音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年1月号

政策委員会に期待すること

滋賀県障害者施策推進協議会と糸賀一雄生誕100周年

北野誠一

1 わが国の障害者制度改革の流れと「新・障害者福祉しがプラン」の展開

インクルーシブな共生社会を明確にした、2006年の国連における障害者権利条約の制定と、わが国のそれへの批准に向けての一連の制度改革の中で、滋賀県としても、さまざまな取り組みを展開してきた。

滋賀県には、共生社会づくりに向けていち早く取り組んできた、糸賀一雄をはじめとするさまざまな先進的な思想と実践がある。それらの長い歴史と伝統を踏まえて、平成24~26年の計画の基本理念は、「みんなでいっしょに働き、みんなとまちで生きる」とした。保護・依存・分離から社会的自立・就労・参画という共生社会のパラダイム転換を踏まえた理念であることは、言うまでもない。

さらに、実施計画では、以下の4つのプロジェクトを起こした。

1.重度障害者への、あんしん“暮らし”実感プロジェクト

2.働きたい障害者への、もっと“働きたい”応援プロジェクト

3.楽しみたい障害者への、生き生き“活動”充実プロジェクト

4.当事者参画による、みんなの“共生のまちづくり”プロジェクト(精神障害者・発達障害者の地域生活支援)

これらは、共生社会構築の基本であるが、障害児や重度障害者の支援や就労支援が、制度改正前は市町村ではなく、主に県レベルで行われていたこともあり、県と市町村の連携が求められている。また、精神障害者と発達障害者の地域生活支援は、極めて重要かつ切実な課題であり、特出しをした訳だが、県や市町村だけでは、如何(いかん)ともしがたい課題であり、国の制度設計の展開とシンクロできればと考えている。

その意味でも、国の制度改革、とりわけ、改正障害者基本法第32条に基づく障害者政策委員会の中心的な職務である、新たな障害者基本計画に対する意見具申の中に、1.重度障害者の暮らしの場支援、2.差別禁止法の雇用・就労における必要な合理的配慮を含む各種の就労支援、3.社会参加・参画支援としてのコミュニケーション支援と、文化・芸術活動を含む本人活動への支援、4.精神障害者と発達障害者の早期支援と教育・就労・暮らしの場への支援等が、必要な支援サービスと数値目標と財政的基盤整備を伴った形で盛り込まれ、実施され、32条2項三に基づいて必要に応じてモニタリング(監視)がなされ、問題がある場合は、その望ましい方向性について担当省庁にレコメンデーション(勧告)され、32条3項に基づいて担当省庁には報告義務を課すという一連の手続きが、形式的なものではなく、実質的に有効なものとなることを期待している。

2 滋賀県における、今後の取り組みについて

今後、以下の取り組みを実施すべく、現在構想中である。

1.「誰もが暮らしやすい福祉しがづくり懇話会」の設置

滋賀県障害者施策推進協議会は、その条例改正に伴って施策の実施状況を監視するのみならず、条例第5条に基づいて「誰もが暮らしやすい福祉しがづくり懇話会」を設置する。その主な目的は、1.来年度の糸賀一雄生誕100年を迎えるにあたって、その共生理念と実践を真摯に受けとめ、新・障害者プランで明記した、障害当事者と関係者の参画の元で、障害を理由とする差別を防止するための方策について調査研究を行うこと、2.滋賀県として、福祉・保健・医療・労働・教育・文化・スポーツ等の各分野における障害者支援施策や権利擁護の取り組みを、障害者の視点からとらえ直し、「障害のある人もない人も日本一暮らしやすい・住みやすい滋賀」を、どのようにすれば実現できるかを検討し提言としてまとめることである。

2.自立支援法に基づく障害福祉サービス事情の運営基準を定める条例の制定

地域における日中活動の場の充実が求められている現状に鑑(かんが)み、生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続B型の各サービス事業所が現行よりも小規模で開設できるように、条例を制定する。

3.入所支援から地域生活支援へのパラダイムチェンジの検討

今後、びわこ学園等の入所型施設に期待されている機能を「地域展開」することによって、入所待機者を含めた多くの重度障害児・者に、看護体制を組み込んだ、重度障害者対応型ケアホームと重度障害者対応通所事業を、県の包括補助事業として展開する。

3 障害者政策委員会に期待すること

改正障害者基本法第36条には、都道府県の政策委員会(施策推進協議会)における、施策の実施状況のモニタリング権限が明記されている。問題は、そのモニタリングを如何なる手法の元で行うのかである。

国の障害者政策委員会においては、今後、都道府県での敷衍(ふえん)可能な評価項目と評価指標を開発していただきたい。都道府県ごとの事情はあるにせよ、インクルーシブ社会の構築に向けたゴール(目標)は、国際的に共通であり、国連が開発している評価方法なども参考にしながら、その方向性が示されることを希望する。もう一つは、都道府県のデータ収集の問題である。市町村の単費のサービスや事業を、どのように把握できているか、把握できていなければ、国のデータにも反映されないことになる。今後は、データ収集の手法についての検討が必要である。

(きたのせいいち 滋賀県障害者施策推進協議会会長)