音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年2月号

フォーラム2014

JDF全国フォーラム 障害者権利条約の批准と完全実施
~国内法制の課題と取り組み~

小出真一郎

2013年12月4日(水)、灘尾ホールにおいて、日本障害フォーラム(JDF)全国フォーラムを開催しました。

JDFでは、「障害者権利条約」の完全実施に向けた取り組みを行なっています。今年度は、障害者差別解消法の成立をはじめとする法制度の整備を経て、秋の臨時国会では障害者権利条約の批准について承認を求める議案の提出が予定されていました。

そこで今回のテーマは、「障害者権利条約の批准と完全実施~国内法制の課題と取り組み~」としました。

プログラムは、国際障害同盟(IDA)より基調講演者を招くとともに、国内外の関連動向について学びながら、完全実施に向けて共に議論する内容とし、国連関係や国内の障害者団体の講演講師やパネラーの人選について、協議を進めました。

当日は全国から約250人の参加をいただき、国会議員の方々にもご出席いただきご挨拶をいただきました。

プログラムは次のとおりです。

・基調講演「障害者権利条約の批准と締約国の責務について」 ヴィクトリア・リー(国際障害同盟(IDA)事務局(人権担当))

・特別報告
(1)「障害と開発」ハイレベル会合、インチョン戦略等に関わる動向について 寺島彰(JDF国際委員長)
(2)手話言語法、情報アクセス関連施策の動向について 石野富志三郎(全日本ろうあ連盟理事長)

・パネルディスカッション「国内法制の課題と取り組み」
コーディネーター 藤井克徳(JDF幹事会議長)
シンポジスト 尾上浩二(JDF権利条約小委員長/DPI日本会議事務局長)、迫田朋子(NHK制作局文化・福祉番組部エグゼクティブ・ディレクター)、田畑美智子(日本盲人会連合国際委員)、山本真理(全国「精神病」者集団)
コメンテーター 東俊裕(内閣府障害者制度改革担当室長)

基調講演では、ヴィクトリア氏の熱のこもったお話を聞くことができました。基調講演で私が感じたことや、これからの取り組みへの気持ちを強めてくれたことに少し触れたいと思います。

障害者権利委員会の役割についての説明には、強い関心を持ちました。特に、差別が発生したと思われた場合、選択議定書の締約国を相手とした個人からの通報を受け調査することができること。そして、その国の政府へ勧告することができる(警察、裁判などの手続きができる)というシステムになっていること。そして、締約国は障害者権利委員会に対して状況報告の義務(権利条約の効力が生じてから2年以内に最初の報告。その後は4年ごと)があるとの説明にも、実効性を考えた場合に必要不可欠な対応だと思いました。このことによって、締約したそれぞれの国においても、国内法や政策等総合的な見直し、問題の確認、立案と開発など権利条約が具体的に実行されていくことになるでしょう。

障害者団体の具体的な関わりにも触れ、「これらの条約体(条約の実施を監視するための委員会)に提出するパラレルレポート(政府の報告と並行して障害者団体などの民間団体が提出する報告書)の作成には、情報収集、法律、政策および慣習の評価が含まれますが、これを通じて、彼ら(障害者団体)は既に日本における権利条約実施のモニタリングに積極的に取り組んでいるわけです。引き続き文書を作成し、モニタリングを行なっていくことにより、時期が来たときに、障害者権利委員会に提出するパラレルレポートの各部を作成するプロセスが容易になるでしょう。(当日配布資料より一部抜粋。カッコ内は補足説明)」と、今後の展望を含め語っていただきました。

改めて、障害のあるなしにかかわらず、どこの地域(国)においても安心して暮らせる社会への実現に向けて、障害者権利委員会の任務は重要であり、その必要性を強く感じました。

このような体制がつくられていることは、本当にすばらしいと思います。日本も、ぜひ対応できるシステムになるように期待したいと思います。国連は世界中にネットワークを持ちながら、人権尊重の基、人類の平和に向けて取り組んでいるのだと改めて感じることができました。講演の内容すべてが私たちの今後の取り組みへの参考となり、会場も多いに盛り上がりました。

午後、「障害者権利条約を批准することが参議院本会議において全会一致で承認された」との大きなニュースが飛び込んできました。このニュースは、パネルディスカッションのコーディネーターである藤井克徳氏より報告され、会場は喜びで沸きあがりました。ヴィクトリア氏より、ヤニス・ヴァルダカスタニス国際障害同盟(IDA)会長からのメッセージと共に、痛く辛い陣痛に耐え、難産の末に誕生した赤ちゃんにたとえ、ようやく日本が批准の日を迎えられたことに感動したとのコメントもいただきました。

2006年の国連での採択から7年の歳月を経て、まさに産みの苦しみのもと、この日を迎えられたことは大きな一歩です。それがこのJDF全国フォーラムの場で聞けたことを、まずは喜び合いたいと思います。

しかし、国内では、まだまだ課題がたくさん残されています。合理的配慮が義務化され、障害特性や環境に応じた具体的法整備をさらに求めていかなければなりません。また、権利条約第12条をめぐる成年後見制度や強制入院についての指摘があると聞いています。特に、精神障害者や知的障害者に対しての社会参加促進を進めていく必要があります。これは、政府として大きな責務があります。政府関係者や専門家などからの意見収集・協議だけで進めていくのではなく、国内の“障害当事者や国民から聞く”、この姿勢を持つことが重要です。“当事者が参加できる場を作る”、そんな、一見小さいと思われるようなところからの取り組みが、問題を解決していくことにつながっていきます。

私自身の障害に関わる部分について、少し書かせていただきます。2006年、障害者権利条約の内容については、各国が同意しているようでした。しかし、手話を言語に含めること(第2条)に関して、それを認めていない国があったのですが、全日本ろうあ連盟が一生懸命に説得するなどの働きかけを行い、最終的に、全会一致で採択されたと聞きました。国を超え、人として手を結び話し合い、目的の実現に向かうことは生きる力だと思います。このように私たちは成長していくのかもしれません。

国内の取り組みでは、障害者権利条約第2条、また障害者基本法を鑑(かんが)みても手話言語法の法制化を進めることは必然です。鳥取県では、手話言語条例が全国で初めて施行されました。そして、北海道石狩市も続いています。全日本ろうあ連盟では、このような動きを全国に広げつつ、国としての「手話言語法」制定を求めて取り組んでいます。私たち聴覚障害者にとって、“手話は生きる力”なのです。

今、私たちはスタートに立ちました。これからも一つひとつの課題に向き合うことになります。私たちが真に平等に生き生きと暮らせるためのさらなる法整備を、引き続き国に求めていきましょう。障害者自身が当事者として力を合わせ助け合い、そして地域・社会全体と連帯することにより、人として生きる尊厳を持ち、幸せな暮らしができる未来をつかみましょう!

最後になりますが、JDFのみなさん、全国の仲間のみなさん、力を合わせて頑張っていきましょう。そして、これらも「私たち抜きに私たちのことを決めてはならない」という権利条約の精神に基づいて、活動していきましょう。

(こいでしんいちろう 全日本ろうあ連盟理事、JDF企画委員長)