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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年9月号

フォーラム2013

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律について

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課

去る6月13日に「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、同19日に公布されました。今回の改正の概要は次のとおりです。

1 法律の目的

法律の目的は、精神障害者の地域生活への移行を促進するため、(1)精神障害者の医療に関する指針(大臣告示)を策定すること、(2)保護者制度を廃止すること、(3)医療保護入院における入院手続等の見直しを行うこと、(4)精神医療審査会に関する見直しを行うこと、等の措置を講ずることにあります。

2 主な改正の内容

(1)精神障害者の医療の提供を確保するための指針の策定

今回の改正で、新たに厚生労働大臣が精神障害者の医療の提供を確保するための指針を定めることとしています。指針で定める内容は、1.精神病床の機能分化に関する事項、2.精神障害者の居宅等における保健医療サービス及び福祉サービスの提供に関する事項、3.精神障害者に対する医療の提供に当たっての医師、看護師等の医療従事者と精神保健福祉士等の連携(多職種連携)に関する事項、の3点と、4.その他良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保に関する重要事項です。

指針の具体的内容については、現在、「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」で検討しており、年内には指針の案をとりまとめることを予定しています。

(2)保護者制度の廃止

現在、精神保健福祉法上特別に置かれた保護者として、主に精神障害者の家族がその役割を担っており、その保護者となった方一人には、精神障害者に治療を受けさせる義務等のさまざまな義務が課せられています。しかしながら、家族の高齢化等に伴い負担が大きくなっている等の理由から、今回の改正で保護者に関する規定を削除し、保護者制度を廃止することとしました。

(3)医療保護入院の見直し

医療保護入院とは、自傷他害のおそれはなく都道府県による措置入院を行う状態にはないけれども、自らが病気であることを認識できず、入院医療が必要な状態である精神障害者に対して、本人の同意がなくても入院医療を提供するための入院制度です。現在、医療保護入院は、「精神保健指定医1名の判定」と「保護者の同意」を要件としています。今回の改正で保護者制度を廃止することに伴い、医療保護入院の要件については、「保護者の同意」の要件を外し、「精神保健指定医1名の判定」と「家族等のうちのいずれかの者の同意」を要件とすることとしました。この「家族等」とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人または保佐人を指し、該当者がいない場合等には、市町村長が同意の判断を行うこととされています。これは、現在、一人に決められている保護者となりうる方の範囲と同様です。なお、ここでいう「扶養義務者」とは、民法877条に規定する扶養義務者を指しており、直系血族及び兄弟姉妹を除く3親等以内の親族が扶養義務者として同意を行うためには、事前に家庭裁判所の審判を受けていることが必要です。

また、医療保護入院の要件の見直しと併せて、新たに、精神科病院の管理者に医療保護入院者の退院促進のための措置を講じる義務を課すこととしています。具体的には、1.病院内に医療保護入院者の退院後の生活環境に関する相談及び指導を行う者(精神保健福祉士等)を設置する義務、2.本人や家族からの求めがあった場合等の地域移行を促進するために必要な場合に、本人又は家族の相談に応じ必要な情報提供等を行う地域援助事業者(相談支援事業者等)を紹介する努力義務、3.その他の退院促進のための体制整備を講じる義務、を課すこととしています。

(4)精神医療審査会に関する見直し

都道府県に設置されている精神医療審査会に関する見直しとしては、次の2点について改正を行いました。

1点目は、精神医療審査会で医療保護入院の場合等に入院の必要性等を審査するに当たり、医療的・法律的な観点とともに、精神障害者の保健や福祉の観点も必要不可欠になってきていることを踏まえ、精神医療審査会の委員として、新たに「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者」を規定することとしました。

2点目は、保護者制度を廃止したことに伴い、保護者に代わり精神医療審査会に対して退院等の請求をできる者として、入院者本人とともに、家族等を規定することとしました。

3 施行期日

これらの規定の施行期日は、平成26年4月1日としています。ただし、精神医療審査会の委員の改選時期との関係上、精神医療審査会の委員の見直しに関する規定については、平成28年4月1日に施行することとしています。

4 検討規定

以上が今回の精神保健福祉法の改正の概要ですが、今回の改正に関し、関係者にさまざまなご議論があったことを踏まえ、改正法の附則に検討規定が置かれました。検討規定では、施行後3年を目途として、施行の状況並びに精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化を勘案し、

1.医療保護入院における移送及び入院の手続の在り方

2.医療保護入院者の退院を促進するための措置の在り方

3.入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援の在り方

に関して検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしています。