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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年3月号

被災地首長からのメッセージ

戸羽太(とばふとし)
岩手県陸前高田市長

東日本大震災から3年を迎えようとしています。

陸前高田市ではガレキの処理はほぼ終了し、市内には造成工事などのためたくさんの工事用車両が行きかい、復興への槌音(つちおと)を響かせています。

最初の2年間は復旧作業に追われ、将来のまちづくりに目を向けていく雰囲気になれませんでした。

あの日あの時の後悔に心を支配され、どちらかと言えば下を向いていた時間の方が長かったかもしれません。

それでも、頑張っている人たち、全国・全世界からの応援で将来に目を向けられるようになりました。

あまり好きな言葉ではありませんが、世の中には『社会的弱者』と言われる方々がいます。それは高齢者であり、障がいをもっている方であり、生活困窮者であったりします。

東日本大震災に打ちのめされた私たち陸前高田市民は、世の中の人たちから応援をいただかなければ生きていけない状況に追い込まれ、まさに『弱者』となりました。

私は、そんな陸前高田市だからこそ『弱者』と言われる方々に寄り添えるまちを創(つく)らなければいけないと考えています。

陸前高田市が目指すまちは『ノーマライゼーションという言葉の必要のないまち』。

障がいのある方も、高齢者も生き生きと過ごせて、自分の意志で自由に買い物や散歩に行かれるようなまちを創っていくのが私たちの復興なのです。

しかしながら、目標は決まっているものの実際にどのようにまちづくりをしていけばよいのか?どのようなまちが高齢者や障がいのある方にとって暮らしやすいのか?そして、有事の際にはどのようにして皆さんの命を守ればよいのか?その答えが見つかっていないのが現実です。

私は復興の過程の中で、当事者や専門家など関係者との話し合いを持ちながら、健常者や行政の『独(ひと)りよがり』にならないようなまちづくりが大切であると思っています。

また、市役所の中にはそれぞれの部署があります。

ノーマライゼーションという言葉の必要のないまちづくりを考える場合、福祉関係の部署ばかりでなく、建設部も教育委員会も商工観光の部署もすべての部署が自分たちの仕事の中で何ができるのか?何が必要なのかを常に頭の中で考える必要があると考えます。

東日本大震災から3年。

これからは、『ノーマライゼーションという言葉の必要のないまち』という目標を具現化するためのまちづくり計画が必要となってきます。

今後は大学や国際機関、あるいは海外の先進地などからの協力もいただきながら、すべての人が『生きる喜びを感じられるまち』『もう一度頑張ってみよう』と思っていただけるまちとして陸前高田市を復興させるべく努力をしてまいります。