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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年3月号

提言 自然災害と障害者

自然災害への備え

樋口恵子

35年ぶりに生まれ育った高知県安芸市に帰り、暮らし始めて7年が経とうとしています。車いすで、高齢の夫と呼吸器障害でジャス還の私たち二人にとって、3.11の衝撃は大きいものでした。わが家の窓から太平洋を臨み、海を見ながら暮らしたいという念願が叶い、自然の恵みとおいしい地場産品に囲まれた生活に潜む危険を、東日本大震災地の映像で見せつけられました。

地元では自立生活センターとヘルパー事業所を運営していますが、事務所は海から200メートル足らずの場所にあります。高知県は森林が全体の85%にもなり、海と山に囲まれた猫の額のような平野で暮らしています。高齢化率も全国有数の高さで、南海地震が発生すれば、全国一の高さの津波が予測されており、どう生き残るか、大きな課題がたくさんあります。

福島で被災した仲間の生の声を聞く機会をできるだけ作り、地域の人たちと共に考える場を作りながら、自分たちの準備をしています。「逃げ遅れる人々」の上映会や、被災地のゲストから学んだことを一つ一つ着実に組み立てておかなければなりません。今、私ができることは防災会議への参加や、福祉避難所での訓練参加等で、情報収集やシミュレーションしています。

自助→共助→公助を原則とし、ガソリンはこまめに補給し、できるだけ、満タンにしておくこと、いざという時の現金所持額も、以前とは変わってきました。自宅は高台にあり、海から3キロほど離れているので、一番安全なエリアだろうと考えています。自宅はバリアフリーで、太陽光によるソーラーシステムで、屋内の温度が20度程度に維持されています。屋根に敷き詰めたソーラーパネルで作る電力の余剰分は四国電力に売電していますが、いざという時、お天気さえ良ければ電気も使えるように蓄電池を取り付け中です。これが完成すれば、近所の人たちの助けもできるのではと考えています。

自助の部分は蓄電池を備え、外の物置に水等の備蓄をすれば大体揃(そろ)うのですが、事務所の移転や、災害が起きた時に、ヘルパーと利用者、障害者の暮らしをどう支えていけるのか、まだ方向は見えていません。

まず自分の命を守ることを第一義とし、家族、一人暮らしの障害当事者の安否確認と支援、地域の近隣の人たちや消防団員の方々とのつながりなど、地道に積み上げていくことです。災害後の避難や生活は、陸路からの支援が壊滅状態になるのではと予測されている、この県独自の道筋も見据えていかなければならないでしょう。

(ひぐちけいこ NPO法人土佐の太平洋高気圧理事長)