものです。使い方は鉛筆を指に挟み、消しゴムの方でキーボードを入力し、使用します。また、鉛筆の方を下にすれば文字もかけます。鉛筆だけでは滑ってしまいスムーズに入力できませんが、輪ゴムを付けることにより滑らなくなり、手際よく作業することができます。

私はこの方法を見つけるまでは、キーボードを打つのに時間が掛かり、効率よく仕事ができませんでした。しかし、この方法を見つけてからは、以前よりも仕事のスピードが上がったと思います。この鉛筆を使い、どんどん仕事を頑張りたいと思っています。


「孫の手」リーチャー

私は車いす生活を送っているので、床に落ちたものを拾うことができません。物を落とした時は、いつも次のヘルパーさんが来るまで待っていたり、自分より状態の良い人(障害の軽い人)に電話をして拾ってもらっていました。しかし、次のヘルパーさんが来るまでの時間が長かったり、知り合いが電話に出ない時は、長い時間待たなくてはいけません。

そこで「ある物」を自分なりに工夫してリーチャー(物を拾う道具)にしました。それは「孫の手」です。私は車いすをこぐ時に使うグローブの間に「孫の手」を差し込んで使用します。「孫の手」の手の部分がちょうどいい感じに曲がっているので引っ掛かりやすく、物が拾いやすいのです。これにより「長時間待つ」という点を解決することができました。

このリーチャーは、ただ物を拾えるだけでなく、高いところの物を取ったり、「孫の手」本来の目的である背中を掻(か)くことにも使用できます。

「孫の手」は、私にとって最高のアイテムだと感じています。