音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年3月号

提言 自然災害と障害者

東日本大震災からの提言メッセージ

及川清隆

あの未曾有の東日本大震災から3年の月日が過ぎようとしている。多くの人命を失い、いまだ行方不明者も多い。また、ことごとく破壊された住宅や社会インフラも、一向に復興復旧が進んでいない。私たち視覚障害者は、緊急避難・避難所生活・仮設住宅等、どれ一つとっても災害にまったく脆(もろ)いのである。

3年前の震災と大津波で、東北では135人余りの視覚障害者の尊い命が失われている。だからこそ、私たち自身が震災や大津波の実体験を社会に語りかけて、災害から得た多くの教訓を風化させることなくお伝えし、防災および減災の社会システム構築に、自助努力しなければならない。

そこで私たちは、昨年の5月から震災や大津波で被災した視覚障害者の体験を語る、語り部活動を始めた。この活動を通じてのメッセージを皆さんにお伝えしたい。

一つ目は、災害発生時における緊急避難である。命の助かった者は、隣近所の人の手引きによって避難している。

二つ目は、緊急避難所生活である。張り紙や回覧板のような情報伝達だったため、視覚障害者には情報が届いていない。

三つ目は、食事や物資の配給についてである。視覚障害者は、一人で行動することができないため「列に加われず困った」という。また、在宅被災者には、飲食物・衣類・日用品等の物資が届いていない。

四つ目は、トイレである。個室内の汚れの様子が分からなかったり、用便後の紙処理のビニール袋が見えないため、投げ込みができず、汚れている袋を手探りでしか処理できなかったことから、飲食やトイレを我慢して体調を崩す者も多くあった。

視覚障害者は情報障害者であり、移動や行動の障害者でもある。また、破壊されてしまったまちでは、日ごろの体験から記憶している道路や建築物のメンタルマップが機能しないため、外出困難者となる。こうした視覚障害者の特性を考慮した、災害時における避難誘導システムを地域社会に構築していかねばならない。また、個々の障害特性に熟知した「障害者災害支援専門員」や「支援員資格制度」を整備していく必要がある。そうした専門員や支援員を育成し、緊急災害時に地域に配置し的確な支援をするべきである。もし、皆さんの住まいや仕事場の周辺で視覚障害者等障害のある人を見かけたら、避難時にはどうか手を貸していただき、共に避難していただきたいことを願いつつ、結びとする。

(おいかわきよたか 社会福祉法人岩手県視覚障害者福祉協会理事長)