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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年10月号

第3次障害者基本計画を実効性のあるものに

全国盲ろう者協会

1 全体的な評価

この4年間、わが国では、障害者権利条約の批准に向けた障害者基本法の改正や障害者差別解消法の制定等、国内法の整備が急ピッチで進められてきた。

そして、昨年の12月に「新『障害者基本計画』に関する障害者政策委員会の意見」(以下、「政策委員会の意見」と略す)がまとめられた。

このたび、政府が示した第3次障害者基本計画(以下、「第3次計画」と略す)は、これらの一連の動きに後押しされて、差別解消、難病などの福祉の谷間におかれた障害者、アクセシビリティに大きなスポットがあてられた点では一定の評価をしたい。

しかしながら、当事者参画の保障が必ずしも担保されているとは言いがたい。また、各種障害者福祉サービスの地域間格差の解消に向けた具体的なプランが示されていない。

2 障害当事者参画の保障はあるか?

国内法の見直しや整備が進んだのは、障がい者制度改革推進会議や障害者基本法に基づき設置された障害者政策委員会等、障害の種別を越えた幅広い障害当事者・家族や関係者が中心となった各種会議での真剣な議論の積み重ねによる努力のたまものである。

これらの各種会議では、国による障害当事者の委員への情報保障等の合理的配慮が提供され、たとえば、盲ろう者の委員・オブザーバーには当日配布資料のテキストデータでの事前提供、会議における通訳・介助員による通訳と移動介助の支援が保障されてきた。

しかし、法の改正や新法の制定の度に、推進会議や障害者政策委員会が取りまとめた意見・提言が十分反映されず、意見のすり合わせも十分なされないまま、いきなり政府案が国会に上程され、十分な議論の時間が確保されないで採択されるということが常であった。

たとえば、「政策委員会の意見」では、1 基本的な方針の2、基本原則(4)で、政策決定過程への障害者等の参画が盛り込まれていたが、「第3次計画」では、基本原則には盛り込まれず、2 基本的な考え方の3.各分野に共通する横断的視点の(1)障害者の自己決定の尊重及び意思決定の支援、で触れられているのみである。

ここでは、国の審議会等における障害者の委員の障害特性に応じた適切な情報保障等が明記されたことは、大いに評価されるものの、絵に描いた餅とならないように、さまざまな障害者がその特性に応じた支援を受けながら、政策決定過程への参画ができるように、具体的な計画や数値目標を設定するべきであろう。

まず、「私たち抜きで私たちのことを決めないで」という国際的な基本理念に基づき、国や自治体の障害者施策を決定する審議会等において、構成員の過半数が障害当事者・家族となるよう規定し、実現までの数値目標をつくる。

そして、各障害当事者の委員がその障害特性に応じた支援を受けながら政策決定過程に参画できるよう、先の推進会議や障害者政策委員会でなされた情報保障や配慮のあり方を検証した上で、さらによりよい支援体制のあり方を国がガイドラインとして示し、国の各省庁や各自治体の障害者施策に関する審議会等においても普及させていく。さらに、法案(条例案)作成過程での障害当事者団体との意見のすりあわせや国会(議会)での審議内容の情報提供、パブリックコメント等の意見募集における情報のバリアフリー化(サイトに掲載される資料のテキストデータ掲載等)と十分な検討期間の保障といった、ていねいな配慮が必要である。

3 地域間格差等の解消になりうるか?

「政策委員会の意見」の2 共通して求められる視点の5、格差の是正という項目では、障害の種別・程度の谷間や男女間の格差、地域間の格差の是正、縦割り行政の弊害(制度の谷間、施策の方針のずれ等)の解消などといったあらゆる格差をなくすための仕組みづくりを提案している。

しかし、「第3次計画」においては、このような観点からの具体的な方向性やプランが示されていない。

障害者施策の推進には、各省庁が連携しながら国としての方向性が示され、都道府県や市町村の各機関との連携が必須であり、同時に、各自治体が策定する計画では、あらゆる格差をなくしていくためのプランが示されるべきである。

たとえば、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業においては、年間利用可能時間数や通訳謝金の時間単価、派遣できる内容が盲ろう者が住む地域によって大きく異なる。

こうした格差をなくしていくには、自治体任せにするのではなく、国が各自治体に対して、最低限の基準を明示したガイドラインを示すとともに、国による財政支援の裏付けを整備すべきである。それにより、盲ろう者が全国どこに住んでいても同じ条件で通訳・介助員の支援を受けながら、自己選択・意思決定ができるようになることで地域での自立した生活と社会参加ができるようになる。

こうした観点から見ると、「第3次計画」は、障害の特性に応じた支援うんぬんと書き連ねられていても、地域間格差の解消にはつながらないのではないか。

4 実効性のある基本計画を

今後5年間で「第3次計画」が実施される過程で、当事者の参画と地域間格差問題に注目しつつ、実効性のある基本計画づくりに参画していきたい。