「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年4月号
ほんの森
新しい発達と障害を考える本(第1期1~4)
内山登紀夫 監修
伊藤久美(1 2 4)・神奈川LD協会(2) 編
評者 岸田あすか
ミネルヴァ書房東京支社
〒100-0052 千代田区神田小川町2-4-17-6F
定価1,890円(税込み)
TEL 03-3296-1615
FAX 03-3296-1620
こんな絵本が出る世の中になったのだな、と感慨深い。この4冊は、小学校を舞台に発達障害を代表して「自閉症」「アスペルガー症候群」「LD」「ADHD」の何人かの「おともだち」についての小学生の小学生による絵本版事例検討集となっている。同じクラスや交流の時間に来る「おともだち」が、どうしてみんなと上手に過ごせないんだろう?というクラスメイトの素朴な疑問に、担任の先生が一緒に対応に取り組む。みんなが安心して学校生活を過ごせるようなヒントが盛りだくさんである。
発達障害は見た目ではなかなか判断できず、逆によくしゃべったり、よく動きまわったり、周りが「困っちゃう」ことをたびたびしでかす。何も理解できずに親子して疲弊していた昔がよぎる。この本では、そのような行動には「ちゃんと理由がある」ことをマンガ仕立てで説明している。このような児童向けの事例検討集の絵本は、昔の私のような悩める親たちの強い味方になる。
今は、親が学校での子どもの姿を見るのは、参観日か行事くらいであろう。家で親子が過ごす時間は短く、夕ご飯、お風呂、就寝と同じことを繰り返す毎日ではないだろうか。そんな状態で、突然学校から「お子さんが周りと上手に過ごせないのですが…」と連絡があっても、家族は戸惑うばかりであろう。「家ではちゃんとしています。それを上手くできないのは、先生の指導力不足なんじゃないんですか?」この言葉も、親同士の相談会でよく聞く言葉である。
そんな時私は「そうですね。そうであれば、そんな時はどのように対応したらいいかを、ご家族から先生に提案してみるのもいいかもしれませんよ」と答える。「一緒に考えて、一緒に取り組んでみる」家族がこのような姿勢でいることで、先生も安心して、クラスのおともだちに働きかけることができるであろう。
この本の事例は、本当によく聞く話である。家庭の中では気にならないような些細(ささい)なことが、集団の中ではつまづきになることも改めて知ることができる。忙しい大人たちにも絵本であるこの本は読みやすく、監修や編者の皆さんの、障害に対する的確な解説とアドバイスがあり、温かくやさしい本になっている。
4月は入学、進級と環境も激変する。座席が変わるというだけでも、混乱したりする子どもたちである。当事者の家族も、その周りの子どもたちも、受け入れる学校の先生たちも、この本を参考にして「もしも」の備えをしておいてくださると、同じ障害をもつ子どもの親として本当に心強く思う。
(きしだあすか NPO法人シンフォニーネット理事長)