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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年4月号

霞ヶ関BOX

平成25年度障害保健福祉関係予算(案)について

厚生労働省障害保健福祉部企画課

平成25年度障害保健福祉部関係予算については、対前年度7.3%増の1兆3,991億円を計上しており、障害児・障害者の日常生活及び社会生活の自立と地域生活における共生を支援するため、障害福祉サービスの充実及び就労支援、地域生活支援事業の着実な実施、精神障害者や発達障害者等への支援施策の推進等を図ることとしています。

特に、平成25年4月から障害者総合支援法が施行されることを踏まえ、地域生活支援事業において必須事業化されたものの実施や障害福祉サービスの基盤整備の推進を図ることとしています。

平成25年度障害保健福祉関係予算(案)の主な内容は、次のとおりです。

1 障害福祉サービスの確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進

(1)良質な障害福祉サービス等の確保 8,229億円

障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要なホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援等の障害福祉サービスについて、障害福祉計画に基づき、各市町村において着実な推進を図ります。

また、平成25年4月から施行される障害者総合支援法において、新たに障害者の範囲に難病患者が加わります。

(2)地域生活支援事業の着実な実施 460億円

平成25年4月から施行される障害者総合支援法で必須事業化された手話通訳者等の意思疎通支援を行う人材の育成や、成年後見制度の活用を進める観点から、意思決定支援を行い後見業務を適正に担うことができる人材の育成・活用などを実施します。

また、意思疎通支援や移動支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、市町村などでの事業の着実な実施や定着を図ります。

(3)障害児・障害者への福祉サービス提供体制の基盤整備 52億円

障害児・障害者が地域で安心して生活を送ることができるよう、グループホームなどの「住まいの場」の整備を進めるとともに、児童発達支援センターの地域支援機能の強化や障害児入所施設の小規模グループによる療育など、発達障害を含む障害児支援の充実を図るための整備を推進していきます。

また、障害児・障害者の地域移行を進めるため、生活介護や就労継続支援などの「日中活動の場」の整備を推進するとともに、これまで障害者自立支援対策臨時特例交付金(基金)で対象となっていた施設の改修(賃貸物件を含む)や、施設整備と一体的に行う就労訓練等のための大規模な設備等の整備を新たに補助対象に追加します。

(参考)

【平成24年度 経済危機対応・地域活性化予備費】 23億円

○障害者支援施設等の緊急整備

【平成24年度 経済対策第2弾における予備費】 65億円

○障害者が地域で安心して暮らすための基盤整備の推進

【平成24年度 第1次補正予算】 16億円

○災害時における在宅障害児・障害者の避難スペースの整備

(4)障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供 2,187億円

心身の障害の状態の軽減を図る自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)を提供します。

(5)障害児・障害者に係る手当の給付 1,482億円

特別児童扶養手当、特別障害者手当等について、直近の受給者を勘案し、必要な経費を確保します。

(6)障害児・障害者虐待防止等に関する総合的な施策の推進 4.1億円

都道府県や市町村で障害児・障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、地域における関係機関等の協力体制の整備や家庭訪問、関係機関職員への研修等を実施するとともに、障害児・障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図り、支援体制を強化します。

また、国において障害児・障害者の虐待防止や権利擁護に関して、各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修を実施します。

(7)障害支援区分の施行に向けた所要の準備 3.0億円

障害者総合支援法に規定された「障害支援区分」の平成26年4月からの施行に向け、新たな調査項目による認定調査や調査結果に基づく障害支援区分の判定(一次、二次)に関するモデル事業や市町村が使用する判定ソフトの開発など、所要の準備を行います。

(8)重度訪問介護などの利用促進に係る市町村支援事業 22億円

重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いなどのことから、訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対し、人口規模等を踏まえた財政支援を行います。

(9)障害児の発達支援に係る給付費等の確保 671億円

障害のある児童に対して、できるだけ身近な地域において、障害の特性に応じた療育等の支援を行うことができるよう、それに係る必要な経費を確保します。

(10)重症心身障害児者の地域生活モデル事業の実施 24百万円

重症心身障害児者やその家族への総合的な地域支援体制を整備するため、総合的な調整役を担うコーディネーターを配置し、障害の状況や個々のニーズなどを踏まえた効果的なサービス利用や関係機関などとの連携のあり方等の総合的なモデル事業を実施します。

(11)障害児・障害者の社会参加の促進 26億円

視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、ITを活用した情報バリアフリーの促進、文化芸術活動の振興などを支援し、障害児・障害者の社会参加の促進を図ります。

(12)障害児・障害者スポーツに対する総合的な推進 8.5億円

ソチ2014パラリンピック冬季競技大会等の世界大会への日本選手団の派遣や強化合宿の実施などを推進するとともに、障害者スポーツ指導員を活用した障害者向けのスポーツ教室の開催など、障害者の参加機会を確保することなどにより、障害児・障害者スポーツの一層の振興を図ります。

障害福祉サービス予算の推移
障害福祉サービス予算の推移拡大図・テキスト

2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策の推進

精神障害者の地域生活への移行を推進するため、262億円を計上しており、精神障害者やその家族が住み慣れた身近な地域で、医療や介護、社会復帰等の総合的な支援を受けることができるよう、アウトリーチ(訪問支援)や精神科救急医療体制等のさらなる充実・強化を図ります。

(1)地域で生活する精神障害者へのアウトリーチ(訪問支援)体制の整備 6.8億円

精神障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、未治療の人、治療を中断している患者などに対し、アウトリーチ(訪問支援)により、医療・保健・福祉サービスを包括的に提供し、丁寧な支援を行うため、多職種チームによる訪問活動やこれらに従事する人への研修などを実施します。

(2)精神科救急医療体制の整備 20億円

精神疾患をもった救急患者が地域で適切に救急医療を受けられるよう体制の充実に取り組むとともに、身体疾患を合併している患者に対応できる病床の確保や救急搬送受入れ体制の強化などにより、精神科救急医療体制の整備を推進していきます。

(3)高齢・長期入院の精神障害者の地域移行・地域定着支援の推進 1.3億円

「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念に基づき、入院患者の約半数を占める高齢入院患者に対して、退院に向けた包括的な地域支援プログラムによる治療や支援などを行い、精神障害者の退院促進及び地域定着へ向けた事業を実施します。

(4)認知行動療法の普及の推進 1億円

うつ病の治療において有効性が認められている認知行動療法の普及を図るため、従事者の養成を実施します。

(5)災害時心のケア支援体制の整備 79百万円

近年必要性が高まっているPTSD(心的外傷後ストレス障害)対策を中心とした事故・災害などの被害者への心のケアの対策を推進するため、各都道府県で心のケアチームや緊急危機対策チームの定期的連絡会議を開催するなど、日常的な相談体制の強化や事故・災害など発生時の緊急対応体制の強化を図ります。

(6)被災地心のケア支援体制の整備【復興】 18億円

東日本大震災による被災者の心のケアなどを継続的に実施するため、被災3県(岩手、宮城、福島)に設置した「心のケアセンター」において、精神保健福祉士などの専門職種による自宅及び仮設住宅などへの訪問相談、アウトリーチによる医療の提供支援などを行うための体制整備を支援します。

(7)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 213億円

心神喪失者等医療観察法を適切に施行するため、引き続き、指定入院医療機関を確保し、通院医療を含む継続的な医療提供体制の整備を推進するとともに、指定医療機関の医療従事者を対象とした研修を行うなど、医療の質の向上を図ります。

3 発達障害児・発達障害者の支援施策の推進

発達障害者支援施策については、平成17年4月に施行された発達障害者支援法を踏まえ、発達障害者の支援手法の開発や発達障害支援に携わる人材の育成、地域支援体制の確立を推進するため、2.3億円を計上しています。

(1)発達障害児・発達障害者の支援手法の開発や支援に携わる人材の育成 2.1億円

発達障害児・発達障害者一人ひとりのニーズに対応する一貫した支援を行うことができるよう先駆的な取組を通じて、発達障害児・発達障害者への有効な支援手法を開発・確立します。

また、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、発達障害者の就労支援に関する支援手法のさらなる開発に取り組むとともに、発達障害児・発達障害者支援に携わる人に対する研修を行います。

(2)発達障害児・発達障害者の地域支援体制の確立

地域生活支援事業(460億円)の内数

都道府県・指定都市に設置された「発達障害者支援体制整備検討委員会」等の取り組みに対して支援し、発達障害の乳幼児から成人期までの一貫した支援体制の整備を行います。

(3)発達障害の早期支援

地域生活支援事業(460億円)の内数

発達障害などに関する知識を有する専門員が、保育所等を巡回し、施設のスタッフや親に対し、障害の早期発見・早期対応のための助言などの支援を行います。

4 障害者への就労支援の推進 13億円

障害者に対する就労支援については、「工賃向上計画」の着実な推進や障害者就業・生活支援センター事業の推進を図るため、13億円を計上しています。

(1)工賃向上のための取り組みの推進 4.3億円

就労継続支援B型事業所の利用者の工賃向上のため、経営改善や商品開発、市場開拓などを中心とした「工賃向上計画(平成24~26年度)」による支援を行なっていきます。

特に、障害者優先調達推進法(平成25年4月1日施行)の円滑な施行に資するよう、共同受注窓口の体制整備について、官公需の発注に対応する体制にも配慮しつつ、未整備の地方自治体の体制を整備するなど、重点的に充実・強化を図ります。

(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進 8.1億円

障害者就業・生活支援センターにおいて、就業に伴う日常生活面を必要とする障害者に対し、センター窓口での相談や職場・家庭訪問などにより生活面の指導・相談を実施します。

平成25年度障害保健福祉関係予算案の概要拡大図・テキスト

5 自殺・うつ病対策の推進 30億円

自殺・うつ病施策については、平成19年6月に制定された「自殺総合対策大綱」を踏まえ、自殺予防に向けた人材養成や地域における先進的な取組などを推進するため、30億円を計上しています。

(1)地域での効果的な自殺対策の推進と民間団体の取組支援、普及啓発の推進 2.8億円

都道府県・指定都市に設置されている「地域自殺予防情報センター」において、専門相談を実施するほか、関係機関のネットワーク化等によるうつ病対策、依存症対策などの精神保健的な取組を推進していきます。

また、地域における先進的かつ効果的な自殺の防止等に関する活動を実施している民間団体に対し支援を行います。

(2)自殺予防に向けた相談体制の整備と人材育成 40百万円

うつ病の早期発見・早期治療につなげるため、一般内科医やケースワーカーなど地域で活動する方に対して実践的な研修を実施します。