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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年12月号

第68回国連総会「障害と開発に関するハイレベル会合」における政府の取組

外務省総合外交政策局人権人道課

1 「障害と開発に関するハイレベル会合」への岸田文雄外務大臣の出席

岸田文雄外務大臣は、2013年9月23日午後4時半頃(ニューヨーク時間)から、「障害と開発に関するハイレベル会合」に参加しました。同会合はポストMDGsを見据えた、障害者分野における初の国連主催ハイレベル会合であり、パン・ギムン国連事務総長をはじめ、首脳や閣僚級を代表とする10数か国が出席したほか、著名人やNGOが参加しました。

障害者施策の推進に対する国内外のモメンタムが高まっていることを背景に、途上国支援における障害者分野の取組の重要性につき国際的な関心を一層高めることを目的として開催された本会合では、障害者分野の取組を含んだポスト2015の開発アジェンダや、それら取組のための国際的・地域的協力及びパートナーシップといった議題を中心に各国が発言を行いました。

岸田大臣は、わが国が人間の安全保障に基づき障害者をはじめとした社会的弱者への視点を重視してきたこと、その視点に基づき、途上国の障害者の社会への包容とエンパワメントを促進してきたことに触れ、MDGs目標達成に向けたわが国の積極的な取組を強調しました。また、現在、わが国が「障害者権利条約」のできるだけ早期の締結に向け努力していることを述べました。さらに、2020年オリンピック・パラリンピック東京開催を見据え、今後日本が、障害者に優しい社会の実現に向け、政府を挙げて取り組んでいく考えを表明しました。

【岸田文雄外務大臣によるステートメント】

9月21日にケニアで発生したテロ事件により、多くの人命が失われたことに対し、日本国政府及び日本国民を代表し、心からお見舞い申し上げます。

このような極めて卑劣で許し難いテロ行為に深い憤りを覚え、強く非難します。わが国は、国際社会と連携しつつ、テロとの闘いに積極的に取り組みます。

それでは、今般の障害と開発に関するハイレベル会合開催に当たり、まずは、日本国政府を代表して、議長をはじめとするすべての関係者に心からの謝意と敬意を表します。

持続可能な開発のためには、人間の安全保障の理念に立脚し、人間一人ひとりの豊かな可能性を実現することが必要です。開発を進める上で、障害者が置き去りにされることがあってはなりません。障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、諸施策を推進していくことが重要です。

現在、ポスト2015年開発目標の議論が進められていますが、人間の安全保障の理念に基づき、障害者をはじめとする社会的弱者の視点を踏まえた議論を進めることが非常に重要です。わが国が特に重視するユニバーサル・ヘルス・カバレッジや防災の主流化等についても、この視点を重視しつつ推進してまいります。

また、国際協力の実施においても、途上国における障害者の社会への包容とエンパワメントを促進するという視点が不可欠であり、日本は、政府開発援助(ODA)等により継続して幅広い貢献を行なってきています。

障害者権利条約は、障害者の人権と基本的自由、固有の尊厳を確認する画期的な条約です。日本は、この条約の締結に向けて、2007年の署名以降、障害者制度の改革に集中的に取り組んできました。その結果、国内法の整備が行われ、条約の趣旨が国内施策において一層反映されております。日本は、本条約のできるだけ早期の締結に向けた努力を続けつつ、障害者の権利を保護・促進し、彼らの尊厳の尊重に取り組んでまいります。

最後に、先日の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定されました。この決定は大変名誉なことであると同時に、日本国内外における、スポーツを通じた障害者を取り巻く状況に対する意識を向上させ、障害者に優しい社会の実現に向けて取り組んでいく好機であると考えており、政府を挙げて取り組んでいく考えです。(注:ステートメントについては、外務省HPにも掲載されています。)

2 「障害と開発に関するハイレベル会合」成果文書へのわが国の貢献

「障害と開発ハイレベル会合」の成果文書について、わが国としては、事前に障害者団体と意見交換を行なった上で、以下の点が盛り込まれることを希望する旨ファシリテーターに申し入れを行いました。

1.キャパシティービルディング及びエンパワメント(障害者のエンパワメントを促進するためのキャパシティービルディングの重要性)、2.エンパワメント及び開発における障害の主流化(いわゆるツイン・トラック・アプローチの促進)、3.障害をもつ女性・女子の権利向上(社会的弱者の中でも特に弱い立場となりうるとの観点から)、4.災害時のリスク削減(わが国の東日本大震災の経験から)、5.災害時における女性障害者の視点(特に弱い立場にありながら、さらなる困難を抱えるおそれがあることから)、6.信頼できるデータ収集(障害者施策立案等に必要なデータ収集の重要性)

これらの点については、本会合に先立って5月15~16日に開催されたアジア太平洋地域協議においても、わが国の重視する点として表明したところです。

交渉の結果、最終的な成果文書の中には、1・2・3・4・6がおおむね採り入れられ、わが国としても貢献ができたものと捉えています。