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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年3月号

提言 自然災害と障害者

自然災害と障害者

秋山哲男

障害者などの地震対策で最も注意すべき点は、1.地域の危険度を考慮した対策、2.個人の危険度を考慮した対策、の両面から行う必要がある。

図1 考えるべき2つの対策

1.地域の危険度を考慮した災害の対策

火災・水害などを考慮した対策

2.災害の個人の危険度を考慮した対策

  • 物的環境(住まいなど)
    個人住宅等の環境の違いを考慮した対策
  • サポート環境(介護・医療など)
    サポートが必要な人の具体的な対策

1.地域の危険度を考慮した対策とは、災害の種類は地域により津波や火災、建物倒壊等、災害の種類が異なり、その対策も異なることである。

災害は発生する場所(地域)や災害の種類によって、三つのタイプの地震がある。第一は、津波が主たる原因である東日本大震災(2011年3月11日午後2時46分に発生、マグニチュード9)の死者(含む行方不明者)約18,534人で、そのうち津波による死者は92.4%であった。つまり、津波対策ができるか否かが生死を分けている。第二は、火災が主たる原因の関東大震災(1923年9月1日11時58分に発生、マグニチュード7.9―8.2)である。死者(含む行方不明者)は約105,385人で、火災による焼死が87.1%であった。この時は延焼火災から如何(いか)に避難できるかが生死を分けた。東京都の今までの震災対策は延焼火災中心で行われてきている。第三は、建物倒壊が原因の阪神・淡路大震災(1995年2月17日午前5時46分に発生、マグニチュード7.3)で死者6,434人である。そのうち建物倒壊による死者は83%である。建築倒壊は老朽建築物やシロアリ被害に遭っている住宅で多く発生している。この場合の対策は一にも二にも住宅の耐震対策(木造住宅の斜交いなどの応急対策、建て替えなど)である。

2.個人の危険度を考慮した対策とは、個人の住まい環境、サポートの必要度とその支援体制で被災が決まる。

東日本大震災、阪神・淡路大震災とも障害者・高齢者の支援が必要な人の死亡者が一般の人の2倍程度であり、個人の置かれた環境に応じた事前対策を行うことが被害を少なくするために不可欠である。津波対策は、最初から安全な場所に居住、つまり転居・あるいは津波が来ても安全な鉄筋造りの上層階の居住を確保することであり、火災に関しては、電化など火を出さない努力や火災になった場合、避難支援が受けられる体制づくりなどである。建物倒壊からの安全対策は、家屋の耐震強化など事前対策が重要である。これに加え、不測の事態が起こり得るので、災害時の個人のサポート体制を整えておく。

以上から、介助・医療サービス等のサポートを必要とする高齢者・障害者は、災害時に体調変化も加えると、事前の準備の有無がかなり重要になってくる。

(あきやまてつお 日本福祉のまちづくり学会会長)