「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年10月号
工夫いろいろエンジョイライフ
実用編●点字シールを活用、他●
提案者:岸本慶子 イラスト:はんだみちこ
岸本慶子(きしもとけいこ)さん
未熟児網膜症による先天性の全盲。大学の通信教育で社会福祉を学び、2013年4月から自立生活夢宙センターに勤務。大阪市内で一人暮らしをしています。
点字シールを活用
私は電熱コンロで調理をしています。ボタンはON・OFFのボタン、火を強くするボタン、火を弱くするボタンの3つですが、凹凸がなく触って見つけることができません。そこで、ボタンの上に点字シールを貼り、点字の上を押せばいいようにしています。
他にも郵便ポストのダイヤルに点字シールを貼って自分で開けられるようにしたのですが、いたずらだと思われたのか、ある日突然、剥(は)がされていました。
点字が読めなくても点が1個か2個かで区別する方法があります。点字だけではなく、触って分かる工夫をこれからも考えていけたらと思っています。
地図を持って安心お出かけ
全盲の人が地図をどうやって見るの?と、思うかもしれません。初めての場所や慣れていない所に行く時、地図は私にとっても便利な物です。ヘルパーさんと一緒に出かけることもありますが、時間と気持ちに余裕がある時は、自分のペースで知らない人とのちょっとした出会いを楽しみながら、一人で出かけることもあります。
自分で地図を確認することは難しいので、ホームページから目的地の地図をダウンロードして、事前に見えている人に大まかなルートを説明してもらい、目印となりそうな建物などを頭に入れてから出発します。途中で誰かに声を掛けて手引きをしてほしい時も、地図を見せればスムーズにたどり着くことができ、2人で迷うことが少なくなりました。ヘルパーさんと出かける時も、地図があると安心ですね。
最近は、音声で目的地までのルートを案内してくれるシステムが開発されているようです。小型で誰にでも使いやすい物ができてほしいと思います。
決めないことを楽しむ
私の朝は携帯を探すことから始まります。ベッドの周り、それだけは分かっているのですが、いつもどこかに置いて寝てしまいます。ベッドの上、右の棚、時には自分の手が当たって床に落ちていることもあります。そんな時は床を這いながらまた探す。こうやって探しているうちに目が覚め、寝過ごすことがありません。
置く場所を決めればこのように探すことはなくなります。でも大げさかもしれませんが、探すことの楽しみや見つけた時の小さな喜びは見えない私にしか味わえないものだと思っています。
ヘルパーさんにも包丁などのように知らずに触ると危険を伴う物や、見つからないと困る物は決まった場所に片付けてもらうように伝えていますが、それ以外は細かく場所を決めていません。効率性だけを考えるのではなく、きちんと決めておくことと、アバウトにしておくことを区別して、宝探しゲームのような楽しい生活を続けていきたいと思います。