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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年1月号

インタビュー
国連障害特別報告者
シュアイブ・チャルクレン氏に聞く

聞き手:成田すみれ
(社会福祉法人試行会あおば地域活動ホームすてっぷ&青葉台地域ケアプラザ所長、本誌編集委員)

去る11月6日(火)、国連の障害特別報告者を務めているシュアイブ・チャルクレン氏に権利条約の批准を巡る世界の動向や特別報告者としての抱負、日本への期待などを伺う機会を得た。国連ESCAPが韓国インチョン市において開催した「第2次アジア太平洋障害者の十年」最終年関連会議出席の帰路の来日であった。

▼国連障害特別報告者とは、どのような仕事をするのですか。

正式には国連社会開発委員会障害特別報告者といい、社会開発委員会より任命されます。私は2009年に任命され、2014年までの任期となっています。もともとは国連総会で採択された、障害者の機会均等化に関する基準規則の実施状況を監視する役割として誕生しました。その後も、障害者の権利推進を図るという任務をもって活動しています。

▼権利条約の批准国は125か国(2012年11月6日現在)と聞いていますが、これらの国々における実施状況はいかがでしょうか。

実施を評価するのは、どの国も批准後の期間がまだ短いということもあって難しいです。批准国は、ジュネーブにある障害者の権利委員会に実施報告をしますが、現在、提出国はスペインやハンガリーなど数か国で、もっと多くの報告がされないと比較対象ができません。しかし、批准国では、どこも批准内容に見合うよう国内の法律や諸施策を整備しているので、批准前に比べるとかなり改善されつつあります。

日本はまだ批准をされていませんが、日本がすぐ批准したとすれば、その報告内容はとてもよいものになると思います。東京で見たのですが、障害者に配慮した施設や建物、交通機関のバリアフリー、障害者への諸サービスの提供状況、自立支援センターの活発な活動、経済や雇用面などの対応、リハビリテーションなど、主だった障害者施策の取り組みが非常に進んでいることがわかりました。

▼去る9月に権利条約の締約国会議がありましたが、その会議について情報提供をお願いします。

同時期に、障害者の権利委員会委員の選挙もニューヨークで行われるので、契約国会議は毎年ニューヨークで開催されます。今では、この会議は世界最大の障害者の会議となっていて、毎年異なるテーマが設定され、ちなみに今年は「テクノロジー」でした。また会議と併せて、サイドイベントと呼ばれる小規模のミーティングや分科会なども開かれます。今年は女性に対する暴力に関するものや開発途上国と障害者問題など、その数は60にも及びました。

▼シュアイブさんは2009年から現職を務めておられますが、これまで印象的なことや、今後取り組んでいきたいことはどのようなことでしょうか。

2009年から2011年が第1期、今後の私の任期は2014年12月までです。

担当者として、毎年2月に社会開発委員会事務局長に活動の報告をします。報告のたびに新しいテーマを一つ追加され返ってきますが、今の職務内容は、かなり柔軟性があって有益なものとなっています。

今後報告者として取り組みたいことは、私は南アフリカ出身なので、アフリカの地における障害者のことです。今年の11月末には、アフリカ障害フォーラムを結成しようと準備しています。間もなく私の夢(アンビシャス)が叶います。

▼日本ではまだ「権利条約」が批准できていませんが、来春、障害を理由とする差別禁止法が制定される予定です。先日も障害者政策委員会のもとに組織されている差別禁止部会で、新しい法律に対する部会意見が出されました。このような動きをどのように思われますか。

私としては、部会意見の内容がわからないので詳細なコメントはできませんが、この障害を理由とする差別禁止法が法制化されたら、ぜひ日本も権利条約を批准できるようになってほしいと思います。

昨日、障害者政策委員会を傍聴しました。政策委員会はさまざまな障害種別の当事者、そして学者の方が参加されていました。聴覚障害者の方が活発に発言していましたね。障害者の利益に叶うような強力な法律ができるよう願っています。


【インタビューを終えて】

来日2日目、午前中の30分という短時間でのインタビューであった。シュアイブ氏はこれまで自国南アフリカをはじめ、国内外各地域や国際レベルでの障害分野の政策管理、アドミニストレーションに関わる多くの任務を果たしてきた。

障害者や支援関係者との意見交換のほかに今回、被災地宮城県を訪れ、被災地の見学と現地の障害者や支援関係者との交流、仙台市での「震災と障害者」という特別企画での講演などもこなされた。日本の「権利条約批准の促進」については、国内の関係者が諸々の刺激や示唆を得たのはもちろんのこと、わが国の障害者施策の現状や課題をしっかりと理解され、批准へのエールを残して帰国された。

※インタビューは、2012年11月6日(火)に行われました(於・参議院議員会館)。