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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年3月号

時代を読む53

義肢装具発展半世紀のあゆみ
―義肢装具士の資格制度の動きを中心に

1950年から施行された身体障害者福祉法により更生用の義肢装具が公費として支給されることとなった。しかし、当時のわが国における義肢装具を取り巻く環境は、欧米に比較して大きく遅れをとっていた。義肢装具士はもちろんのこと、セラピストの教育資格制度が無く、義肢装具の将来を育成する組織は皆無であった。そこで1968年、第1回義肢装具研究同好会を神戸で開催した。これが1985年より「日本義肢装具学会」と発展し、これに日本リハビリテーション医学会と日本整形外科学会の義肢装具委員会が協働した結果、厚生省に補装具小委員会が設置された。現場と行政が一体となって、医師の義肢装具教育、義肢装具部品の標準規格化、JIS用語、価格基準の制定など著しい発展を遂げ国際的にも優れた評価を得ている。しかし、最も念願としていた義肢装具士の教育養成から資格制度実現まで十数年の歳月を必要とした。

日常の義肢装具クリニックにおいて、義肢装具士が、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、リハエンジニアなどとのチームアプローチの中で、チームの一員として義肢装具の処方、評価、適合判定などに積極的な役割を果たすには他のリハ専門職種同様に資格制度が必要である。そこで、義肢装具士としての国家資格を創設するために、学会、業界が一体となって、1978年「義肢装具士資格制度推進協議会」を発足させ、以後、毎年厚生省に義肢装具士資格制度の要望書を提出した。そして、難産ではあったが1987年に「義肢装具士法」が成立した。

現在、国立障害者リハセンター学院等10校が義肢装具士の教育に当たっている。神戸医療福祉専門学校三田校がわが国初めてのISPOカテゴリー1の施設資格を得て、グローバルな人材育成を進めている。

一方、わが国の義肢装具領域における国際協力の実践経験をみると1970年、ISPO(国際義肢装具協会)発足と同時に日本支部を立ち上げた。1989年、第6回ISPO世界会議を神戸で開催し、厚生省をはじめ国内の関係団体の協働をいただいた結果、国際的に極めて高い評価を得ることができた。同時にアジア諸国に呼びかけ、1997年第1回のアジア義肢装具セミナーを幕張で開催した。以後、アジア義肢装具学会として香港、韓国、神戸で開催され本年は台湾で開催予定である。また、日本財団の支援を得て、タイ、インドネシア、フィリピンなどに義肢装具士養成施設を開設できた。

このように、わが国がアジアにおける義肢装具領域におけるリーダーとしての役割を果たしてきている。6月、ISPOによる世界義肢装具教育者が一堂に会する第1回Global Educator’s Meetingが神戸で開催予定である。

(澤村誠志(さわむらせいし) 兵庫県立総合リハビリテーションセンター名誉院長、元ISPO会長)