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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年3月号

新潟県三条市における災害時要援護者支援の取り組み

蝶名林正身

災害時要援護者名簿作成の基準、作成の方法

三条市では、平成16年と平成23年の二度に渡り大きな水害を経験しました。

平成16年7月13日、新潟県中越地区を中心とした地域を大規模な集中豪雨が襲い、特に、三条市では市内中心部を流れる五十嵐川の堤防が決壊、死者9人、被害棟数10,935棟、被害世帯7,511世帯など甚大な被害が発生しました。

この豪雨災害を教訓として、共助を主体とした災害時要援護者支援に関する取組を開始しました。支援用の名簿作成は暫定基準を作成し、豪雨災害の翌年の平成17年度から取り組みました。

暫定基準では、介護認定を受けていれば該当になる等、対象者の範囲を広く設定したため、共助での支援で対応するには人数が多く、本当に支援が必要な方を優先的に支援することが重要との課題が出てきました。

そのため、平成20年度から名簿登載の基準を見直し、要介護認定3~5の方や身体障害者手帳1・2級の第1種を所持する身体障がい者などに絞り込み、また、名簿登載の本人の意思確認については、名簿登載に不同意の方のみ申し出てもらうことにし、申出のない者については登載する方式に変更しました。いわゆる「逆手上げ方式」です。災害発生時には、個人の生命を守るために個人情報保護よりも要援護者対策が最優先されるべきとの考え方によるものです。ほかに、基準には該当しないものの、自治会が支援を必要と認めた者も名簿に登載しています。

作成した名簿は、半年ごとに全面更新を行い、その間に新規該当者の追加を行い、年間4回の更新を行なっています。年2回の全面更新の際は、自治会長、民生委員に更新前の名簿を送付して、変更箇所など内容や自治会申出による名簿登載者の有無などの確認を行なっています。

災害時要援護者名簿の活用

災害時要援護者の対応種別は、避難行動要支援者と情報伝達要支援者の2種類あります。自治会、自主防災組織、消防団、介護サービス事業所には避難行動支援を、民生委員、介護サービス事業所には情報伝達支援を基本的な役割としてお願いしています。この考え方の基本にあるものは、自治会等は市の責任のもと、市へ協力していただく立場で活動をお願いしているものです。

災害時要援護者名簿は、個人情報の外部提供について取扱いに十分配慮しながら、平常時から自治会、民生委員などの支援者が自治会単位の名簿を共有しています。平成25年11月1日基準日現在で、避難行動要支援者が409人、情報伝達要支援者が1,156人、合計で1,565人となっています。

自治会や民生委員には平常時からの準備として、災害時要援護者宅への訪問等で支援に必要な情報の収集、支援方法の確認などの徹底をお願いしています。

さらに、平成25年度から自治会および自主防災組織が支援者となっている避難行動要支援者を誰が担当し、支援するのかを災害時要援護者名簿に明示しました。これにより、支援の担当者が交代しても確実に引継ぎができ、支援が継続されていくものと考えています。

災害時の避難所運営・保健活動等のイメージ拡大図・テキスト

避難所の見直し

平成23年7月29日の水害の後、避難所生活が長期化した場合でも、要援護者が安心して避難所生活を送れるようにと避難所の見直しを行い、福祉関係の事業所と支援協定を締結しました。

主な変更点は、一般の避難所での避難生活が困難な要援護者について、個々の状況に応じて市および関係機関が適切な避難先に振り分けを行う。市内10か所の災害対策支部ごとに設置される第1次避難所に更衣室や別室の確保など、特別な配慮スペースを設ける。介護および障がいのサービス事業所の施設を活用した福祉避難所を設置する。第1次避難所に設けた特別な配慮スペースに、訪問系介護サービス事業所のヘルパーの派遣を受けるなどです。

その他の取り組み

毎年6月下旬に水害対応の防災訓練を実施し、自治会長、民生委員、介護サービス事業所などの支援者も参加して情報伝達などの訓練を行なっています。防災訓練前の5月下旬には自治会長、自主防災組織、民生委員を対象に地域防災研修会を開催しています。内容は、支援者ごとのマニュアルの説明や役割の確認、防災訓練の説明などです。防災研修会を開催することにより、支援者の役割の再確認などができ、災害発生時でもスムーズに支援ができるものと思います。

毎年、災害時要援護者とその家族の方に文書を配布して、災害時の情報伝達や避難誘導の支援活動は最終手段として考えていただき、「自分の身は自分で守る」といった自助の意識を持ってもらうようにお願いしています。

(ちょうなばやしまさみ 新潟県三条市福祉保健部高齢介護課副参事)